2,はやけは病気、だから理屈で会を伸ばす稽古を考えてみた。

早気はやけ』みなさんご存知ですかね、弓道家の中では、一般的に心の病と呼ばれるこの現象ですね。ですが早気のなにが悪いの?

 と私は思いますし、荒い治療方法もあります。しかし、早気は病気でも会の長さが短いのは病気じゃないよ?


 問→早気の治し方あるの?

 解→わかりません、まずやってみましょう。


 とか言って、早気が治るのと的中が向上するのはまた別の話なんですけどね。むしろ早気のほうが中る場合もありますよ。練習ではね。


 そもそもなんで早気を治療する必要があるの?

 どこから早気と呼ぶの?

 そこからいってみましょう。


 私が思う「早気はやけ」とは、会の長さが短いことではありません、自分の意識とは別に離れが出てしまうことです。つまり的を狙ってないのに離れてしまうこと。


『ここでの会は、頬に矢を添えてから的を狙う時間とします』

 1秒でも狙えてる時間があれば、それは会に入れているので早気とは思いません。会が短いのです。

 ただね、早気だろうと会が短いだろうと、日々の稽古で楽しく弓を引くのに、別に会の長さとか必要ないかなと思いますよ。

『そもそも会にも入れていないのに離れが出てしまう』、これが真の早気ですね。

 これは重症ですけど、気合と根性でどうにかなる場合もあれば、そうでない場合もあり。

 じゃあ早気を引き起こす原因は何なのか。可能性を列挙しましょう。


 ①かけが悪い、弦枕が変形している。

 ②的があるから。


 この2つです。例えばゴム弓とか巻藁矢で早気は治る。でも的を狙うと離れる。これは荒治療(会を伸ばす訓練)でどうにかなる可能性があります。


 巻藁矢でも早気だし、ゴム弓で射場に立ち、的を狙ってみて早気となるなら。もう完璧な病気です。心が強くなるまで諦めましょう。それか新しいかけを買いましょう。早気を治したい強い意志があるなら、直る可能性はかけの構造だとするならば、治るかもしれません。

 お金? でもこれが気持ち。


□では、ここからは早気を治すのではく、会を伸ばす稽古とします。早気じゃないなら会は伸ばせます。理屈で。

 

 試合とかの勝負どころで安定して中てる選手になりたいなら会は必要です。

 会が短いから弓の反り返りが安定しないとか伸び合いができないとかのデメリットはてんこ盛り。だから会伸ばそうやってわけなんです。

 数秒会が伸びるだけでも全然中る確率が違いますし、勝負どころで外すより、狙って中てたいならなおさら。


 ほんなら会を伸ばす稽古法として、どう荒治療するか。では、弓道部が複数人いることを想定して、つづります。


 まず弓道を理解した2人でペアになります。

 もし社会人弓道とかで1人で射る場合は、我慢くらい出来るとして、第一関門を突破します。だって社会人弓道だもんね。

 そうそう、我慢して会が伸びるなら、次のステップに移っても大丈夫ですよ。


【ステップ1、我慢を覚える】


 ・1人は会短いマン。

 ・1人はサポート役。


 会短いマンは弓を引き、サポート役は会短いマンの前に立ちます(射位くらい)。

 サポート役は会短いマンが弓を引くのを見届け、その人が会に入る少し手前でダンボールとかで矢の先を隠します。これは別に旗とかでもいいです。こうなると離れは危険ですよね、「絶対離せませんよね?」、それ離すならもう荒治療は辞めましょう、マジで危険ですから。(違う方法、例えば誰かに会の秒数を数えてもらい、「離れ」、で離すとかね。)


 で、そこから例えば3秒程こらえてから、ダンボールを取り除いてもらい、再び的を狙います。変なとこに飛ばないように、ちゃんと狙ってくださいね。ポイントは無理のない我慢が出来る秒数です。最初から7秒とかそれは無理かな。ハードルは低めに、これがコツ。


 すると5秒くらいになるんです。でもいい離れは出ません。それは諦めましょう。

 それを反復練習し、自分の中にある「的を狙うタイミングをずらす」、伸ばすのではなく「ずらします」。

 そうしてまず筋肉に染みついた離れのリズムを取り除きます。慣れないうちは超疲れますよ。

 そこから1人で的前に立ち、頭の中で狙うタイミングを把握出来るようになったら第一関門突破。

 とりあえず我慢が出来るようになっただけですからね。


【ステップ2、1人で会を伸ばしていく】


 ほんなら次にどうするか。「会に入って何度も的を狙います」どゆこと?

