第11話
残念ながら侯爵家は様々な理由から伯爵位をとばして子爵位に落とされた。
セリーナのこととその後の当主夫妻の暴挙。
国の保護下に置かれたフェリアを彼らは取り戻そうとした。
そしてそれが不可能だと知ると、フェリアを殺そうとした。
それはフェリアの婚約が発表された直後だった。
フェリアの考えどおり、召喚獣の世話役となったフェリアの身柄を国内外に売り出し、高値をつけた国に売る予定だった。
サンドビエッター家当主夫妻は、ほかの貴族同様フェリアの地位を理解していなかったのだ。
逆賊……それだけで十分没落する行為だ。
しかし、それを罪に問えば国王陛下たち会議室で召喚獣に遊ばれた者たちも同罪になってしまう。
我が身可愛さに罪は問われなかった。
代わりに当主譲渡となり、アルゼンが後を継いで新当主になった。
フェリアは子爵位になると同時に領地を転封されたサンドビエッター子爵家の領地の方角に顔を向ける。
サンドビエッター子爵家当主の結婚式が行われている頃だ。
元々侯爵時代に婚約していた伯爵家の庶子。
彼女は子爵位になっても婚約を白紙にしなかった。
「私はアルゼン・サンドビエッターと婚約しました。サンドビエッター家でも侯爵家でもありません」
その言葉にアルゼンは衝撃を受けた。
なぜなら
セリーナは名を奪われ、噂では婚家で『従順な夜の華』となっているらしい。
「私はあなたを幸せにすると誓えません」
「かまいませんわ。私があなたを幸せにすると誓いますから」
アルゼンはこれ以上彼女を拒むことはできなかった。
5年間共に新しい領地を経営し、生活が安定したころにアルゼンはケジメとしてプロポーズをした。
「王都で貴族たちに囲まれた祝福を受けられませんが、この先も私と共に生きてくださいませんか?」
「この私でよければ。私たちは領民たちに祝福をしていただきましょう。きっと皆さん喜んでくださいますわ」
彼女はアルゼンを選んだときに伯爵家とは縁を切った。
それでも結婚の報告をしたとき、代替わりをしていた彼女の父はフェリアではなく娘の結婚式に駆けつけた。
領民たちから祝福されて幸せに微笑む娘をみた彼女の父は、娘の選択が間違っていなかったことを認め、『花嫁の父』として心から祝福をした。
そして、遠くから兄妹の縁が切れた花嫁も幸せを願った。
その願いを届けるように、小さな結婚式会場に色とりどりな花が降り注いだ。
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