隣の美少女

ツヨシ

第1話

隣の木山さんの家に、子供ができた。

産まれたのではない。

養子を取ったそうだ。

女の子で身体が八歳にしては小柄。

そしてその上にある顔はさらに小さかった。

しかしその顔が普通ではなかった。

信じられないほどの美少女。

おまけに八歳とは思えないほどに大人びていて、小さな体に小さな顔が乗り、その顔が中学生、いや高校生くらいに見えるのだ。

そして能面のように無表情で、徹底的に無口。

一目見るだけで、見るものを釘付けにする雰囲気とオーラを漂わせていた。

木山さん夫婦が極めて平凡で地味な容貌なので、三人でいると、その対比ゆえに子供だけが目立ってしまう。

名は真矢と言う。

養護施設からとのことだが、複数いる候補からなぜあんな普通でない気配の子供をもらってきたのかと、母が言うのをしんやは聞いた。

しんやもそう思った。

真矢は次の日には小学校にやって来た。

転校生と言う形で。

学校でもあっという間に有名人となった。

ただでさえ転校生は目立つと言うのに、あの見た目では、目立つなと言う方が無理だ。

おまけにしんやのクラスだ。

自己紹介の時にその声を聞いた。

昨日、木山夫婦と一緒にあいさつに来たときは一言もしゃべらなかったが。

その声は、ほぼ大人の声だった。

一限目の従業が終わり、休み時間になる。

真矢は後ろの席で何も言わずに座っている。

無表情と言う名の表情のままで。クラスのみんなが振り返って真矢を見た。

しかし話しかけるものは誰もいなかった。


次の日に気づいた。

東にある木山さんとは反対の西にある村田さんの犬だ。

とにかくえらく大人しい犬で、三年ほど前から飼われているのだが、しんやはその犬が吠えるのを一度も聞いたことがなかった。

しかしその犬が初めて吠えたのだ。

歯をむき出して本気で。

吠えた相手は真矢だった。

真矢は犬を見たが、すぐに視線を逸らすと自分の家に入って行った。

真矢が去った後も犬は吠えていた。

しんやはそのまま帰った。

しんやが自分の部屋に入っても、犬はまだ吠えていた。


その次の日、学校から帰るとなんだか騒がしい。

聞けば村田さんの犬が、いなくなったと言う。

鎖に残っていた首輪は引きちぎられていた。

しかしあの子犬が引きちぎったとはとても思えないと言う。

しんやもそう思った。

犬と遊んだことがあるが、子犬にはふさわしくないほどに丈夫な首輪だったのだから。

村田さん夫婦は必死で犬を探していたようだが、その日犬は見つからなかった。

そしてその後も。

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