第7話 赤い鉢

尾行して何が分かるのだろう。連絡がつかない花梨が行きそうな場所は確かに課長のところかもしれない。会うなら花梨の家ではないか?そう考えながら2人で会社の前で隠れて課長を待った。私は課長を尾行するドキドキよりも今日休みの私がこんな所をうろついてるのを会社の人に見つからないか、そっちが心配だった。課長が出てきた。私は小さな声で「あの人が課長だよ」と四葉に教えた。四葉は「男前課長を追いかけるよ」とノリノリで尾行を始める。尾行がバレていないかハラハラしたが意外とバレないものだ。まさか課長も部下が追いかけるなんて思ってもみないだろう。降りた駅で行き先は花梨のアパートだと予想はついた。私は「行き先は花梨のアパートだよ」と四葉に教えた。花梨のアパートに課長がついた。課長はインターフォンのボタンを押した。しかし花梨は出てこなかった。課長は帰ろうとしている。私は「どうする?課長は帰るみたいだけど!」四葉に聞いた。四葉は「尾行はやめ!」と言いながら隠れた。課長は駅に向かう。私たちは隠れながら花梨の部屋の前に行った。私は「課長の尾行はやめてどうするの?」と聞く。四葉は「課長なら花梨は部屋から出ると思ってたのに…」と呟く。私もそうだと思っていた。でも予想が外れた。ピンポーンっとあっさりボタンを押す四葉。私は驚いた「ちょっと!出て来たらなんて説明するの?」と思わず騒いでしまった。四葉はガシャっとドアのノブを回した。あっけなく部屋は開いた。四葉は「開いてるね」と言う。私はずっとドアには鍵が掛かっていると思っていた。私は「開いてるねっじゃないよ!ちょっと待って私が声かけ」と言ってる最中なのに四葉が「あのー!花梨さんいます?」と叫んだ。部屋の中は真っ暗で静かだった。四葉は「お邪魔しまーす」と部屋に入る。私は「ちょっと!」と叫んだが四葉は聞いていない。四葉は部屋の明かりをつける。部屋はよくある1ルームだ。部屋の奥に大きな窓があり右側にベッドがあり左側にTVがあり真ん中に小さなテーブルがある。部屋は乱れてない整理整頓されている。花梨の姿はない。四葉は窓を開けてベランダを覗いた洗濯物が干されたままで、あとは洗濯機があるだけ。四葉は洗濯機を開けた。洗濯機の中はからだった。四葉は部屋に戻りゴミ箱を覗く。ゴミ箱にはサンドイッチの空パックがある。四葉が「部屋は綺麗なのちょっと臭うね。この空パックのせいかな?」と言う。私は「それ会社の近くのサンドイッチ屋のだ」と答えた。四葉は首を傾げながら「会社に1週間以上も出勤してないのにサンドイッチのゴミを放置?それとも休みに買いに行った?」と呟く。私はもしかしてっと思った!私は考えを四葉に言ってみた「確か花梨が1日目休んだ時に課長がサンドイッチ買って食べてた。それに紙袋が大きかったのに出したサンドイッチは1つだけだった。その日に花梨にサンドイッチを買って渡しに行ったのかな?」それを聞いて四葉は頷き「パックのゴミがあるのに紙袋のゴミはない」と言った。ゴミは1週間以上放置されているようだ。また四葉は部屋を見渡したが何もなさそうだ。お風呂を覗いたが水っけもなく数時間以上は使われてない様子だ。四葉は部屋を見た結果「1週間以上部屋には誰も入ってないかもね」と言った。明かりを消して玄関に戻った。玄関の靴棚の上に四葉のクローバーの白い鉢があった。四葉がそれをじーっと見た。私は「たぶん旅行の時に買ったものだよ」と言った。四葉が黙って、また電気をつけた。私は「どうしたの?もう何もないからいいでしょ?」と言う。四葉は白い鉢の汚れを指さして「血じゃない?」と言った。少しだが飛び散った血に見える。私は顔が真っ青になった。部屋に気を取られていて気づかなかった。靴棚には、よく見ないと気づかない血がついている。私は手が震えてきた。四葉は「まだ誰の血か分からないよ」と言った。私は「でも何かあったのよ!花梨いないのよ!」泣き出しそうな声で言った。四葉は電気を消して私の肩を抱えながら外に出る。私は「ちょっと!どうするの?」と叫んだ。四葉は言う「課長のそぶりから花梨の状況を把握できてないようだ。優菜の話で最近スーツが同じって言ってたな。心配はしてるのに呑気にもう1人の不倫相手に会いに行ってるとか変だろ?もう1人の不倫相手が何かを知ってるから会いに行ってる可能性が高くないか?」私は頷いた。同期の舞に電話をかけて適当な理由で鈴木さんの連絡先を聞いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る