第21話 弱音の女の子
七扇に避難所の話を持ち掛け許可が下りている。炊き出しのたくあんが切れずに全部つながっているのは恥ずかしくて消えそうだった。
手伝いの御礼、と食事を貰い少し人のいない所に座る。今、ここにいるのは一くんと私の二人だけ。
「…中込は知り合い?」
「二番隊の隊士だったな。」
「そう。正直、想像以上だった。八朔も強いし、元新選組とやるなんて思ってなかったよ。」
これには返事がない。弱音が出ているときは黙って聞いてくれる。
「久しぶりにさ、死ぬと思ったんだ。平和を作れたって言うのは勘違いだったのかなって。また人斬って、たくさんの血が流れて。」
掌を見つめる。薬指に光る指輪に血が映った気がした。
髪の毛をぐしゃぐしゃにされる。
「それでも、いつでも、己を信じてやってきただろう。俺たちは既に外れている。そうやって生きていくしかない。それに、」
指さす方向には私を見つけ駆け寄ってくる子供がいた。
「あ、お兄ちゃんと妹ちゃん!」
多少の傷跡はあるものの、手当は済んでおり表情も明るかった。しゃがみこみ、顔を撫でる。父親と母親も子らに追いつく。
「ありがとうございました。」
四人、ここに確かに助けられた人がいた。家族をぎゅっと抱きしめる。
「いーえ。どういたしまして。無事でよかったです。二次被害にもちゃんと気を付けて下さい。」
手を振り見送る。
「ごめん。ありがとう。もう、大丈夫。」
この先さらなる状況の悪化があろうと、死が歩み寄ろうと。雲一つない晴天が私を見守っていた。
立ち上がろうとすると、ふらっとしろちゃんが現れる。背中には剣の書面と見覚えのない高級そうな紙が一枚。
先に剣からの連絡を確認する。無事に救護を終え、雑務にあたっている内容が二人。一つ、由良からの内容は衝撃のものだった。
「一くん、由良。一つ、大砲のようなものが使われた形跡がある。二つ、放火の主な原因は小型爆弾。三つ、どちらも人に直撃した報告は無し。」
戊辰戦争のときにそれらしい武器が使われていたことは知っていたが、これには二人とも驚きを隠せない。人に当たらなかったのならよかったが。小型爆弾を放火に使うとは斬新さを感じる。普通に火をつけた方が早いのにそうしなかったのは力を見せつけたかったからか。
一くんに剣からの書面を渡し、次の紙を開く。思わずみっともない声が出た。
「うわあ!ちょ、ちょっと…。」
二人で覗き見た。
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