天使兄生 ~光と影の兄妹は世界最強~
黒夜
第1話 大天使との出会い
VRMMORPGの「フェアリーアート・レルムズ」略してフェアレムの世界。
設定は遥か大古に迷宮創りが好きな妖精の女王が創造した世界で剣と魔法に溢れるファンタジー感満載の世界。
そんな魅力的なゲームの世界を管理する部屋で高城智也は驚く。
他のプレイヤー達から影が薄いことで評判の高城智也の息子──高城秋夜が画面越しに剣を振るっていた。
「あの子の攻撃を凌ぐなんて我が息子ながらすごいなあ」
「それにあの子、『飛行の指輪』を装備しているおかげで空が飛べるものね」
隣に居る妻が画面を中の秋夜を見て感心する。
智也も感心した。
「この世界では基本的にプレイヤーは空が飛べない……唯一の飛行手段の『飛行の指輪』を運よく見つけて創り出すとはね」
この指輪は錬成師のジョブで製作することができる。
錬成師のジョブをカンストしてた秋夜なら製作可能だ。
「それにしてもあの子、なんで石像を壊しちゃったのかしら?」
「さあ?あの子なりの勘じゃないかな?」
息子を今襲っている敵はこのフェアレムの世界でも最上位の存在である大天使メタトロン。
三十六対の翼と無数の目を持った超巨大モンスター。
この世界に数十体存在すると言われているユニークモンスターの一体だ。
メタトロンは複数の『目』から当たると貫通して痛そうな光線を放ち、巨大な翼を伸ばして攻撃してする。
このままではじり貧だと思ったのか秋夜は飛んで森の中に逃げ込んだ。
◇ ◇ ◇
俺は森の上空でメタトロンと戦っていた。
「なんで俺を狙うんだ?」
俺はただこの空を飛んでいただけでメタトロンに対して何もしてない。
それともユニークモンスターはプレイヤーを見たら自動的に攻撃する設定でもされてるのだろうか?
あとでお父さんに聞いてみよう。
それにしても本当に俺はなにかしただろうか?
思いつくのは精々、森の中にあった天使の姿らしき女性の石像を壊してしまったぐらいだ。
うーん、いや……。
「もしかしてそれが原因か?」
たぶんそうだろう。
もしかしたらあれはメタトロンの石像だったのかもしれない。
俺はなんて罰当たりなことをしでかしてしまったんだろう。
でもまあ、わざとじゃないから許してほしい。
追いかけてくる翼も諦めて欲しいな。
すると空がものすごく明るくなる。
空を見るとメタトロンがなにか光の塊を収束させていた。
ああ、あれはやばい。
やばいやばい!
あれを受ければいくらレベルカンストしてる俺でも普通に死ぬだろう。
そんな嫌な予感がする。
あの光りの量からしてここら辺一帯は攻撃範囲内になりそうだ。
俺の飛行のスピードじゃ射程外に逃げ切るのは間に合わないかもしれない。
ここは錬成師のジョブで作った『転移の指輪』で転移して逃げてしまおう。
そう思い転移先をイメージしたのだが、なぜか転移できないことに気づく。
あれっ、なんで!?
「嘘だろ……」
次の瞬間光りが世界を覆った。
ああ、死ぬうー。光線が俺の全身を襲うー。
そう思って目をつぶった。
一秒二秒、三秒……。
あれ?まだ衝撃がこないぞ?
俺は目を開けて空を見る。
するとさっきまで夜だったはずの空が日差しのまぶしい空に変わっていた。
景色がすべて変わっている。
鳥の鳴き声と波の音がしたので後ろを振り向くと青い海が広がっていた。
足元は白い砂浜。
ところどころ岩が転がりカニがいるのがわかる。
ここはどこだろう。うーん、突然の出来事過ぎて意味がわからん……。
というかメタトロンどこ行った?
空を見渡しても翼を持つ巨体はない。
どういうことかと思い正面に向き直ると知らない女性が立っていた。
「ど、どちらさま?」
「あなたこそ何者ですか?わたしの攻撃をあそこまで凌ぐ人間は見たことありません」
「攻撃?えっと、もしかして大天使メタトロン?」
「はい」
艶やかな腰まで伸びた白髪にとても人とは思えない美貌を持った女性。
背中には三対の翼があり、胸が大きい。
なんとなく俺がさっき壊した石像の女性に似ている気がする。
もしかして本当にさっきまで俺を攻撃していたあの巨大なモンスターなのだろうか。
疑問が湧いてくるがここは一端置いておく。
本人がメタトロンと言ってるのだからメタトロンなのだろう。
翼が生えてるしさっきまでのことを知ってるみたいだし。
とりあえず石像を壊したことを謝ろう。
「メタトロンの石像を壊してごめん。怒ったよな?」
「いえ、むしろよく石像を壊してくれました」
「どういうこと?」
怒ってたんじゃないのか?
「わたしはあの石像により封印され身動きできない状態だったのです。ですがあなたのおかげで自由になれました」
「怒ってたんじゃないのか?さっきまで攻撃してきてたし」
「怒ってません。さっきまで暴れまわっていたのは封印が解かれた反動で暴走状態になっていたわたしのもう一つの姿です」
「じゃあ今は正気に戻ったのか」
「その通りです。あなたには感謝を申し上げます」
「ああ、気にしなくていいよ。俺も知ってて石像を壊したわけじゃないし」
はあ、よかった。
メタトロンが襲ってこないとわかり安心した。
俺もこれで少し気が抜ける。しかし問題は残っている。
ここがどこだかわからないことだ。
俺はマップを見ようとメニューを開こうとして画面が出てこないことに気づく。
なんど右手を下に振ってもメニュー画面が出てこなかった。
どういうことか疑問を誰かに応えて欲しい。
そう思ってメタトロンに声を掛けようとした瞬間──頭の中に情報が流れ込んできた。
なにか『運命術理』というスキルをゲットしたようだ。
頭の中を情報の波が襲う。
頭の中に直接、この世界についてとスキルの使い方についての情報が流れてくる。
メタトロンを見ると彼女も頭を押さえて固まっていた。
もしかしたら俺と同じ状況なのかもしれない。
しばらく車酔いみたいな感覚を味わっているとやっと治まった。
どうやらここは現実世界でもフェアレムの世界でもないらしい。
ここは死後の世界だ。
俺もメタトロンも異世界転生に巻き込まれてしまったらしく、いまは転生する前段階と言ったところだ。
でも人間の俺が転生するのはわかるけど、モンスターのメタトロンも転生するとは……無差別すぎやしないだろうか。
「なにやらスキルというものを獲得しました」
「やっぱりか。俺もスキルをゲットしたよ」
案の定、メタトロンもスキルを獲得したようだ。するとメタトロンが手を差し出してきた。なんだろうか?
「なに?」
「握手です。わたしたちはこれより盟友として、何もわからない異世界を生きていくためにも協力しましょう」
「わかった」
断る理由がなかったため握手して返す。
そういえばまだ自己紹介がまだだったなと思い出す。
「俺の名前はタカジョウ・アキヤだ」
「そうですか。わたしはメタトロンです」
「よろしく!」
「よろしくお願いします」
こうして俺はメタトロンと友達になった。
そして意識が暗い底に沈んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます