第78話。長期休暇
アイリスとのデートを心から楽しんでからはや数日、いつもの様に起きていつもの様に寝ている間に神託が下りてきていないかを確認するためスマホを操作すると、一件の通知が入ってきていた。
「来たか……」
どうやら連休も終わりらしい。
次はどこへ向かえばいいのかと神託アプリを開いて内容を読む。
「……マジ?」
あんまりな内容に驚き、もう一度最初から読み返すが、何度読み返しても、書いている内容に変わりは無い。
◇◆
やっほーお疲れ。
最近少し暑くなってきたけど君たち元気?
暑くなってきた原因は君らのイチャつきのせいな気もする今日この頃だけど、見てて恥ずかしいから自重してくれない?
まぁそれは置いといて……
君らの活躍で悪魔による被害って出てないじゃん?
そのおかげで悪魔の力の波動的なアレが弱まってきてるんだよね。
本来なら騎士級が暴れ回って、被害がでかくなったら男爵級が出て、子爵級が出てって流れなるんだけど、君らが悪(魔)即斬してくれてるから中々強いのが出てこられないみたいなんだよね。
マジ助かる。サンキュ。
まぁ何が言いたいかっていうと……
1ヶ月くらい悪魔でて来ないっす。
だからゆっくり骨休めしてください。
けど、力を溜めた分多分次出てくるのは伯爵級だから覚悟はしておいてね?
ここでネタバレですが、これを書いているのはエルリアパイセンではありません。
私はパイセンに生み出された天使的なアレです。
本来これを書くべき女神様は今管理神に呼び出されて正座してます。
どうやら上司に黙って転生させていた事がバレたみたいです。
ざまぁwwww
乱文失礼致しました。
敬具
◇◆
「ナニコレ意味わかんない」
以前からかなりブラックな環境で働いていたのは知っていたので、過重労働の末ついに壊れてしまったのかと思っていたら別人かよ。
女神様に生み出された天使的なアレってなんだよ、天使じゃないのかよ?
それに、生み出されたなら子供みたいなものじゃないの?
なんなのパイセンって……今どきの若者かよ。
ざまぁって……こいつ生みの親である女神様のこと嫌いなの?
とにかくツッコミどころしかない神託ではあるのだけど、とりあえず悪魔が1ヶ月くらい出てこないことだけは理解した。
「とにかくこれだけでもアイリスたちに教えておかないと……」
普段なら一言一句神託の内容は教えるのだけど、今回のはさすがに教えられない。
この世界の宗教は女神エルリア様を崇める一神教。
その女神エルリア様が上司に呼び出されて正座しているなんて誰にも言えない。
まぁここで一人悩んでいても仕方ない。
このまま部屋にいたらそろそろ……
「トミー! 朝ですわ!」
「起きてるよ」
バンと扉が強く開かれ、アイリスが突撃してきた。
「あら? 今日こそ起こせると思いましたのに」
「割と朝は強いんだ」
最近こうして「起こしたいアイリス」対「何となく先に起きていたい俺」の争いが激化している。
日に日にアイリスが突撃してくる時間も早くなってきておりそろそろ負けそうだ。
「また負けましたわ……」
「これって勝ち負けなの? もう俺の負けでいいから、せめてメアリさんが来てからにしない?」
メアリさんが出勤してくるのは大体朝の8時頃。
今の時間は6時前、さすがに早すぎる。
「わたくし、トミーの寝顔が見たいんですの」
「ならもっと静かに入ってくればいいのに」
なんで勢いよく突撃してくるのかね?
寝てても起きちゃうよ。
「そんなことより今日はどうしますの?」
「早起きしたし、やろうかな」
「わかりましたわ!」
メアリさんが来る前に起きるようになった俺たちにはとある日課が出来ていた。
朝トレである。如何わしいことはしていない。
「じゃあ着替えるから、先に庭で待ってて」
何故か残って俺の着替えを見学しようとしてくるアイリスをなんとか追い出して着替える。
男の着替えなんて見てもなにも面白くないだろうに一体何をしたいのか……
「来ましたわね、じゃあ始めましょう」
「よろしくお願いしますアイリス先生」
「先生は止めてくださいまし」
教わる身なのだから間違ってはいないと思う。
あと、スーツ姿で赤い縁の眼鏡をかけてクイッてやって欲しい。
「まぁいいですわ。それでは昨日の続きから……」
それからしばらく、アイリス先生から魔法の指導を受ける。
聖竜さんから学んだ魔法は基本中の基本だったらしく、アイリスから応用編を学ぶことで魔法に対する理解が深まってきている。
【奥義、真・聖拳突き】の習得の日は近い。と思う。
その後、朝トレ中に出勤してきたメアリさんが作ってくれた朝食をみんなで食べる。
食べ終わり、紅茶を飲みながら談笑しているとティファリーゼがこちらを向いて尋ねてきた。
「そういえば新しい神託はまだなの?」
「ああ、今朝来てたよ」
どのタイミングで切り出そうかと思っていたが、ティファリーゼから聞いてくれたなら話しやすい。
「来てたなら言ってよ。それで、次はどこなの?」
「それなんだけどね……1ヶ月は出ないらしいよ」
「は?」
質問してきたティファリーゼはもちろん、この場に居た全員が「何言ってるんだコイツ」みたいな目で俺を見てくる。
わかる。
神託見た時多分俺もそんな顔してたもん。
「俺らってさ、被害が出る前に悪魔を討伐してきたじゃん?」
「そうね……苦しい戦いだったわ」
苦しかったのは戦いじゃなくて車酔いだよね?
「まぁ……それでなんか悪魔の方もこの世界に来るのに結構力を使うらしくて、3ヶ月の間に力を溜めるみたいなことが書いてあったんだ」
「そうなのね……」
俺が応えると、ティファリーゼは少し考えるような素振りを見せた。
「伯爵級なら以前トミーくんが倒しているわよね? それせっかく力を溜めるのならもっと上が出てくるようにするか、騎士級を数体バラバラの位置に出せばいいのにね」
「それはそうだけど、なんで悪魔側の戦略を考えてるの?」
そういうことを言えばフラグになるんだから言ってはいけない。
「しかし1ヶ月は長いですわね」
「そうね……トミーくんとアイリスちゃんは1ヶ月どう過ごすの?」
どうと言われても……
「訓練かな? 今後もっと強いのも出てくるだろうし、鍛えておいて損はないと思う」
「わたくしも賛成ですわ」
今のままで伯爵級以上の悪魔と戦って勝てる保証はどこにもない。
少しでも強くなっておかないと。
「なるほど……」
「どうかしたのか?」
ふむ、と再びティファリーゼが何かを考え始めた。
こいつ、何を企んでやがる?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます