第11話「雨が映る」

人生の大弾幕

まぁかれこれ生きてきて

せいぜい死ぬくらいの存在って

了承してる


操り人形のように

くぐつのまま

傀儡を気取り

ただコケにされて

笑っている


安い酒と

安いたばこ

雨でぬれた買ったばかりの本も捨て


どうでもいいと生きていた


自分以外どうでもよくて

自分に何が起ころうと、それもどうでもよくて

喪失も消失も


どうだっていい


死ぬんだから

考えるだけ無駄で

積み上げる善意とか関係とか

本当にどうでもいい


なんで生きてるんだと

夜な夜な思い

そもそも死ねばいいと

そんな世捨て人で


もうとう悩みも愛も

いらない

無縁のものにした


そのはずだった


だけど雨が降るたびに

なんで気持ちが重なるのだろう

なんで似たものを見ると

心が泣けてくるのだろう


雨さえ嫌いなのに

あの灰色が

どこか悲しみを運ぶ

その悲しみもどうでもいいのに


涙がこぼれて

バカみたいだって

そう腹をなぐっても

止まらなくて


泣けてなけて

涙が流れて


ふと、見上げた空に

虹があったから

運がいいなんて

そんな望んでもなく、ぱっと頭に言葉が浮かぶから


もうなんなんだって

どうでもいいんだって

思うのに


あの若いころに見た

あの景色が

また雨の後の君の笑顔が浮かぶから


いつまでたっても

死にきれないんだ


ほんと、雨は嫌いだ

嫌いだよ・・・

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