例え決められた運命だとしても

本章

　「運命は、変えられるものと言われたら、けんじくんだったらどうする？」

　僕はこの日隣のクラスのやつに放課後呼び出されていた。しかも第一声がこんな質問だったため僕はかなり警戒した。

「あっ、ごめん、ごめん！名前を言ってなかったね。そりゃぁ警戒するわな。あたしは、相川やよい。やよって呼んでいいわよところで本題なんだけど……」

　「ちょっと待って！話の展開が早すぎてついていけないし、最初の質問はなに？頭、大丈夫？！」

「頭、大丈夫？ってひどすぎでしょ！まずは、あたしの話をちゃんと聞きなさい！」

「……分かった」

このときはまだこいつのことを信用はしてなかった。しかもこいつの口から聞かされたのも、信用できないようなことだった。

「けんじくんてさ河原しずくと、兄妹だよね？そのしずくが1ヶ月後に死ぬよ」

　「は？嘘でしょ!?」　

　「嘘ではないよ。だから、その死ぬ運命を君と変えようと言うこと」

　「…………」

　「まだ、信じてないみたいだね。じゃあ、教えといてあげる。けんじくん、今日帰るときによったコンビニで自転車を盗まれるから。あと、家の階段から落ちるから気をつけてね」

　やよいは、そう言って去っていった。

　僕は、そんな予言信じるタチでは無かったため気にせずに小腹を満たすために帰りにコンビニに寄り、パンを買って自転車を停めていた場所に行くと、僕の自転車がなくなっていた。

　僕は、ふとやよいの言っていたことを思い出した。でも、たまたまだと思い、歩いて家まで帰った。

　家に帰り着き、２階にある自分の部屋に、荷物をおいて夕食を食べるためにリビングに向かおうとしたら、足を滑らして階段から落ちてしまった。

　僕は、２回もやよいの言っていた事が当たったため、妹のしずくが死ぬことも本当じゃないのかと思い始めた。

　次の日の、隣のクラスに行き、弥生を呼んだ。やよいは、人の間を小動物のように僕のところまで来た。その際に彼女に対しての視線が少し気になった。

　「もしかして昨日の話を信じてくれたの？」

　「あぁ。その話がしたいから、今日の昼休みに、屋上で待ってるから」

　と伝え、僕は、クラスに戻った。

　昼休みになり屋上でやよいを待っていたがなかなか来ないためクラスを見に行くと、ひとり隅の方で弁当を食べていた。僕は、クラスに入り、弥生の席に向かう。すると、

　「あんな物好きもいるんだな」

　などいろいろなやよいに対しての悪口が聞こえてきた。僕は、内心ひどいクラスだなと思いながら弁当を食べることに夢中になっているやよいの後ろからデコピンをかました。やられたやよいは少しむせていた。

