第6話 四大人斬り

「ただいまー。」


 すぐに駆け寄ってくる、黒と白の猫。可愛い。


 この子たちは人斬り時代からお世話になっているお使い猫だ。こちらの意図を理解してくれるし、そこらの人間よりかは賢い。捻りもなく、くろちゃんとしろちゃんと呼ぶので、不満がられている。文を届けてくれたり仲間の危険を知らせてくれたりと、頼れる二匹だ。


 玄関口を過ぎると人間が一人。

「お帰り。…なんだその大荷物。」


 住んでいるのは警察署に近いこじんまりとした屋敷。何人か数人のお手伝いさんがいる。帰宅に気づくと夕飯を用意してくれる。私も一くんも料理ができない。


 美味しそうな食事を前に思い出し笑いをした。


「今日ね、一炉朱現に会ったんだ。探してたでしょ。抜刀隊に喧嘩売られてたよ。」

「どういうことだ。」

 少し驚いた表情で状況を尋ねられる。一くんが半年探しても見つからなかったのだから当然だ。詳細を話し、居候している蘭家を近いうちに尋ねるというと、同行したいと言った。


 何故一炉朱現を探していたか。何故一炉朱現が東京に現れたか。それは、四大人斬りの一角が騒ぎ始めたかもしれないから、である。


 四大の内三名は蘭巴、一炉朱現、そして姫崎京子の維新志士側である。


 残りの一角は、維新の時代にありながらどちらに味方するでもなく、重要人物を斬った《芥》という。


 四大には《父》《朱》《姫》《芥》という呼称が存在する。通り名であったり本名の一部を取ったものもある。


芥は名も知れており、当時から有名な噂がある。


「芥は日本が欲しい、でしょ。これねぇ。」


 只の妄言。とも言えなくなってしまった。


 ここ一年各地で人が死ぬ。明治に辿り着かせるのに関わった人物たちがだ。幕末の生き残りは各地で要職についていることが多い。そのような者を狙ったいたずらは後を絶たないが殺しは違う。今の世の中では人を殺す術をもてる者なんてのは少数だ。しかも、死に方からして相当腕の立つ人斬りの仕業だそうだ。


 そして四大に容疑がかかる。


蘭のお父さんは45歳ぐらいだろうか。人は斬れるが率先して犯罪を起こすなんてのは考えられない。私は一くんのおかげで疑いを晴らした。その時期ぐらいから同居していたから。


 となると残りは朱現くんと芥になるわけだ。芥の面識は私にはないが、朱現くんにはあるというのもまた一つ。


 そうして私たちは朱現くんを探すに至る。



 ご馳走様、と料理をしてくれる家政夫さんに伝える。さあ、誰の思惑が動いているのか 。


「そろそろしっぽが掴めるかもね?」

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