第18話 知らぬふりは通用しないよ
翌日ショップに出向こうと思っていたが、またもや佐川と先輩営業マンの
3日間の苦行の末、ことは万事平時に戻り週末の今日やっと定時刻で退社できることになった。
「スマホがなくてもなんとかなったね。まぁ、忙しすぎて他のことに気を回す余裕がなかっただけなんだろうけど……」
年中メッセージをやり取りしているサチにだけはパソコンからメールを送って顛末を教えていたので問題も起きなかった。
着替えを済ませとぼとぼと会社の玄関口まで向かう。エレベーターで6階のフロアから1階のエントランスに出たところで、玄関ドアの向こうに見知った顔を見つける。
「誠さん……」
今頃のこのこと現れた誠さんにあのときの怒りの炎が再燃する。二股とスマホ破壊! 絶対に口を聞いてあげないんだからねっ!
ただ怒りをぶつけるよりも無視してやるほうが相手にはダメージが大きいとどこかで聞いたことがある。それが正しいかどうかは知らないけど、今のわたしは誠さんとまともに話せる気がしないのでそれが一番の対処法だと思う。
「あっ、乃愛ちゃん! この前からずっと既読もつかないし電話しても通じないんだけど、どうかしたのかい?」
「……」
「もしかして、僕が何か乃愛ちゃんの機嫌を損ねるようなことをしてしまったのかな?」
「……」
「乃愛ちゃん。どうして怒っているかだけでも教えてくれないだろうか?」
「……」
「……乃愛ちゃん。せめて何か言ってくれないか? 罵倒するなら罵倒してくれてもいいから。何か言ってよ……」
「……うっ……うっ……」
このまま黙って無視して通り過ぎようと思ったけど、駄目だった。誠さんの声を聞いていたら楽しかった日々のことを思い出してしまって、涙が溢れてきた。
「乃愛ちゃん……」
「……ま、誠さん……なんで、なんで二股なんてしたの? わたし、本気だったのに……あなたはただの遊びのつもりだったの?」
一度口から言葉が溢れてしまうと堰を切ったように誠さんに怒りの言葉と疑問の言葉を投げつけてしまう。
「えっ? えっ? ふ、二股? 乃愛ちゃん。二股ってなんの事だい?」
誤魔化したって証拠は掴んでいるんだからねっ!
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