第3話 能力の確認
やっと全員が起きた。
説明した現状に関してシュラとレイスの二人も同じような状態らしいが……
「……で?俺達が態々街に降りて冒険者ギルドで働くだと?」
「シュラ、これから先の事を考えたらそれしかないだろう」
オレンジ色の髪と水色の瞳を持った偉そうな顔をした長男、死の天使シュラは否定的な意見を述べる。
こいつの性格的に間違いなく、自分よりも弱い存在しか居ないだろう街に行くくらいならここに街事移動して来いと言いたいのだろうけど、その高圧的で好戦的な性格は一度死んでも治らなかったらしい。
「えっと、行くのはいいんだけど僕たちが冒険者ギルドで冒険者になるとして……、仕事内容は?」
「それならレイス、あなたは討伐系とか良いんじゃない?相手の意志に干渉して襲い掛かった時に仕留めるとか得意だったじゃない」
「仕留める何てかわいそうな事をどうしてしなくちゃいけないんだい?、出来れば二度と危害を加えないように説得たいよ僕は……、必要があったら躊躇う事無くやるけど」
白の髪と同じ色の瞳を持ったやる気の無さそうな顔をした次男、意志の天使レイスは肯定派だけどやる気はそこまで無いようだ。
肯定的で尚且つ協力的な意志を持ってくれているのはセスカとセツナの双子姉妹位か……、ただ確かにレイスの言うように冒険者になったとしても、仕事内容が分からなければどうしようもない。
「……ん?あぁっ!?シュラ兄とレイス兄起きたのっ!?」
「あぁ、ついさっき目を覚ましたぞ」
「もうそれなら教えてよ兄貴」
「魔力の波長で気付けるだろ……?」
「……食べれる物集めてたら気付けないよって、うわっ!」
両腕で抱きしめるようにして大量の食べ物を持って洞窟の奥から出て来たミコトが、嬉しそうに走って来たけど途中で躓いて転びそうになる。
それをセツナが急いで近付くとそっと抱き留め、持っている荷物を半分受け取るとゆっくりと二人で歩く。
「セツ姉ごめん……」
(大丈夫だよ?、ほらミコトは小さい頃から良く転んだりしてたから大丈夫かなって心配で、直ぐ動けるようにしてたの)
「うん、ありがとう、でさ、これが食べ物なんだけど……」
取り立ての果物に乾燥して硬くなったパン、そして色が変わった肉としなびた野菜、食べ物を定期的に街に降りて買っていたのではなかったのだろうか。
これではどう見てもこれは購入してから大分時間が経っているように見えるが……
「ミコト、まさか俺にこのような家畜の餌を食えと?」
「えっとそうじゃなくてね?ほら私の能力を使えば……」
ミコトが背中の白い羽を広げると頭上に天使の輪が浮かび上がり洞窟の中を明るく照らす。
すると痛んでいた食材達が徐々に元の色や水気を帯びて行き新鮮な状態へと戻っていく。
パンに至っては柔らかそうにふっくらとしたかと思ったら一部を残して穀物の状態へと戻ってしまった。
「あっ……」
「なるほど、命の天使の力を使って食材を生前に近い状態に戻したのか……、だがパンだけはやり過ぎたようだな」
「ごめん……、目を覚ましてから細かい調整が難しくて」
「という事は、もしかしたら私達も同じ状況にあるかもしれないな……、セスカ試しに破壊の力で何でもいいから壊してみてくれ」
「ん?え、えぇ……」
(いや……、私が何か作るからセスカはそれを壊してみて?)
セツナが機械で出来た翼を広げると眼を閉じて両手を祈るようにすると空中に四角い物体が現れる。
それに手を触れたセスカが緋色の翼を輝かせ魔力を流すと砂のように細かくなって崩れて行き中から人型の小さな人形が現れる……、どうやら二人の能力は問題無く使えるようだ。
「……細かい制御とかも私は出来るようね、丁度意志を込めやすい人形が出来たからレイスやシュラも試してみたら?」
「うん、やってみるよ……」
レイスの石で出来た灰色の翼が軋むような音を上げて前方へと翼を広げていく。
そして両手で包み込んだ後に魔力を込めて念じる……、そして手を開くと人形が意志を持ったかのように動き出した。
「……何故俺がこんな事に付き合わなければならないんだ、ふん、まぁいいやってやる」
太陽のように眩しく翼を輝かせると指先から底冷えするかのような黒い魔力が伸びて行く。
何かを感じたのか人形がレイスの手の上から逃げるように飛び降りて洞窟の出口へと走るが……、追いかける魔力の方が早く体に触れた瞬間に体中がひび割れ砕けてしまう。
「出力が安定しないが徐々に出来るな……、イフリーゼお前はどうだ」
「……私の能力を使う為に必要な生命がいないが、使おうとして見た結果問題無く使えそうだ、どうやら強力過ぎる能力程不安定な状況らしい、セツナの能力も以前はもっと発動が早かった筈だ」
(うん……、イメージが形になるのに大分時間が掛かる)
「これは街には翌日にでも降りた方が良さげだろうな、冒険者となって実戦で感を取り戻して行った方がいいだろう」
「決まりだね……、パンは食べれなくなっちゃったけど今日はお肉と野菜を食べようよ、そのままでも素材の味がして美味しいよ」
……ミコトがそう言うと生の状態の肉と新鮮な野菜を渡して来る。
確かに天族である私達は食材に火を通さなくても食べればするが……、個人的には焼いた後に調味料を大量に付けて味が残る方が好きだ。
そう思いながら肉に噛り付くと……、ゴムを噛むような感覚しかなく味覚を感じない。
どうやら私は一部の記憶以外に味覚も失っていたようだった。
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