可愛くないけど恋してもいいですか?

お餅。

序章

ラベンダー川には大きな橋がかかっている。川は太陽の光を浴びて、キラキラと煌めく。時間帯によって染まる色が変わって、飲む味も変化する。

そのほとりを、紫色のラベンダーがふわりと包みこむように咲いている。

 今、一人の女性がその橋を渡りきろうとしていた。

「うわ、あの人、ちょっとやばくなぁい?」

「いかにも、掟破りって感じよね」  

リトルブルーという女性は,そんな陰口の側をとぼとぼと通り過ぎていく。


 自分が可愛くないことは、誰よりもわかっていた。

華奢で可憐な体型が良いとされるこの国で、自分はそれに程遠い。背が高くてふくよかで、全体的にがっしりとしている。

白い肌に、大きな鼻と細い目と、肉の薄い唇。どれも、リーフブローチでは良いとされる要素じゃない。

周りでは誰かが誰かに花束を送っていたり、歌を歌っていたり。華やいでいる。恋が見つかるだなんていうが、この町に来て三ヶ月が経ったリトルブルーに、そのような経験は未だない。


 リトルブルーは足元に突きだされた誰かの足にも気づけず、転んで頭を打ちつけた。

周囲の笑い声がこだました。リトルブルーは顔をひどく赤らめるのだった。

 その時である、

「そこ、どけ!スヴィズム騎士団の道だぞ!」


顔を上げると、馬に乗った騎士の隊列が目の前に現れた。慌てて立ち上がろうとする。しかし足が痛んでうまく起き上がれない。先程変に捻ってしまったようだ。

「どけー!ひき殺されたいのか!」

それが自分に向けられた声だとはわかっていても、身体が動かない。蹄の音が響いてくる。もうだめだと悟った。

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