第247話 7『ネロの成長』

 久しぶりの学院に、アンナリーナは多少うんざりしていた。


「おはようございます。

 お久しぶりですわね。

 休暇中、いかがお過ごしでした?」


 このような挨拶があちらこちらで行われていて、さほど多くないがアンナリーナにも声をかけるものがいる。


「リーナ様、おはようございます。

 休暇中はこちらにいらっしゃったのですか?」


 一部の者は、アンナリーナがギィ辺境伯領の出身だと知っている。


「おはようございます。

 そうですね。

 王宮のパーティに行った後は、護衛依頼でアグボンラオールまで行ってきました」


 教室が、しんと静まり返る。


「あれ……?

 そ、そうですわね、冬の護衛依頼は少々骨が折れました。途中で寒波に襲われて、まあ事なきを得ましたが」


 ほとんどが貴族の、同級生たちが沈黙した理由はそちらではない。


「あの、リーナ様?」


 恐る恐るといった様子でひとりの女生徒が話しかけた。


「王宮のパーティ……と、仰いました?」


「ええ、年越しのパーティにユングクヴィスト様のパートナーとして出席いたしました」


 周りからどよめきが沸き起こる。

 アンナリーナとしてはそれほど大ごとだと思っていなかったので、この騒ぎ自体が驚きだった。


「そ、それで?

 どのようなパーティでしたの?

 ユングクヴィスト様とご一緒なさったのならひょっとして、国王陛下に……」


「はい、ご挨拶してお言葉を頂きました」


 悲鳴のような叫びが沸き起こって、アンナリーナはげんなりした。





 その夜アンナリーナは、ツリーハウスでネロと対面していた。


「調子はどう?」


「はい、ご主人様、この通り快適に過ごさせて頂いております」


 アンナリーナが折を見て、体力値と魔力値を供与していたので、今のネロはずいぶんと成長している。



「それでは先に【体力値供与】【魔力値供与】【スキル供与】雷魔法【鑑定】」


 ネロ(スケルトン、雄)

 体力値 1560

 魔力値 1485

 スキル

 火魔法(火球、エクスプロージョン、ファイアアロー、ファイアストーム、ボルケーノ、インフェルノ]

 氷魔法(氷球、アイスアロー、アイススピア、フリーズストーム、アブソリュートゼロ、ダイヤモンドダスト)

 水魔法(水球、ウォーターアロー、フラッド、ディープフラッド、デリュージュ、アクアブレード、タイダルウェーブ、アクアビーム、ダークストリーム)

 雷魔法(雷球、ライトニングアロー、サンダーボルト、ライトニングバースト、ディバインスレイブ、ディスタージ、マイクロウェーブ)



「勉強は進んでる?

 ご飯はちゃんと食べている?

 それから……何か思い出した?」


「はい、この指で書くことも慣れましたし、食事も美味しく頂いています。

 ……読み書きや計算や、食事の作法や生活に関することは思い出したと言うか、覚えていた?のですが、自分自身のことはまるで無かったかのように思い出せないのです」


「うん、まあ無理しなくていいと思うよ。今はもう、ネロは私の家族なんだしね」


 骸骨の下顎が震え、小さく頷いた。


「それでね、ちょっと以前から考えていたんだけど……ネロの仲間を増やそうと思うの」


「スケルトンをですか?」


「それも、行く行くは考えているけど、今回はアンデッドだよ。

 ネロはどう思う?」


「ご主人様が死霊魔法を使って【眷属】を増やそうと仰るのですね?

 もちろん私に否やはございませんが」


「次の子は、純全な戦士になると思う。イジ並みにごつい子だけど面倒見てあげてくれる?」


「もちろん、私に出来る事ならば」


 そう言って立ち上がったネロは、アンナリーナがうっとりするほど綺麗な礼をした。

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