第29話
◆ ◆ ◆ エドワード
次の日約束した公園にアダムさんが来た。
二人でベンチに座ると目の前には噴水で遊ぶ親子がいた。
オズワルドと同じくらいの歳の子供とお兄ちゃんであろう3歳くらいの男の子を連れた母親が笑い合いながら楽しそうに噴水の水に触り遊んでいた。
「リオさん、あれから考えたのですがやっぱり貴方はエドワードだと思います」
俺の顔を見ながら真剣な顔で言われた。
「わたしもそう思います」
頷くしかなかった。
昨日の夜屋敷に帰りシャーリーの顔を見た。変わらず夜になると甘えてくるシャーリー。
俺は我儘で自由奔放なシャーリーに対して腹を立てながらもやはり愛していると思った。
オズワルドとも今日は朝から会って、遊んでからここに来た。可愛い息子、俺の顔を見るとニコニコ笑う、そして抱っこをしてほしいとせがんで手を出してくる。
俺の大切な家族。
だけど、俺は以前の自分のことを知りたい。いや、知るのが怖い。
二つの気持ちがごちゃごちゃに混ざりどうしていいのかわからない。
ここに来ることも迷いながら来た。
「わたしは記憶が失くなる以前のことを知りたいのです」
そう言うとアダムさんが頷き自分が知っている『エドワード』のことを話してくれた。
やはり『エドワード・バイザー』という名前だった。
第一部隊の副隊長をしていて、戦争に参加している途中、男の子を助け川に落ちて行方不明になったと教えてもらった。
やはり村でペンダントと紋章を見つけた時に挟まっていたあの紙に書かれていた内容は俺を探すものだった。
そして俺は結局見つからず死亡届が出され受理されたこと。
俺の葬式も行われていたらしい。
父が騎士爵を受け我が家は貴族として生活していること。弟も騎士として今も活躍していること。
そして、最後にーー
恐れていた話を聞かされた。
「エドワードにはラフェさんと言う奥さんがいたんだ。エドワードが行方不明になったあと、妊娠がわかり、出産していて名前はアルバードくん、多分もうすぐ3歳になるはずだ」
「妻と子供?俺に?」
なにも思い出せない。ラフェ?
オズワルドではない息子?
もしかしたらそう言うこともあるかもしれない。ーーそう思ってはいた。
だが現実になってしまった。
俺はどうすればいい?
「エドワードには新しい家庭と生活があるんだろう?俺はここで君に会ったことは忘れる。君がこれからどうするかは君が決めるべきだ」
そう言ってアダムさんは「君が生きていてくれて嬉しかった」最後にそう言ってくれて別れた。
噴水で遊んでいた親子はもう帰ってしまっていた。
俺はさっきまで楽しそうに遊んでいた親子の姿が何故か頭から離れなかった。
『アルバード』と言う名の俺の息子。
『ラフェ』と言う名の元妻。
『エドワード』は死んで今は『リオ』として生きている。
それが全てなんだ。
俺は公園を後にした。
◇ ◆ ◇ アーバン
母上が俺に金を強請る。
「早く、早くお金をちょうだい」
俺は騎士として働き出して、最近はそれなりに収入も上がってはきた。それでも生活費として半分はこの家に入れてきたので、とてもじゃないが2200万ベルンなんて大金は持っていない。
「母上、俺が用意できるのは頑張っても500万ベルンだ。残りは伯爵家の伯父上に頼むしかないんじゃないか?」
「だ、駄目よ、ほら、あそこは、ねっ?冷たいの、だから、貸してはくれないわ」
母上が目を逸らしソワソワしながら言ったので変だと思った。
「もしかしてもう借りてしまっているのですか?」
「ううん、そんなことはしていないわ」
必死で否定する姿に確信した。
「もう貸してもらえないのですね?父上はこのことを知らないのでしょう?」
「あの人は仕事一筋なの。煩わしい思いはさせられないわ」
「違いますよね?本当のことを伝えられないのでしょう?」
「もう、アーバンったらそんなに怒らないでちょうだい」
「母上これからどうするのですか?屋敷を売ることを考えた方がいいでしょう。他には借金はないんでしょうね?本当のことを言ってください!」
「そんなに怖い顔をしたら話せなくなるわ」
そのあと母上から借金について聞き出した。
だけど俺はこの時、兄貴が生きていることは全く知らなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます