第六話 スーパーマーケットにて1

平日、夕方のスーパーマーケット(GMS)は、そこそこ混んでいた。恐らく、彼女と同じように、夕食の買い物をしている人が多いんだろう。


「あっ、ここにもカリカリ梅売ってる~!」


カリカリ梅を見つけただけでテンションが上がっていた。


カリカリ梅を見つけただけで喜ぶ僕の彼女可愛いなー。


「中森くんは、何か欲しいものは無いの?」


「うん、まあ特に。家に帰ればなんかあるし」


「そうなんだ、なんか付き合わせちゃってるみたいでごめんね」


「いや、全然」


むしろ付き合いたいし。


そんなことよりも僕はやはり心の中にモヤモヤがあって、それが取れなかった。


「こっ、古賀さん!」


「ん?」


「い、いやなんでもない」


まぁいいか。とりあえず彼女が可愛いんだし。


スーパーマーケットで、食材を選んでいる彼女は、熟年の主婦のように見えた。1円の誤差まで見る古賀さんはきっと将来いい奥さんになるのだろう。


ここはGMS、つまり総合スーパーであり、食品以外も様々なものを売っている。そこそこ大きなスーパーマーケットである。専門店や住まいや暮らしの家具、日用品、衣服を売るコーナーやゲームセンターがある。


夕食の食料調達が終わった後、僕達は、ゲームセンターに来ていた。


「このゲーセン寂れてる割には結構広いねー」


「確かに」


「中森くんは、ゲーセンとかよく行くの?」


「うーんあんまり行かないかな。子供の頃はたまーに遊んでいたけど、今は家でゲームできる時代だし」


「そうなんだ、ウチもあんまり行かないなあ。あっ見て見て!」


彼女が何かをみつけ、かけ出して、手をこまねく。その何かはクレーンゲームであり、今流行りのゆるキャラの大きなぬいぐるみだった。


「これ可愛くない?」


「う、うん可愛い」


このゆるキャラ、何故か泣き顔だし。不憫かわいいと言うやつか。


「これ欲しいな~」


これは、彼氏が彼女のために、景品をゲットして喜ばれる展開じゃないか!僕はこの手のゲーム絶対下手だし、攻略法も全く分からないけどやるしかない!


「ちょっと、やってみるよ」


「え、いいの!?」


「うん。取れるかわかんないけど」


お金を入れると、音楽がなり、手元のボタンが光る。そのボタンを僕は狙いを定めながら押していく。


「お、おおいいねいいね」


そして離す!


「あっやば、押しすぎた」


感覚が分からず、ボタンを少し押しすぎて、アームが景品のぬいぐるみからはみ出て、明らかに枠を捉えていなかった。


「あーこれは失敗かもね...」


アームがぬいぐるみのところまで下がり、アームの両腕が閉じる時、見事に空を切り、景品獲得できなかった。


「ごめん、僕センス無いかも」


「気にしないで!次、ウチやってみてもいい?」


「うん」


彼女は、お金を入れ、狙いを定めた。


「これはここくらいかな、、」

と呟いて、ボタンを押していくと、アームは、明らかにぬいぐるみの枠を捉えていた。


「お、これいい感じじゃ...」


「だよね!取れそうじゃん!」


アームが下がっていき、見事に、ぬいぐるみを掴み、抱える。


「おお」


「これ来たっしょ!」


しかし、アームが上がりきったところで、動く反動で、ぬいぐるみは、アームの腕からすり抜け、落ちてしまった。


「あぁ」


「まじか!なんでぇ」


あまりクレーンゲームをやらないが、取り方のコツを知っていないときっと取れないように作ってある。ゲームセンター側の策略なんだろう。そうじゃないと儲けれないし。と、頭では理解していても、彼女の為なら取ってあげたい。


「僕、もう一回挑戦していい?」


「お、いいよいいよ!頑張れ!」


よぉーし!


今度は絶対にとってやる!!!



~そして一時間後~


「ダメだやっぱり、取れない」


「うーん、流石にお金使いすぎたしもうやめよっか」


何度か挑戦しても手応えがなかった。アニメのようには上手くいかないな。古賀さんを喜ばせたかったのに、、、と僕は落ち込んだ。


「まあでも楽しかった!クレーンゲーム!」


しかし、彼女は爽快の笑顔で笑っていた。その笑顔が見れて別に景品は取れなくてもいいやと思った。



ゲームセンターを後にして、僕達は、暮らしと衣服のコーナーに来ていた。


そこでは、安売された服やら靴やらが並んでいた。


「ここら辺お客さん少ないね〜」


「あー、確かに。なんか今ネット販売とかが発展して、こういう所が売れないっていうのニュースで見たな」


「おぉ〜、流石は南高。中森くん頭いいなー」


「い、いやそれほどでも」

と言って僕は頭をかいた。


「意外とこういうところに、掘り出し物とか埋まってるんだよなぁー」


古賀さんは山積みになった服を一つ一つ拾い上げて吟味していく。僕はそれを見ているだけだった。


「中森くんは、なんか服見ないの?」


「うーん、見ないかな」


「服とか興味無い感じ?」


「うん、まぁどちらかというと」


どちらかというとでもなく、普通に興味無い。興味に無さすぎて普段だって着ている服はお母さんが買ってきたものか、貰い物か、お古だ。


「なるほど...じゃあまた今度機会あったらオシャレな店でさ、服選んであげるよ」


「え?いいの?」


「もちろん。ウチに任せて。中森くんをハリウッドスターに仕上げるから」


ハリウッドスター!?ハリウッドとは程遠い僕を!?それほど服選びのセンスがあるということなのだろうか。下校後にしか会ったことがなかったから古賀さんのファッションセンスは分からなかったけど、これは古賀さんの私服を見られる日が楽しみになってきたぞ...!


「古賀さんは服とか好きなの?」


「うん、好きだよ。元々興味はあったんだけど、ハマったのは友達のおかげかな」


「そうなんだ」


「それで、最近は古着屋とか専門店とか行くのが趣味になってるかな」


なんとも、イマドキの女子高生っぽい趣味だなと思った。


例え、万が一に古賀さんのファッションセンスが悪かったとしても、古賀さんだ。何を着てもギャップ萌えで許されそうな気がする。


そして、僕らは服のコーナーを後にした。


「あれ?ここでは買わないの?」


「うん。まぁ気にいるやつなかったから。中森くんも買わなかったね」


「うん、、、まぁ。次はどこに行くの?古賀さん」


「ちょっと、お腹減っちゃった」


古賀さんは、お腹に手を当てて舌を出してそう言った。

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