(一)-4

 恐らく初恋だと思われる相手のことを、大樹は未だに忘れられないでいるのだろう。

「あの子、綺麗だったし、かわいかったもんね。ともかく、あんたの所にも行くかもね」

 警告はしておかなければいけない。大樹だって所帯持ちの大人だ。甘言に惑わされて自分の人生を棒に振ることはしたくないはずだ。しかし、大樹が水上咲良のことを引きずっている可能性は十分ある。

 その後、大樹と私はしばらく黙って、テーブルに残っている食べ物と酒を平らげた。アルコールも十分回り、お腹も満たされた。定期的に会っていることもあり、これ以上は特に話題もなく、私たちは居酒屋を出て、家路についた。


(続く)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る