第40話 無欲に勝るものはない。

 無欲が1番だと思う。

 でも何かが欲しいから仕事を頑張ることも現状ではあるわけで、常に無欲がいいかといえば、そうとも限らないように思います。


 むかしブラック会社に勤めたことがありますが、その会社には金に飢えた若者や知り合いがゴキブリのように集まりました。


 少しばかりの金品をもらい、食事をごちそうになり、何かおこぼれがもらえるんじゃないかって近づき、挙げ句、その見返りに殴られたり蹴られたりしていた当時の若者は今どうしているのでしょう?


 社長はなんでもオレに言ってくれ。

 不満はないか?

 望みを叶えてやろうじゃないか。

 よく社員にそう言いましたが、給料をあげてほしいとか、休みが欲しいとか。物欲しげな人たちはそこにつけ込まれ、言いように利用され、最後に首を切られた。


 彼らは本当にお金に困っていて、その困っている心につけ込むのが社長の狙いだったように思う。


 正直に不満をぶちまけた社員は、ことごとくひどい目に遭って最後は首チョンパされました。


 嘘と方便。

 本音と建て前。


 社長は社員を捨て駒だと思っていましたので、何か気に入らないことがあればすぐにでも首にすればいい。

 そんな風に考えていたと思います。


 社員が社長に殴られるたび、なぜあのとき社長に直訴して本音を語ったのか? 会社の不満を社長につぶやいたのか、不平を言う相手を見誤っている、そう思えてなりませんでした。


 物欲しげな人。

 心に隙のある人は、やはり詐欺師にとって、だましやすいターゲットでしかありません。


 物欲しげな考え、あわよくば何かもらえるかもしれない。

 その考えにつけ込んで、悪党は最大限、利用価値を見いだす。


 鼻の前にぶら下げられたニンジンは食べ頃だけれど、結局のところ、馬が食べさせてもらうことはありません。


 次の日も次の日も、同じニンジンを使い回して、鼻先にぶら下げられるのです。そう、お飾りだから。食べられては困るのです。


 こういう類いの、社長のような人たちは、人を利用してナンボって思っているので、相手が苦しもうが相手が不利益を被ろうが一向に構いません。


 すべては、どれだけその人に利用価値があるかないか、どれだけ自分にとって、企業にとって利益をもたらすか、なのです。


 無欲がやはり1番強いように思う。

 少なくとも付け入れられることはないように思います。

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