第4話
「告白する気はないの?」
昼休み、人がいない空き教室で昼食のメロンパンをかじりながら桃華がこちらを見ながら聞いてくる。私は突然脈略もなく投げられてきた発言に思わずむせる。危ない、たこさんウインナーで窒息するところだった。
「卒業までにはしたい…とは思ってるよ。でも、夏休みが終われば引退でクラスも進路も違うし接点なくなっちゃうから…。」
「本山は就職するって前言ってたもんね、希望は大学進学だし」
「そうなんだよね…。正直自分で呼び出すなりなんかアクション起こせば告白できる機会は手に入ると思うけど、シンプルに勇気出ない…。」
本山にとったら、きっと私はただ部活が同じだけの同級生だろう。あの優しさは私だけに向けられたものではない。わかっていたはずなのに、あの日恋に落ちてしまった自分は我ながらちょろいと思う。
「私ね、希望と3年間クラスも部活も一緒ですごく楽しかったの。まだ卒業じゃないけどさ、希望には幸せになってもらいたいんだ。」
桃華が急に真剣な顔になって話し始めたので、私もお弁当を口に運びつつ話を聞く。
「希望に告白する気があるなら、私の部長特権を生かしていい考えがあるんだ。」
桃華はそう言ってにこり、いやにやりと笑った。何をするのかと聞いても放課後までのお楽しみだとはぐらかされてしまい、そのうちチャイムが鳴って桃華の考えがわからないまま昼休みは終わりを遂げた。
その日の放課後。日直だった私は職員室に日誌を届けていたため、部室に到着するのが遅くなってしまった。ドアの前に立つと、どうやらもう活動は始まっているらしくガヤガヤと人の話し声がする。
「遅れてごめんね!日直だったんだ!何の話し合いをして…」
事情を説明しながら部室に足を踏み入れると、黒板の前にいつも通り桃華となぜか本山が立っていた。私は黒板に書かれた文字を見て思わず息をのんだ。
「私、夏休み中の校内ボランティアのリーダーなの⁉」
リーダーは夏休み中に校内で行われる全てのボランティア、例えば掲示物の張り替えや花壇の手入れなどのすべての活動の統括をするのが仕事だ。ボランティア部内の誰がいつやるのかスケジュール調整をしたり、先生の許可を取ったりすることを夏休み前から行わなければならない。つまり、かなり大変な活動ではあるが、活動好きな私は以前からやりたいと言っていたためむしろ嬉しかった。が、しかし驚いたのはペアの相手。黒板に記された私の名前の隣には、桃華の几帳面な字で「本山葵」と書かれていた。昼休みの笑顔の理由はそういうことか。
「俺はじゃんけんで負けた。瀬戸、やりたいって言ってたからって理由で選ばれたんだけど、本当にリーダー、やる?」
本山にそう聞かれ、私は二つ返事でOKした。活動自体はもちろん、2人で過ごす時間が増えそうで今から楽しみでワクワクした。桃華、ありがとう!!
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