TS転生したから野球で無双する

第274話 千葉の強豪

秋季関東地区大会準決勝の第1試合、統光学園と埼玉農大三校の試合は統光学園が5対2で勝利した。これで統光学園は決勝進出が確定し、もし私達がこの試合で勝利した場合、決勝で再び統光学園と当たることになる。

「……久美ちゃんの調子が良すぎるんだけど、何したの？」

「来年のドラフトについてと、再来年以降の話をしてたら盛り上がっただけだよ」

1回表、習志野の攻撃は三者凡退で終わる、面白いぐらいにドロップカーブが良い高さからカクンと落ちてて、習志野の選手はバットを掠らせることも出来なかった。追い込まれる前にバットを振った3番の福羅(ふくら)さんは、インコースのスクリューを内野ゴロ。

球速も最速に近い128キロが出てるし、これ以上無いぐらいに好調だから投手はやっぱりメンタルが重要だと思う。1回裏の湘東学園の攻撃は、1番の聖ちゃんから。

湘東学園　スターティングメンバー

1番 二塁手 木南聖

2番 捕手　 梅村詩野

3番 左翼手 伊藤真凡

4番 三塁手 実松奏音

5番 一塁手 江渕智賀

6番 右翼手 高谷俊江

7番 中堅手 勝本光月

8番 遊撃手 井原美琴

9番 投手 　春谷久美

7番に光月ちゃんを置いたのは、下位打線でも点が取れるようにしておきたかったからとのこと。井原さん詩野ちゃん久美ちゃんの並びだとあまり点に期待が出来ない打順になってしまうし、最近は光月ちゃんのバッティングが変わって来てチャンスの時ほど高い集中力を持って打席に入ってる。

糸留さんから教わったバッティングフォームというのは、徐々に光月ちゃん自身のものになっている。新しいバッティングフォームで打撃をイメージするようになって、少しずつイメージと身体の動きの差も少なくなって来た頃。力みも取れて、良いスイングをするようになった。

習志野の先発は、130キロの速球を投げる2年生右腕。千葉随一の強豪校で投手も集まる習志野で、130キロの直球だけが取り柄のエースは珍しい。変化球はカーブとチェンジアップがあるけど、コントロールは比較的悪い方。

……まあ、多久大光陵の芳田さんが頭角を現したのは1年生の夏だし、その影響があって翌年に良い選手が集まらなかった可能性はある。

先頭バッターの聖ちゃんは追い込まれてから、ストレートを流してサードと三塁線の間を抜こうかという打球を打つけど、サードが飛びついて捕球し、鋭い送球でアウトになる。……強豪校の中でも、習志野は守備を徹底して鍛えているから内野に飛んだ打球は全部アウトになりそう。

打線は調子の良し悪しを諸に受けるけど、守備は実力以上のものが簡単に出ないし、逆に実力を出し切れないということもそんなにない。詩野ちゃんの打球も広い守備範囲を持つショートに阻まれて、簡単にツーアウト。3番の真凡ちゃんは、超前進守備の外野の頭を越そうとして、外野フライに倒れる。

夏の合宿の際、私と真凡ちゃん抜きで練習試合をした時は習志野相手に8対3で勝っている。でもその練習試合で弱点とかは把握されてそうだし、そういう攻め方をされている。

「……自分にパワーが無いことに腹が立つわね。一二塁間をわざと空けて、ライトゴロを打たせるシフトも初めて見たわ」

「あれ、真凡ちゃんにライトゴロを打たせるシフトだと見抜かせた上で、本命は外野フライを打たせることじゃないかな。外野の3人の守備範囲は、かなり広い感じだし」

「習志野って、元々そんなデータ野球だったかしら？今年から？」

「元々、相手の選手のデータ解析は怠って無かった高校だけど、ここまでなのは今年からだね。正確には、今年の秋からかな」

少ししょんぼりしている真凡ちゃんとお話して、2回表の守備に就く。この回は4番からの打順で、その4番にヒットを打たれてツーアウトランナー3塁のピンチを迎えるも、久美ちゃんが落差のあるフォークやドロップカーブを怖がらずに投げ続けて無失点。

詩野ちゃんの凄い所は、ランナー3塁でも落ちる球をどんどん要求することだし、一球も逸らさないことだね。特に久美ちゃんのドロップカーブや優紀ちゃんのナックルを、ランナーが3塁にいる場面でワンバウンドしても涼しい顔して捕球出来るのは詩野ちゃんだけかもしれない。

2回表の湘東学園の攻撃は、私からだけど当然敬遠。お互いに選抜行きは確定しているから勝負しても良いはずだけど、向こうは統光学園と戦いたいのかな。続く智賀ちゃんも敬遠気味に勝負を避けられ、ノーアウトランナー1塁2塁。

これは今の湘東学園にとって1番嫌なパターンだけど、とうとう智賀ちゃんも1塁にランナーがいるのに敬遠されるバッターになったってことだね。2者連続敬遠の後、少し顔が強張っている高谷さんが打席に入る。これは、色々と背負ってしまうのも分かるし嫌な予感しかしない。

そして、その嫌な予感は的中して高谷さんの打球はファーストゴロ。ファーストなのに肩が異様に強い福羅さんが2塁へ送球し、智賀ちゃんはアウトになる。高谷さんの足は1年生の中でもトップクラスだけど、1塁もアウトになってダブルプレー。向こうの敬遠策が、生きた形だ。

ツーアウトランナー3塁になって、打席には光月ちゃんが入る。……凄く集中しているし、この光月ちゃんを敬遠しないのは向こうの判断ミスだね。