第3話 あなたの名前は

小さくて、ふわふわした毛が生えた、毛玉ボールみたいな生き物は、ダンボール箱をあけると、タッパーの容器に、空気穴がいくつかあいた状態で届いた。


おがくずや、餌が入っている。


最初が肝心だと、知っていたゆかさんは、ネズミを脅かさないように、ゆっくり手を差し出した。噛まれない。

触ってみると、温かい。

久しぶりの哺乳類。その温もりに、毛の滑らかさに、心が癒される。


2匹のネズミは、名前はすでに決まっていた。

ベージュの少し大きい子が、ももちゃん。

グレーのハチワレ模様がにぼちゃん。


ももとにぼは、両方ともメスだった。


届いた最初から、仲がよかった2匹は、よく戯れていた。最初は喧嘩かな?とも思ったけど、お互いに手加減していて、楽しんでるのがわかったからだ。


新しい小屋は、ピンク。

最初は落ち着かない様子で、どうかな〜って、ちょっと心配だった。でも、餌も水もすぐ食らいついて安心した。

「長旅ご苦労さま」

ゆかさんは、今日から、ネズミの居る暮らしが始まる。なにもなかった日常に、色が着く瞬間だった。

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