　「もう！何すんのよ。喉につまらしかけたじゃないの」

　「昼休みの約束忘れてない？」

　「あっ！忘れてた。ごめん」

　「君が言い出したことを一緒にやるという事を伝えようと思ったんだけど、忘れてたってちょっと酷くないかな？」

　「反省してるってば……」

　やよいはそう言って少し、しゅんと落ち込んでいた。その様子を見て僕は、少し言い過ぎたかなと思い、一応謝った。

　「こっちも少し言い過ぎたわ。ごめん。あと、これから屋上に来れる？」

　「わかった」

　そうして、二人で屋上に向かった。

　屋上に向ってる途中、やよいのことで気になることを聞いてみた。

　「お前さぁ、クラスでいじめられてんのか？」

　「やよって呼んでいいよって言ってるでしょ！クラスのことは気にしなくていいから大丈夫だよ！」

　やよいは笑ってそう言っていたため僕はたいして気にすることもなく相づちをうっただけだった。そして、屋上に着き、

　「さっきもった通り僕は君のことを信じる。だからしずくを救う方法を教えてくれ！」

　そう僕は気持ちを伝えた。

　すると彼女はこんなことを言い出した。

　「運命というものは、色々な分岐点があって周りの干渉でも変えれるものだと思うの」

　「理屈はどうでもいいから早く教えて！」

　「まぁ要するに、しずくさんが事故に遭う日をキャンセルすればいいだけ」

　「わかった！」

　「でも、そのせいで、その人の人生を狂わすことだってあり得るんだけど、それでもいい？」

　そう、やよいは確認してきたが僕の意思はもうすでに固まっていた。

　「それでも大丈夫！家族が死ぬのは嫌だから」

　「わかった！後悔はしないね？」

　「おう！」

　僕は帰宅部のため、放課後すぐに家に帰り陸上部に入っている妹のしずくの帰りを待った。

　2時間後しずくが帰ってきた。

　ちなみに作戦はというと、事故に遭う日だけをなかったことにするために、今日のうちにしずくに知らせるということとなった。

　帰ってきたしずくに僕は質問してみた。

　「なぁしずく。お前が1ヶ月後に事故に遭って死ぬと言われたら信じるか？」

　「何言ってんの兄ちゃん！そんなの信じるわけないでしょ?!気持ち悪い……」

　と、しずくはとても嫌そうにそう言ってきた。

　「やっぱりそうだよな……。今のことは忘れてもいいから」

　しかし、しずくは、はなから　聞いてなかったようで歌を口ずさみながら部屋に戻って行った。

　僕は一つため息をして自分の部屋に戻る。

　妹の死の詳細がわかるのが約一週間前にならないとわからないとやよいはそう言っていた。その一週間前まであと、3週間はあるが下手な行動をして妹の死ぬ日を早めそうで怖くて、どうすればいいか分からなかった。

　次の日学校の屋上で、やよいと話し合っていた。

　「前にも言った通りしずくさんの死の詳細は一週間前にならないとわからないからね」

　「うん。でも、僕の行動も関係してくるよね？その妹の死が早まるか、遅くなるかは」

　「まぁ、少なからずね」

　「そうか……」

　「だから、必要以上に運命に干渉しすぎないようにね」

　「分かった。気をつける。あと一つ質問なんだけどしずくの死ぬ日をキャンセルしてもまた事故とかで死ぬということは起きないのかなぁと思ったんだけど、どうなのかな？」

「それなら大丈夫。一回キャンセルすることができたら事故や事件に巻き込まれて死ぬことはないからね」

　「なら、良かった」

　と、安心できることが分かったため少しだが、肩の荷が降りた気がした。

　昼休みが終わり、クラスに戻るために廊下をやよいと一緒に歩いてると、周りの生徒がやよいの方を見て、あからさまに避けていたりヒソヒソと陰口を叩いていたりしていた。

　僕はそれがどうしても気になり弥生にもう一度聞いてみた。

　「なぁ、やよってさ、前にも聞いたけどさ、こんなことをされて平気なわけ？」

　「まぁ……、平気だよ。無視しとけばいいことだし」

　「なら、いいけど」

　「ん？もしかして心配してくれてるの〜」

「まぁな、なかよしの人がこんな扱い受けてたらそりゃあ心配するでしょ」

　そんなことを言うと、やよいは少し面食らった顔をした。そして、急にソワソワしだして、

　「あ……ありがと……」

　「ん？どうしたと？もしかしてやよって、友達いないと？」

　「え？えっと……、と、友達だよね。友達ぐらいいるよ。だから気にしなくていいよ……」

　「僕を除いてだよ？」

　「うっ……。えっと〜、ていうか、そんなこと今はどうでもいいじゃん！」

　「まぁ、それはそうだな」

　「なら、もういいでしょ！」

　それ以上やよいは口を開こうとしなかったので、僕はこれ以上追求するのも無粋かなと思い聞くのをやめた。

　しかし、僕は弥生が受けている扱いを不憫にも思っていた。

　多分だけど､今、やよいは明るく振る舞っているが、そうでもしないと気持ちが崩れてしまうんじゃないかと心配になる.

