第22話  エドワード

 ◆ ◆ ◆ エドワード


 シャーリーは我が子を産むとしばらくは大人しく過ごした。


 子供の名は『オズワルド』元気な男の子が生まれた。

 シャーリーにそっくりな金髪の碧眼でとても可愛らしい。


「リオ、オズワルドは可愛いわね」

「なんて幸せなの」

「いつまでもお世話をしてあげたくなるわ」


 優しい母の顔をしたシャーリー、俺は幸せな家庭に喜びを感じた。


 生まれてしばらくは物珍しかったのか、おままごとをするようにオズワルドの面倒を見たシャーリーも二月も経つと


「ゆっくり眠れない」

「お乳を飲ませると体の体型が崩れるわ」

「貴族は乳母が育てるものだから」

「毎日泣くだけで面白くないわ子育てってつまらないのね」


 と言って乳母に雇った二人にオズワルドを任せて、自分はいつものように遊びまわるようになった。


 しかし子供を産んだばかりの体型ではドレスが今まで通り着れるわけもなく


「こんな体、いや!」

「リオもう二度とわたしは子供なんて産まないわ」

「すぐ泣くオズワルドを見ているとイライラするの、わたしの目の前から見えないところにやってちょうだい」


 とヒステリーが出始めた。


「シャーリー、子供が泣くのは当たり前だ。こんなに可愛いのにそんなことを言わないでやってくれ」


「リオはわたしの気持ちがわからないの?わたしが悪いと責めるの?酷い、酷いわ!お父様に言いつけてやるんだから!」

 そう言って泣き出す始末。


「わかった、もう泣かないで。シャーリーは頑張ったんだ。だけど子育ては思った以上に大変だったんだ。すまないわかってあげられなくて」


「リオっ……わたし、辛かったの。外には出られないし体はきついし、赤ちゃんってすぐ泣くのよ?泣いてばかりでよくわからないし、そのせいで眠れないの……リオだってあんなに毎日抱いてくれたのに子供が出来てからずっと抱いてもくれない。

 私の女の価値はもう失くなってしまったの?」


「そんなことない、俺だってシャーリーを抱きたいと何度も思った。だけど妊娠中は抱いてはいけないと思ったし産まれてからはしばらくは駄目だと医者が言ってたから我慢してたんだ?」


「じゃあ、今夜から抱いてくれる?私を女として見てくれる?」


「当たり前だ、シャーリーは今も美しく俺を誘惑する。愛してるよ」


 俺はシャーリーの涙に弱い。


 その日からシャーリーを抱く日々が戻った。昼間は領地の管理の仕事に追われ夜はシャーリーの体に溺れた。


 オズワルドは乳母に任せっきりになり俺自身も忙しくてなかなか会えないでいた。



「旦那様、オズワルド様のことをたまに見にきてあげてください」


 乳母達に言われて久しぶりにオズワルドに会いに行く。しかしたまに行くだけのせいか俺が抱っこすると泣いてしまう。


「人見知りが出ているみたいです、毎日会いにきてあげればすぐになれると思います」


「そうか、ではできるだけ会いにこよう」


 シャーリーは昼間は友人達とのお茶会に行ったり買い物に出かけたり、屋敷にいる時は昼まで寝ていたりと自由気ままに過ごす。オズワルドのことは居ないもののように無視し続けた。


「シャーリーせめてたまには顔を出してやってくれないか?」

 オズワルドも4ヶ月になり可愛い盛りだ。俺ですら可愛くて仕方がない。


「リオがいつも会いにいっているんでしょう?だったら親の役目は果たしてるんだからいいじゃない。

 それより乳母をしているミィナと最近仲が良すぎるんじゃない?」


「彼女とはオズワルドのことについて話すだけだ。仲を疑われるような関係ではない」


「ふーん、そう、不貞関係になったら許さないから!私は浮気する男は嫌いなの」


「俺はそんなことはしない。君だって昼の間、友人と言う名の男達と街に出て遊んでいると聞くけど本当なのか?」


「もうリオったらヤキモチを妬かないで!あの人たちはみんな学生の頃からの友人達よ。疑われるなんてシャーリー悲しいわ」


 俺はシャーリーが最近男達と遊び回っていると仕事をしている関係者からも噂として聞かされていた。


 シャーリーが高級ホテルに入った。

 レストランで食事をしていた。

 男とボックス席で仲良く劇を見ていた。


 などデートをしている話がちょくちょく耳に入ってくる。


 ホテルに男と?

 思わず責めるようなことを言ったら泣きながら


「私と彼らは友人なのに疑うなんて酷い」と泣き出した。


俺は婿養子。厳しく言えない。







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