第7話 冒険者について

 これで冒険者登録が出来たのだろう。

渡されたカードを見ていると何だか新鮮な気持ちになるが、このEランクという表記を見るに……最低ランクからのスタートと言う事だろうか……、これはシュラの機嫌がまた悪くなりそうだがそれよりも今は、ギルド長カフスの様子が気になる。

何やら私達を見て驚愕に眼を見開いているのだがどうしたというのか……


「私よりも強いと感じてはいましたが……、まさかこれ程の方達とはむ、むぅ、ですが規則は規則なので最低ランクから始める事を許してくだされ」

「この俺が最低ランクからだ……、ぐぅっ!?」

(シュラ、大人しくしないとだめ)


 レイフに掴みかかろうとしたシュラをセツナが横から叩いて黙らせる。

まぁ、こいつが喋ると碌な事にならないからな……、これ位強引に静かにさせた方が良いだろう


「すまない、こいつは気性が荒いせいで直ぐに人に噛み付くのだが気にしないでくれ」

「……分かりました、では説明させて頂きます」


 冒険者のランクは最初は最下位のEから始まるが、ギルドを通した依頼を一定数達成し実力がある事が認められる事でランクが上昇する仕組みになっているらしい。

とは言えその際に冒険者を引退しギルドの職員となった者が試験を行うらしいが、私達の実力なら問題無くクリア出来るだろうという事だ。

……それに万が一の事が起きて死亡者が出ないように、試験時は特別な結界が使われ生命に届くダメージ又は人体の欠損が起きると判断した一撃が起きた場合は、攻撃を無力化し攻撃された側を場外へと弾き飛ばすようになっているそうだ。


「――そして、Eランクの場合受けられる依頼は比較的安全な物が多いのですが、街の外で薬草の採取や危険度の低いモンスターの討伐が多いです、こちらに関しては常駐依頼となっておりますので早くランクを上げたい場合はこれらを効率的に利用すると良いでしょう、まぁ最も信用と信頼が得やすいのはギルドに入ったEランク用の依頼ですが、街のどぶ攫いや飼育している動物の散歩等、正直戦う能力が無い人専用なのであなた達向きではないでしょう」

「……なら奇跡、いや私みたいに治癒術が使える人用のEランク依頼とかってないの?」

「残念ながら冒険者ギルドに治癒術師を必要とする依頼は来ません、そこは治癒術師が大量に所属している教会とフリーで活動している人達の管轄なので住み分けております……、ですが冒険者ギルドに治癒術が使える方がいるという事は凄い貴重な事ですので、生存率が低い高ランクの方用の依頼となった場合彼等からギルドを通した個人依頼として声がかかるかもしれませんが、正直ランクが上がり周囲から実力があると判断されない限りは、見向きもされないと見た方が良いでしょう」

「……そうなんだ、じゃあ私達頑張って直ぐ高ランク冒険者にならないとね、こうやって冒険者になったんだから皆とだけじゃなくて色んな人と冒険したいし、兄貴もそう思うよね?」


 確かにミコトの言う通りだが、兄としては少しばかり自立して欲しいという気持ちが無いわけではない。

だが妹が他の冒険者と組む事を考えると落ち着かない辺り私も人の事は言えないのだろう。

とはいえ……


「何で私に聞くんだ?」

「だって、兄貴の事だから他の人と組むってなったら心配してついてくるじゃん、私も兄貴が他の人と組めるのか心配だから、他の人とってなったらついて行くから安心して欲しいかな」

(……私はシュラちゃんが心配かな、私達意外と組めそうにないから)

「私もそう思うけど、そこはレイスと組ませれば大丈夫じゃない?周りに合わせる事なら得意だから協調性の無いシュラとバランスが組めるでしょ、あぁ後私はランクが上がったらセツナと組むわ、双子だから相性がいい」

「僕と?シュラが嫌じゃないならいいけど……、まぁ拒否権がなさそうだからそれでいいよ」


 後ろでセツナに口を塞がれた状態で、何やらムームーと文句を言っているシュラを放置して話が進んで行く。

ただ危険度の低いモンスターと言うのが個人的に気になるが……、私達が生きて来た時代にそのような呼ばれ方をされる生物はいなかった筈だ。


「カフス、一つ聞きたいのだが危険度の低いモンスターとはなんだ?」

「……ん?もしやご存知では無いのですか?」

「あぁ、色々と人に言えない事情があってな、世間に疎い所があるのだが……」

「なるほどそういう事ですか、事情は分かりませんが冒険者になる者は少なからず人に話せない事情がある物です、ではそれに関して説明させて頂きますが主にEランク冒険者が討伐するモンスターはゴブリンと言う肌が緑色になっている人型の亜人ですな、奴等は住む地域で肌の色が違うのですが、この近辺は森や木が多い為遠目で見たら迷彩効果で見つけるのが困難になるという特徴があり、主に人間を含んだ女性を使い繁殖する種族で増える速さも母体の大きさ次第ではありますが、半月に1~5人と異常な速度な為狩っても狩り切れないという特徴がありますな、後はフェレストウルフ等人を襲うようになった野生の動物もモンスターと呼ばれておりますが、それらは基本Dランクからの管轄となりますな」


……何となくだがこの時代の事が理解出来た気がする。

魔族から獣人族から呼ばれるようになった奴等はこの時代で人間として生きる事で共存に成功し、逆に害を及ぼす存在はモンスター、即ち化物として討伐対象になったのだろう。

人に危害を与えるようになった野生の動物とやらも、人類の生存の為には討伐するべき者なのだろう。

なるほど、この世界は平和になりこそしたが未だに生きる為に戦わなければいけない世界なのだなと思うのだった。

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