　そして、この日も学校の屋上で昼食を食べながら話をしていた。と言っても、今日はほとんど雑談をしている。

　そこで僕は一つ質問をしてみた。

「やよいってさ、僕にも気を遣ってるっていうかなんか遠慮してるだろ」

　そんな僕の質問にやよいは、少しびっくりしてた感じだったが、

　「そんなわけないじゃん。なんでそう思うわけ？」

　「まぁ、なんとなくだけど、そう感じたからさ」

　「は？なに、けんじくんまで私の悪口を言うの？最っ低！」

　「えっ？やよい、どうしたの？」

　僕はいきなり怒りだしたやよいに結構びっくりした

　「どうした？じゃないよ！あのとき、友達だって言ってくれて嬉しかったのに、ホントはそんなこと思ってなかったんだね！」

　「一旦、落ち着いて！なにか嫌なことを言ってたなら謝るから！」　

　「もういいよ！」

　そう言ってやよいは屋上から去っていった。

　僕は呆気に取られてしまいその背中を見ることしかできなかった。

　放課後、やよいのクラスに向かい、話しかけるが無視を決め込んでいた。僕はどうしていいか分からないのと、なんて声をかければいいか考えていると、やよいは荷物をまとめて教室から出ていってしまう。

　「待ってよ！」

　僕は追いかけて前を歩くやよいの腕を掴んだ。すると、

　「離してよ！」

　やよいはすごい剣幕で掴んでいる僕の手を振りほどいて走っていってしまった。

　僕は久々に1人で学校から帰ることとなる。

　その道中、僕はやよいの事を考えていた。

　「あいつなりに、いろいろ我慢してたんだろうな……」　

　その夜､僕は弥生のことを知る友達に電話で話を聞いていた。　

　３０分後、話を聞き終えた僕はとても衝撃を受けていた。しかし、やよいのことを放っておけない気持ちがあり、僕は昔のことを思い出していた。そして、決意を固める。

　それから3日後の昼休み、僕はやよいのクラスまで行き、やよいを呼んだ。しかし、やよいはまたも無視を決め込んでいる。仕方なくやよいの机まで行くと、

　「話したいことがある」

　そう言って、僕は場所を変えるためにやよいを引っ張って行こうとして腕を掴んだ。

　「離してよ!！」

　教室中にやよいの怒号が響いた。そして、続けざまに、

　「あんたなんかと関わらなければよかったよ！もうあんたと関わる気はないから」

　しかし、僕はそこで気づいたらやよいよりも大きい声で

「そんなこと言うなよ！いいから来いよ」

　そんな状況に周りの人たちは何事かと見てる人や、冷ややかな目で見てくる人たちなどいたが僕はそんなの気にもならず、僕はそんなことを言っていた。やよいは、おずおずと、椅子から立ち上がり僕の後をついてきた。屋上につくまで僕とやよいは言葉を交わさなかった。

　屋上につき僕はやよいの方を向く。

　「この前はほんとにごめん……。やよの気持ちを考えずに。苦しさに気付かなくて……」

　「そんなことを言っても許すわけないじゃん」

　「今はそれでもいい。でも、辛いときは辛いと言っていいから。もう無理に笑わなくてもいいから。僕は、いつだってやよの味方だから」

　「あんたに私の何が分かるっていうの……。わかりもしないのに、分かったようなことを言わないでよ！」

　「分かるよ……。僕もやよと同じ境遇だからさ」

　「同じって何よ！」

　僕は一瞬息が詰まるような感覚になったが、口を開いた。

　「やよの事を知ってる僕の友達に聞いたんだけど、やよって親がいないんだろ？」

　「だったら何よ！」

　「誰にも言ってなかったけど実は僕も親がいないんだ。3年前に事故で亡くなってしまったんだ。そして、同じように中学の頃にいじめを受けてたんだ。だからやよの気持ちは分かるよ……」

