1章 再開と初めまして
【美白 璃奈】編
第1話 夢からの目覚め
チュンチュン……チュンチュン…
(…外でスズメが鳴いている?そうか…俺はあの後寝落ちして…)
「ふぁあぁ…って、今何時だ?」
そうして俺は欠伸をしながら硬く軋むベッドから出て、時計を探す。…ってあれ?時計ってここに無かったか?と、そんな事を思いながら時計をみる。
「じゅ?!10時半?!やっべえ!卒業式遅刻じゃねえか!?何で父さんも母さん起こして……ってそうだった、もう俺中学生卒業したんじゃん…しかもだいぶ前に」
部屋に置いてあるデジタル時計を見ると、4月6日の午前10時30分。中学を卒業してからもう1ヶ月ほど程経っているにも関わらず、なぜか俺は焦って飛び起き、誰もいない空間に向かって文句を言おうとした。
「…何で今更卒業式で遅刻して飛び起きるなんて事しちまったんだ?しかも父さんも母さんもずっと会ってないのに…寝ぼけてたのか?俺は」
俺は中学を卒業してからすぐに一人暮らしを始めた。最初は金がかかるからと反対されるかとも思ったが、あっさり了承。今は小さなアパートの一室に一人で生活している。
一ヶ月も住んだら何となく生活できるようにはなったが、やっぱり料理だけはどうしても出来ない。なので俺はほぼ毎日カップ麺やコンビニ弁当の生活をしている。
「さーて…久しぶりに自分で朝ごはんでも作って見るか?今日はどんな不味い料理になるんだろうなぁ…」
そう言って俺は朝ごはんを作るためにキッチンへ、冷蔵庫を見ると殆どすっからかんだったが中には卵とベーコンが少しあり、パン置き場には食パンがポツンと置いてあった。
「これ全部食っちまうか」
そう思った俺はフライパンをコンロに置き、温めている間にトースターに食パンをぶち込んでおく。そして温まったフライパンに少し油を敷き、卵とベーコンを中火で焼いて行く。
そして綺麗に焼きあがった目玉焼きとベーコンを、トーストした食パンの上に乗せて皿の上に置く。
「なんか分かんねえけど…俺何となくちょっと料理上手くなったか?びっくりするくらい綺麗に焼けたんだが…?」
おかしい、昨日まではどうあがいても真っ黒焦げのダークマターしか作れなかったのに…どうなってんだ?
そんな事を思いながらテレビをつけて朝ごはんを胃に入れる。
『政府は少子高齢化対策として、男性女性問わず育児休暇取得の義務化や一夫多妻制度の導入、保育関連の待遇の見直しなどを検討しており……』
ピコン!
「ん?なんだ?」
テレビでニュースを見ていた俺の携帯に誰かからメッセージが入る。…まあこんな俺に連絡してくるなんて、一人しか居ないんだけどな。
〈小柳:よう綾人!起きてっか?!〉
〈辻凪:あぁ、ついさっき起きたよ。んで?なんか用か?〉
〈小柳:暇だからよ〜遊びに行ってもいいか?〉
〈辻凪:お前嫌だって言っても来るだろうが、まぁいいぞ何時来るんだ?〉
〈小柳:実はもういるんだわ〉
〈辻凪:は?〉
ピンポーン
…おいおいまさか…そんな嫌な予感を確かめるべく俺は、玄関の扉を開いた。
「よっ!綾人!遊びに来たぜ!!!」
「お引き取りください」
「いや閉めんなよ?!もてなせよ?!」
そう言いながら俺が閉めようとしたドアの隙間に足を入れて来たコイツは
身長こそ俺と余り変わらない175センチくらいだが、いい塩梅に焼けた肌に筋肉質な身体、短く切り揃えた髪に爽やかイケメンフェイスと来たものだ。そりゃ追い出したくもなる。イケメン死すべし。
「何だよこんな早くからよ…」
「早いっつってももう11時だろーがよ!お前の為に母ちゃんの飯持って来てやったんだよ。後ゲームで遊びに」
「どうぞお入り下さい小柳様、ささ此方へ」
「お前相変わらず飯のことになると態度変わりすぎだろ?!」
そりゃ飯を持って来て下さったのなら俺の中ではVIP待遇だ。誰であれな。
そう言いながら俺は何かでかい荷物を持った勇次を部屋に入れて、お茶を出してやる。
「しっかしアレだな、お前そろそろ髪切ってこいよ綾人」
「面倒だ、それにまだ一般的には許容できる範囲の伸び方だ。後一月は持つ」
「お前なあ…明日は入学式だぞ?そんなんじゃ高校でも彼女が…ってすまん…」
「…いいんだよ、どうせ俺に彼女なんて夢物語だ」
今の俺は目元を隠すほどの少し長く伸びた髪で持ち前の鋭い目つきを隠している。身長は勇次より少し高いくらいで、まぁ体系も悪くは無いがイケメンでは無い。
「お前……まだあの事…引きずってんのか?」
「いや勘違いすんなよ勇次、もうあの事は……関係ねぇよ」
「アレは綾人が悪かったわけじゃ…!」
「…こんな話はやめようぜ、それより勇次ゲームしに来たんだろ?」
少し強引だったが、俺は話題を変えた。わざわざ辛気臭い話をする必要も無いからな。
「そ、そうだな。よし!今日は泊まりで綾人とゲームだ!」
「おい待てそのデケェ荷物って!」
「今日は勝つまで寝かさねえからな!綾人!」
「じゃあ今日は寝れねえな」
「んだとテメェ!俺の育てたミニモンでボコってやるよ!」
そんな事を言いながら夜遅くまで勇次とゲームをして、夕飯には勇次のお母さんの料理を食べて、高校生になる前日を俺は勇次と楽しんでから眠りに就いた。
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皆様明けましておめでとうございます。今年もマイペースに投稿していきますので、本年もどうぞよろしくお願いします!
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