第7話
翌朝、少し早起きした私は買ったばかりのアイシャドウやお気に入りのリップを使って普段より時間をかけて身支度をした。まつ毛のカールやアホ毛にも気を抜かずに、万全の状態で学校へ向かった。とても鈍感な葵は気づかないと思うけど、少しでもかわいい状態の私を見てほしいんだ。
私は進学クラスで葵は就職クラスだから教室どころか棟さえ違うし、使っている電車の沿線も別。だから、放課後の部活以外で見かけることなんてほとんどない。でも、リーダーという接点を手に入れた今は近づける可能性が増した。
そんなことを考えながら上靴に履き替えていると、後ろからおはよう、という低い声がしたので振り返った。
「広、おはよう。朝会うの珍しいね。葵と一緒じゃないんだ。」
広と葵はクラスも沿線も同じなため、よく一緒に登校しているのを遠くから何回か見かけたことがあるので何の気もなしに話しかけた。
「瀬戸は葵のことばっかりだな、すげえわかりやすい。」
まさか、広にばれているとは思わなくて。ニヤニヤしている広を尻目に、私の顔はどんどん熱くなっていく。何か言い返したいけど、この顔じゃ認めているのも同然だろう。口をぱくぱくさせていると、広が笑って言った。
「葵には言わないよ、そこまで俺鬼じゃないし。今日のメイク、いいんじゃない?葵が気づくかはわからないけどね~」
全て見透かされているようで恥ずかしい。広は何も言えずじまいの私の横をすり抜けて就職クラスがある旧棟に歩いて行ってしまった。
教室に入ると、桃華がいたので洗いざらい昨日から今朝まで起こったことをぶちまけた。感情の起伏が激しい私とは違う桃華は至極冷静に私の話を聞いてくれたので、少し冷静になれた。
「元カノがいるっていうだけでこんなに嫉妬するなんて思わなかった…。自分の心の狭さが情けないや。」
言いながら机に突っ伏す。
「ショックなのは当たり前だよ。でも今は彼女いないんだしさ!逆にチャンスかもよ?」
桃華の慰めに顔を上げると、ニコリと笑ってくれた。
「希望のいいところはポジティブで明るいところだと思うよ。落ち込むのもわかるけどさ。ごめん、恋愛経験ないからうまく言えないんだけど。」
一生懸命私を元気づけてくれる桃華が健気でかわいくて思わず抱きしめる。落ち込んでいる場合じゃない。持ち前の明るさで私は気分を立て直す。
「せっかく今日はいつもより顔面気合入れてきたんだし、じめじめしててもしょうがないよね!今日もいっぱい話しかけるぞ!」
普段のテンションの私に戻ってきたのを見た桃華は、ほっとしたように目尻を下げた。
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