第121話 大会6日目

『カノン砲鳴り止まず!!1試合3本塁打!!選抜甲子園の1試合本塁打記録を塗り替える!』

『21世紀枠は本当に必要か?3校とも大差負け「見ていて辛い」』

『今日からは2回戦。和泉大川越と秀岳院の対決に注目。両エース意気込み語る』


「おー、カノンが凄く大きく新聞に載ってる」

「甲子園専門紙だけどね。1試合での本塁打記録を塗り替えたそうだから、流石に載った」

「今までは大会記録が3本だったのね。それなら、大騒ぎもするはずだわ」


1回戦の翌日の新聞に、でかでかと私の写真が載っており優紀ちゃんがそれに気付いた。真凡ちゃんの言うように、選抜甲子園の大会記録は3本なので、それに1試合で並んだということで話題になっている感じだ。


まあ、3打席も勝負してくれたから成立した記録なんだけど。ただ21世紀枠で出場した高校が5打席連続敬遠とかは出来ないだろうし……色々と、後味は悪い。


録画していた宝徳学園の試合を見てみると、真弘ちゃんは本気で投げているのか微妙な感じ。打線の方も大雑把な攻撃だったので、詳しいデータは取得できないかな。出来れば最新の情報を得たかったのだけど、難しそう。


まあ、正確なデータを取得できないのは向こうもだけど。智賀ちゃんが投げてくれたお陰で、私や優紀ちゃんの最新の情報は秘匿することが出来ている。お互い、秋の試合の情報しかない状態で試合へ挑むことになりそうだ。


「ベスト16に神奈川の3校が残っているのは、凄いことなのよね?」

「まあ、珍しいことじゃないかな?東洋大相模は、2回戦が山場だけど」

「東洋大相模の相手は、宮城の仙台育徳ね。去年の夏に、大阪桐正に勝ったのは憶えてるわ」

「うん。秋も東北大会を優勝しているし、エースの佐藤(さとう)さんはMAX136キロだし、強い高校であることは間違いないよ」


仙台育徳のエースはノーコン速球派で、MAXは136キロだ。……ノーコンでも136キロなら凄い凄いと例年なら言われるけど、今年は大槻さんと藤波さんのせいでイマイチ影が薄い。来年のドラフトは投手豊作の年だと言われるぐらいに、私達の1つ上の代の投手はレベルが高い。


注目カードと言えば、私達に勝って関東大会を優勝した多久大光陵の次の相手が大阪桐正なんだよね。大阪桐正視点だと2回戦が多久大光陵で、準々決勝は恐らく城西高校。準決勝の相手は和泉大川越の山だからボスラッシュ再びとか言われている。


神宮大会では多久大光陵が大阪桐正に3対1で勝っているけど、今回はお互いに手の内を全て見せるだろうから予想は難しい。




そんなことを考えていると、本日の第2試合、和泉大川越と熊本の秀岳院の試合が始まる。和泉大川越は大槻さんが先発を回避して、1年生の速水(はやみ)さんが先発だ。球速はストレートが122キロとそこそこ出てるし、同世代だから注目はしておかないといけないな。


「大槻さんに憧れて入った選手の中でも有望株、ってところ?」

「うん。和泉大川越もちゃんと、次世代のことは考えているね。凄い選手を見て集まった世代が、黄金世代になるのはよくあることだし、私達の代でも和泉大川越が厄介な相手になることは確かだよ」


真凡ちゃんが質問して来たので、凄い選手が来た高校は1つ下が黄金世代になりやすいことも言っておく。要するに、湘東学園も私の一個下が黄金世代と言われる可能性は高いのだ。


エースの2連投を回避した和泉大川越とは対照的に、2連続でエースを先発させた秀岳院の方は、最速128キロの本格派と言われそうな右腕のピッチャーだ。2年生の今の段階で128なら、3年生の夏には130に届きそうだね。


両投手が変化量の多いスローカーブを投げるからか、120キロ代のストレートが速く見える。試合は2回表に秀岳院が1点を先制するも、3回裏に和泉大川越が2点を取って逆転。そこから大槻さんがマウンドに登り、4回以降を被安打1で抑えた。


結果、3対1で和泉大川越の勝利。和泉大川越の順当勝ちと言うよりかは、序盤に攻めきれなかった秀岳院の拙攻が不味かったかな。1点を先制して、気持ちが軽くなってしまったのも敗因かもしれない。結局は、和泉大川越の打線が強かったということなんだけど。


第3試合では北海道の北戒高校と広島の広稜高校が激突し、広稜高校が勝利。和泉大川越視点、次の相手は広稜高校で、準決勝では大阪桐正や城西高校が候補かな。


芳田さんが連投しそうな多久大光陵が、勝ち上がる可能性は低そう。そもそも芳田さんのナックルが、神宮大会で城西高校打線に打たれているから準決勝進出は厳しいかな。


『神奈川の和泉大川越がベスト8一番乗りを果たしました。この試合で、大槻選手は自己最速の137キロをマーク。終始危なげないピッチングで、秀岳院打線を零点に抑え込みました』


反対側の山で2回戦が始まったからか、甲子園の盛り上がりは相当なものになっている。世間では大阪桐正の藤波さんと和泉大川越の大槻さんの投げ合いが期待されているけど、実現するかは微妙なところ。でも実現したら今世代のナンバーワン投手を決める対決にもなりそうだし、面白そうだね。

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