第30話 フリーな女子の中だと一番かわいい
武士郎は
といっても電車の方向は武士郎と同じだったので、ついでではある。
「結局誰も来なかったな」
「そうっすね……。いたずらだったのかな?」
「いたずらってだけで家のポストまで手紙はいれないだろ……。もし変なやつだったら大変だから、あんまり一人で出歩くなよ」
「はいっす。なるべくマルちゃんと一緒にでかけます。……あ! そうすると山本先輩、マルちゃんとデートする時間がなくなっちゃいますね……。どうしよう」
「そんな気をつかわんでいいよ、別に付き合ってるわけでもないし」
「え、そうなんすか?」
そこに
「どうだろうね~? ね、
「えー? うーん、二人でデート? ……キス、とか? あれ、山本先輩、マルちゃんともうキスしたすか?」
武士郎が否定しようとした瞬間、
「秘密! えへへ、秘密だよーっ! 秘密!」
その言い方だとまるでしたみたいじゃないか。
お前は妹なんだからさー。
妹とキスはしないぞー。
「ね、山本先輩!」
にっこりと笑顔で行ってくる
「あ、ああ、笠原……」
普通妹からは先輩と呼ばれないし、妹のことを苗字で呼ぶこともないけどさ。
「そうそう、さっき副会長にさー、山本先輩と二人で体育準備室にいるのを見られちゃって、すっごい怪しまれちゃった」
それを聞いて
「副会長が……」
「うん、変なことしてないか準備室のにおい嗅いでたよ、美人だけどあの人も変わってるね」
「マルちゃん、実際体育準備室で変なことしてないよね?」
「してないよ、馬鹿! ちゃんと
「ま、
「はい、あざす」
★
その日の夜。
武士郎はいつものメンバー、大山田と八重樫とで、オンラインの麻雀ゲームをしていた。
「リーチ!」
「カン!」
「はあ?」
「カン!」
「待て待て待てリーチ入ってんだけど。お前、トップ目だろ」
「ロン! リーチのみ……じゃないドラ5裏4」
「じ、自分で……ドラ増やして……自分で千点を二万四千点にして自分で振り込んだ……!」
「お、おもしろすぎる……どんな手でカンしたんだよ?」
「ダブ南のみのイーシャンテン」
「ひゃーっはっはっはっはっは」
などと、いつもどおり楽しく麻雀を打っていたのだったが……。
「そういえばさー、タケ」
大山田が話しかけてきた。
「ん? なんだ?」
「お前の彼女のさ、友達いるよな、なんだっけ、
「あーいるなー。ってかそもそも笠原は俺の彼女と決まったわけでもないぞ」
「そうなんか? まだそんな感じなのか?」
「まあ仲はいいけどさ」
「ふーん。で、その
「うん? 聞いたことないな、話した感じ、いないっぽいけど? ……あ!」
もしや、大山田……。
武士郎はピンときた。
この身長180cm体重100キロ越えの柔道部員大山田、あんなちっこい後輩の女子に好意を抱いているのか?
うーん、いや別にいいんだけどなんだこのそこはかとなく感じる背徳感は?
「あいつ、けっこうモテるみたいだぞ。ラブレターとかもらってるとか言ってたし」
そこにレスリング部の八重樫も口を挟む。
「あー、あの子めっちゃかわいいしびっくりするほど肌白いし、人気あるよなー。俺の知ってるやつも何人か連絡先聞こうとして断られているなー。ちなみに俺も断られた」
「お前もかよ!」
武士郎は思わず声を上げてしまった。でもまあ八重樫はわりと女子に積極的だしなー。今は別の彼女がいるはずだ。
「まあまあわかったよ、ちょっと協力はするけど、期待はするなよ……。好みのタイプは少年時代のリヴァーフェニックスっていってたから」
「そっか、サンキュー。競争率高そうだもんなー。お前の彼女もめっちゃかわいいけどフリーじゃないしな。うちの学校のフリーな女子の中だと一番かわいいと思うわ。すごい数の男子が狙ってるみたいだしなー」
そうかもな、それで本人も少し困っているみたいだ。
あんな手紙までもらったりして。
十分気をつけさせよう。
★
そのあと、
[こんばんは。明日の土曜日なんですけど、山本先輩は明日、予定ありますか?]
[ん? ないけど]
明日は一日暇だ。
[マルちゃんと買い物いく予定だったんですけど、マルちゃん、お母さんと出かける予定ができたっていってたじゃないですか]
[そうだな、そう言ってたな]
[私、どうしても欲しい買い物なんですけど、一人で外歩くのはちょっと怖いしほかの友達も捕まらなかったので、つきあってくれませんか? マルちゃんにはOKもらってます]
そうだな、今のタイミングで一人で外出するのは怖いだろう。
[おう、いいぞ。買い物くらいは付き合ってやるぞ]
[じゃあ、明日駅前、11時で!]
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