　「……」

　「だから、喧嘩する前みたいに仲良くしてください」

　そう言って僕は手を差し出した。

　「なんで……、なんでこんな私に関わろうとしてくるの！勝手に私が怒ったのに」　

　「やよを放っておけないからだよ。あと、僕に協力してくれてるように、やよの力になりたいんだよ」

　僕は気持ちをすべて伝える。やよいはヘナヘナとその場に座り込み、泣き始めた。僕は一旦手を引っ込め、やよいの背中をさすってた。

　10分後、やよいは泣き止み一言

　「ごめんね」

そう言ってきた。

　僕は、やよいの手を握り立ち上がらせた。

　そして､僕も、

　「よろしく」

　と言い、二人でクスクスと笑う。

　その時には既に妹である雫の死まで1週間を切っていた。

　次の日、4限目の授業が終わると同時にやよいがクラスに飛び込んできた。

　「話があるから、急いで屋上に来て！今すぐ！」

　「わ、わかった！」

　僕は前を走るやよいの後を追った。

　そして、屋上に着く。すると､やよいが肩で息をしながら

　「私が前に言った一週間前にならないと詳しいことはわからないってことは覚えてるかな？」

　「あぁ！もちろん。もしかして、分かったのか？！」

　「うん！えっとね、雫さんは、今から3日後の土曜日に、この辺りで一番大きいショッピングセンターの近くの交差点で交通事故に遭って亡くなるんだよね。だからこれさえを無くせばいいんだけど、けんじくんから雫さんにもう一度言ってみて」

　「分かった。けど、あんまり僕の話を聞いてくれないから一応、その土曜日に交差点で待ち伏せのほうが確実のような気がするんだけど、どうかな？」

　「じゃあ、明日に雫さんの教えて、それで判断するから」

　「わかった」

　 すると、やよいは僕の顔を見つめて、そして少しソワソワしだした。しかも、顔も少し紅くなってるようにも見える。そして、やよいがなにか言おうとしたところで、昼休みの終了のチャイムが鳴った。

　やよいは肩を落としていた。僕は、少し不思議に思ったが、時間が無いので、明日、僕に何を言おうとしたのか聞こうと思う。

　学校が終わり家に帰ると、雫が先に帰っていた。

　「あっ、雫、もう帰ってたのか」

　「兄ちゃんおかえり〜」

　「雫、そういえばさ、今週の土曜日の予定ってずらすことはできないかな？」

　「それは無理かな。友達との約束だし」

　「それは、そうか……」

　「もしかして、前に言ってた私が死ぬってことをまだ気にしてるの？」

　「まぁな」

　僕はそこからすべてを話した。でも雫はやっぱりきにしてないようで、

　「私は、絶対に死なないから。安心して、兄ちゃんを一人にはしないから。今日は私が夜ご飯作ったから、冷めるし、早く食べよう」

　「分かった……。で、これは何？」

　「ん？鮭のムニエルだけど？」

　皿に盛り付けられてるのは、原型を留めてない焦げたものだった。

　次の日、やよいに昨日の家に帰ってからのことを報告した。

　「やっぱり、信じてくれなかった……」

　「じゃあ、待ち伏せ作戦で行こう！」

　「だな、あっ、そうだ！昨日のあの時に何を言おうとしてたの？」

　「えっと、実は私、」

　やよいはソワソワしながら言おうとしたところでまたも昼休み終了のチャイムがなった。

　やよいは

　「やっぱり、なんでもない」

　　そう言って、クルリと階段の方を向くとそのまま、パタパタと走っていってしまった。

　そして、ついに運命の日が来た。僕は、妹の雫が家を出る10分前に家を出発し、やよいとの待ち合わせ場所に向かい、合流する。

　そして事故が起こる場所に到着し張り込みを始めた。最初は喋りながらだったが、二人とも徐々に緊張しだして、口数が少なくなっていた．しかし、いつになっても妹の雫の顔が見えない……。

