(一)-6

 私はそう考えると、胸が締め付けられる思いがした。

 私だって、結婚した。でも離婚した。合コンで出会ったその人は、東大卒のエリートで外資系の証券会社に勤めていた。証券会社といっても、株式売買や先物取引ではなく投資銀行業務がメインの会社だった。優秀な好青年でイケメンでもあった。デートのときの物腰も柔らかだった。父親も経済産業省に勤めているということだった。

 学力があってエリート街道を進んでおり、お給料のいい会社に勤めているというのは結婚の条件としては申し分なかった。地元の不動産会社に就職した大樹とは大きく違っていた。新しい未来が開ける絶好のチャンスであったと当時の私は考えた。


(続く)

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