 会の中で、チラっと矢尻の長さを見て、一時的に的を狙いません。そこから視線を的に戻し、また狙うんですよ。

 これは我慢ではなく、頬に矢を添えた状態で、何回も会に入りなおすんですね。


 発射準備→乱す→発射準備→乱す。となります。


 会が短い理由は、発射準備が自分の中で完了しているから、それをわざと乱します。で、何度も準備し直します。

 強引ですけど、狙い直すたびに力のベクトルを調整します。で、最後にキッチリ的を狙います。

 このリズムを乱していくうちに気がつく『伸び合いの魅力に気がつけるかどうか』。ここがポイントになります。

 それに気がつき、会がないと中たんないと思えばゴールです。

 ただ我慢するだけなのと、伸び合いはまた違う特性を持ちます。その変化を取得するように意識すること。それがリズム(脳の反射)を変化させる要素です。


 問→伸び合いってなんですか?

 解→勝負どころで中てれる技術。


【会での伸び合い。それは弓を押す力の方向と、弦を引く力の方向を、それぞれブレなく一本の線にすること。つまり弓のブレをどれだけ少なく出来るか、離れの方向を的確に出す準備が出来るか、です】よくある左右の力を均等にとありますが、人によって骨格に違いがあるから、そうでもなかったり。あ、これは私論どす。


『伸び合いって必要だわ』と理解すれば、スイッチが入ったかのように的を狙っても会が伸びます、最初は脳の反射に負けないように、離しそうになったらチラっと矢尻を見てその感覚をリセット。つまり的を狙わない。

 あとは会の長さに合わせて射を調整してください。目安は会が4秒〜くらいあれば、1秒と比較してその変化が体感できるかな。そこからは技術的稽古をひたすらします。


 この方法ですけど、会が伸びる人は伸びます。一度伸び合いの魅力に気がつけば、そう難しい事ではないです。ただ我慢するだけでは、疲れるから会がないほうが良いよねってなるからね。伸びない人はそんな事言ってましたね。


 問→短い会を伸ばしたいです。

 解→気持ちではなく、的を狙うリズムを操作しましょう。


 結局会を伸ばしたいのに短いって人は、もう筋肉と脳に「ここで離れだ!」と無意識にインプットされてるんです。

 会が短いのは病気じゃなくて、身体に染み込んだ的を狙うリズムが原因なんです。

「嘘でしょ?」と思うなら、試しに安土に的を立てず引いてみてください。あら不思議。


 で、緊張すると会が短くなったり長くなったりする人は、狙うリズムを乱されてるんです。

『会の長さは的を狙うリズムの長さ』これを意識すればわりとコントールできますよ。どこに押して、どこに離すか、それを的確に定めようと思うと、会が数秒だと分かりにくいんですよ。

 緊張するとアドレナリンが分泌されて、感覚で引いてる人は乱れやすい。だから感覚ではなく、「これしたら絶対中るわ」を研究するんですね。


 そうそう。会が短いことばかり考え、会が長くなる原因は何か考えたことがありますか?

 離せないから「もたれ」る。その原因は離すタイミングが分からないから。会が長い「もたれ」に関しては、馬手の形がわりと要因の一つですが。離れないのではなく、離れにくい形になってるだけ。まぁそういう射もありますが。


 つまり、的を狙えてるのであれば、まずそのリズムを操作するのが近道。危ないという意志で離れのタイミングがコントロールできるなら、『もっと伸び合わないと』って意志に置き換えるんですよ。

 この伸び合いの時間に関しては個人差がありますが、例えば試合でビクっても、もう一度伸び合えばいいんです。とってもシンプル。


 会を伸ばしたいのなら的中を捨ててでもまず伸ばす事。つまり1秒の会で中てる技術を捨て、5秒で中てる技術を稽古します。そこは考えてくださいね、筋力は引いてたら勝手につきますからね。弓力を変えても身体のリズムは変わりませんよ。


 まとめます。


【伸び合いをするために、会が必要になります。逆に伸び合いの魅力が分からないと、伸ばす必要を感じないから伸びません】


 結局のところ、試合でも安定して中るのなら無理に会の時間を操作する必要はないと思いますね。会短い人も一緒です。楽しければいいんですね。

 ほんでも勝負どころの一本を、意識して詰めれるのと、たまたま中るのとでは、全然違います。爽快感が。


 え、私? 高校2年生くらいまで会は2秒くらいでした。ホッホッホ。

 でも途中から伸びました。伸び合ってたら勝手に長くなりました。


 でもやっぱり、弓を楽しく引くのに会は必要ないと思います。でもね、試合で活躍するなら、会の長さというより、伸び合う技術を身に着けましょう。

 その技術を習得した先は、自動的に会は長くなりますからね。


 緊張で射が狂う事もしばしばありますが、そこは場数を踏むか、緊張に負けない自分の中て方を研究してみてくださいね。

 意味なく我慢するだけの会では、負けやすいですよ。

 一つの射をひたすら繰り返せばいいのです。甲矢を4本、乙矢を4本。こういった方法もあります。え、体配? 

 


 


 

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