　それから一時間後の午後2時位のとき、やよいが声を上げた。

　「あっ！あれって雫さんじゃない？」

　もう一つ先の信号で待っている雫の姿を見つけた。

　僕が走っていこうとすると、袖口のあたりに違和感を感じ後ろを見るとやよいが震えながら僕の袖口を掴んでいた。

　「ど、どうしたの？」

　「え……、えっと、私が今から言うことに驚かないでね」

　「急にどうしたの？」

　「言いづらいんだけど、今、けんじくんのことも見えたの。それはね､雫さんのことを助けたらあなたが死ぬことになるの……。だからそれが、嫌なの」

　「わかった！けど、妹が死なないならそれでもいい！」

　僕はダッシュでやよいをおいて雫の元へと走った。

　雫はもうすでに青信号を渡ろうとしていた。僕はもう少しで妹に追いつくというところで、ふと、後ろの方を見ると赤信号なのに猛スピードで迫ってくる車を見つけた。

僕はヤバい！と思い、思い切り叫んだ。

　「逃げろ！」

　横断歩道を歩いているほとんどの人が状況を理解し逃げていたが、一人だけ動けてない人がいた。

　僕の妹だった。多分、昔のトラウマのせいで動けないんだろう。

　「クソ！間に合え！！」　

　僕は急いで雫のところまで走り、避難させようとしたが、一歩も動けなかなってるようだ。気がつくと、車がすぐそこまで来ていた。僕は反射的に雫を突き飛ばしていた。そして僕と車が接触する直前で誰かに突き飛ばされ前に倒れた。そして、ゴンという鈍い音とともに車は走り去っていた。慌てて振り向くとやよいが倒れていた。

　「やよ！」

　「へヘ……二人とも無事で良かった……」

　「なんで俺なんかを庇うんだよ！」

　「だって、けんじ君のこと好きなんだもん……」

　周りでは警察や救急車を呼ぶ声がしていたがその途中で意識が途切れた。

　気がつくと目の前に見慣れない白い天井が見えた。

　「ここはどこだ？」

　「あっ！やっと目が覚めた！ここは病院だよ？」

　僕の寝ているベットの横のパイプ椅子に座ってる雫がそう言った。

　「もう！心配したのよ！急に意識を失ったんだよ？」

　「ごめん」

　「3日も寝てたんだからね！兄ちゃんは」

そこであることを思い出した。

「そうだ！やよ、やよはどうなった？！」

　すると雫は、表情が曇りついには泣き出してしまった。

　「やよいさんは……いつ目が覚めるか分からないらしい……」

　僕は一気に目の前が暗くなった。僕は目立ったキズがないため、その日のうちに退院となった。それから一ヶ月後、雫は毎日見舞いに行っていたが、僕は行く気になれず、部屋に引きこもっている。

　そんなある日、僕のスマホに雫から電話がかかってきた。電話に出ると雫の声が尋常じゃないほど震えていた。

　「兄ちゃん……早く来て！やよいさんが！」

　「わかった」

　僕はテンパってしまい、話を最後まで聞かず電話を切り、病院に向かった。

　やよいの病室につくと、雫が待っていてやよいは目を閉じたままだった。僕はヨロヨロとやよいの方に近づきベットの近くでへたりこんでしまった。

　そして大声で

　「僕のことが好きならだから……。だからそんな簡単に死ぬなよ！」

　すると雫がなにか言いかけたが、それを制止して

　「なにも言うな！」

　そういうと、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

　「うるさいな〜！もう……。人が寝てるのに」

　「え？生きてたの？」

　と僕。

　雫は少し怒りながら

　「兄ちゃんが最後まで話を聞かなかったからよ！」

　「ごめんて！だってあんな感じに言われたらそりゃ勘違いすると思うけどな」

　そこでさっき自分の言った言葉を思い出し、顔が赤くなるのがわかった。やよいはそれを見逃さず

　「なんで顔赤いの？」

　「兄ちゃんさっき付き合ってやるよ！だから死ぬなよって言ってたからね。」

　やよいはそこで一気に赤面した。そして3人で笑い合って、雫はやよいにお礼を言って先に病室から出ていった。

　そして、僕も帰ろうとするとやよいが

　「ハグしてもいいかな？」

　と聞いてきたので、僕は一瞬びっくりしてぎこちなくハグをした。それから一ヶ月後やよいは退院した。あのときの事故の後遺症は奇跡的に無かったから安心した。僕はというとやよいと付き合うことになり毎日を楽しく過ごしている