第16話

「…やだ」

まただ。また始まった。彼を思いだすと胸のあたりがそわそわしだす。以前にもこういったことはあった。他の人よりも少しだけ距離が近かった男子や気遣ってくれた男性の笑顔に、胸がきゅっと縛りあげられる感覚。その度にそれを押し殺してきた。恋の始まりであることが、心のどこかでわかっていたからなのかもしれない。


「やめてよ…」

心が渇く。自分自身を叱る。これ以上自分に失望したくないし人を失望させたくもない。なのに、どこかで何かを期待している自分もいて、煩くて仕方がない。

もう全部無かったことにしてしまおう。終わらせてしまうんだ。自分に約束しながら、リトルブルーは目を閉じた。

 その時、ノック音が鳴り響いた。

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