2-14 収容所の怪 

1958年 ドイツ第三帝国 シュトラウツ収容所


 「報告!収容室と手間の詰め所を制圧し、現在は管理棟への攻略を実施しております」

 「ご苦労。総統閣下たちの所在は、どうだ?」

 「今の所、何も入っておりません」

 「そうか」

 クローは、参謀の報告に不安を覚えつつも、目の前の状況打開に尽力していた。

 「旅団長!先ほど捕らえました捕虜より、総統閣下が、車両にて逃走していった事が分かりました」

 「本当か!行き先は」

 「はっ!どうやら、後方にあります野外実験場に向かっているとの事であります」

 「野外実験場?この施設には、そんなものまであったのか」

 クローが驚いた表情で、収容施設の地図を睨みつけながら報告にあった野外実験所の場所の把握にかかる。

 「報告!基地内に突入した部隊から手持ちの火器で倒れない兵士と交戦しているとの事。パンツァーファーストないし、直射砲の使用を要請しております」

 「手持ち武器では倒せない敵か。・・・・わかった。対戦車部隊を派遣しよう」

 クローは、外に居る対戦車砲中隊と重装備部隊を施設内に派遣した。

 その頃施設内では、突入している降下猟兵部隊と親衛隊、総統の子供たち所属の研究員が互いの目的のために己の手に凶器を握りしめていた。

 ドイツ国防軍の精鋭集団である降下猟兵部隊は、突入後素早く施設の3割ほどを制圧し、収容されていた囚人の身柄を確保しつつ、反抗するモノを制圧してくいたが、中央監視室においてシャイドルらが作っていた麻薬によるトランス状態になったSS兵士により苦戦を強いらされていた。

 「・・・・了解!直ちに実行します」

 「通信兵!旅団本部からはなんと?」

 「支援要請及び、制圧火器の使用を承認されました。一度後退して受領するように言ってきています」

 「了解した!全軍後退」

 施設に展開していた降下猟兵部隊は、射撃制圧しながら組織だった動きで後方に下がっていく。

 「そういえば、参加しているベルリンの中隊があったな」

 「ええ」

 小隊長は、確認すると通信兵がそのが持つ通信番号に合わせると、受話器を手渡した。

 「小隊長。合わせてあります」

 小隊長が受け取ると本部から届いた情報を共有した後に、ルセフたちの所在を報告した。

 「・・・・ああ。だからそちらの部隊で救出をお願いしたい」

 小隊長が連絡すると、持っていた手りゅう弾を投げて煙幕を張ると後退していった。

 不意に一人の兵士がその場で倒れる。

 「痛った!」

 「おい!大丈夫か?」

 倒れた兵士を見て、近くの兵が駆け寄る。

 「ああ。だいじょう・・・・って何だこりゃ!」

 彼は、自分の足の足を診て驚愕していた。彼の悲鳴と他部隊員の怒号が響いた。

 

・・・・収容所野外実験場・・・・

 何とか車にて野外に出たルセフたち一行は、一呼吸置いた後に周囲の状況を把握していた。

 「大尉。追っ手は来ていないようですね」

 「発砲音が施設内からかすかに聞こえている。もしかしたら、研究者達に付いていた守備隊が頑張っていいるのかな?」

 全国指導員と記者が音を聞きながら呟いている横で大尉が双眼鏡を使いながら収容所の様子を確認する。

 「どうやら、そんなにいい状況でもないみたいだぞ」

 大尉がそう言って二人にも双眼鏡にて施設の状況を見せる。

 そこには、複数のドイツ国防軍軍服を着た兵士数人がこの研究所で作られていた改造人間たちとの戦闘を行っていた。

 しかも、多くの改造人間は、肉体の膨張で服が裂けているものの親衛隊の軍服を羽織っていた。

 「あれって、効果猟兵の人たちよね」

 「多分な。遠巻きから見た感じだと装備品やヘルメットから判断しただけだが」

 大尉が全国指導員にそう伝えた後、後部座席に乗っているルセフに声をかける。

 「閣下。ここで車を捨てて、茂みを歩いてゆきましょう」

 「なぜだね。この車は、もう走れないのかね?」

 「確かに、この車両は孟駄目でしょう。それに、この車両では、とても目立ってしまう結果になるからですよ」

 大尉の言い分を聞きながら後ろで記者が頷いて答える。

 「わかった。君の意見に従おう」

 ルセフがそう言って車両から出る。

 「大尉。あなた、その足で閣下たちを守れるのかしら?」

 全国指導員がそう言って、大尉の足を指差す。

 彼の足は、包帯にて止血されているものの、7.62mmにより貫かれたことにより、かなり動かしにくくなっていた。

 「何。俺は、長いこと戦場に居たのだ。こんな怪我なんとも・・・・ッ」

 足を叩いて大丈夫なことをアピールして見せたが、痛みとは正直な感覚である。

 「やっぱり無理じゃないの!一体どうするのよ」

 全国指導員がそう言って頭を抱える。

 「お困りのようですね。よければ、道案内しましょうか?」

 その声と共に茂みの奥から歩いてきた者たちは、ボロボロな軍服とへこみだらけのヘルメットをかぶった顔見知りの一同であった。

 「お前ら。クロー大佐の下に居たのではないのか?」

 「守るべき閣下や指揮官がいませんでしたので、私の独断で隊を動かしたのであります」

 彼らの後ろから出てきた少尉は、持っていたサブマシンガンを肩に下げながら大尉に伝える。

 「このバカ者どもが!・・・・あきれてものが言えないよ」

 「はっ!馬鹿者であります」

 少尉の声に並ぶように笑顔の兵士たちが全員敬礼する。

 「よし!閣下を援護するぞ。俺について来い」

 大尉の中隊は、ルセフたちを守りながら茂みの中に消えていった。

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