【完結】Vtuberの俺たちは他人同士になったけど、兄妹設定はやめられない。元義妹が今もお兄ちゃんと呼んでくれる件。
羽黒 楓
人気兄妹Vtuber、リアルでは他人になる
第1話 人生って最高だな!
「はいこんにちはー! 今日は、久しぶりに兄妹配信をやりたいと思います!」
人気Vtuber
二面あるPCモニターには、自分の男のアバターと、もう一人、かわいらしいピンク髪の女の子も映っている。
「ちゃぷちゃぷー!
コメント欄も盛況だ。
〈お、二人で配信は久しぶりだね〉
〈最近別々に配信してたもんね〉
〈これって部屋も別々なの?〉
「そうでーす! 田舎の一軒家だから、お兄ちゃんと私は別の部屋で配信してるんだよー! まあその気になればあっちで一緒に配信してもいいけど」
妹の水面みずほこと、
〈みずほちゃん今日もかわいい〉
〈みずおー、ちゃんとみずほちゃんをみはっていろよ―〉
〈ちゃぷちゃぷ〉
〈しかし兄妹でVやって兄妹二人とも成功するってすごいよなー〉
〈お兄ちゃんの方はそこそこだろ、みずほちゃんの登録者数はやべえけど〉
水面水男の登録者数は一万八千人。
主にデジタルカードゲーム配信や麻雀配信で人を集めてきた。
水男こと武士郎はどうやらそういうのが得意らしく、ネット麻雀では一番上のクラスの雀星クラスで好成績をたたき出している。
たまに麻雀プロとのコラボもやっているほどだ。
水面みずほの登録者数は52万人。
個人勢としてはトップクラスの人気といっていい。
ホラーゲームの実況で登録者数をのばし、その甘やかな声とゲーム中にあげる悲鳴に根強いファンがついている。
二人が兄妹だということは配信当初から明かしており、またその事実は度重なる親フラと呼ばれる配信中に親の声が入り込む事故で間違いない事実として認識されていた。
なんなら、武士郎たちの母親はノリノリで配信中に堂々としゃべりつづけ、武士郎のかわりにネット麻雀を打って負けまくったり、舞亜瑠の配信にのりこんでホラーゲームで絶叫するなど、「出しゃばりママ」などというニックネームまでついている。
そんなこんなで兄妹Vtuberとして認知度を高めていった武士郎と舞亜瑠は、今日もふたりでホラーゲームの実況をするのであった。
二人で、といっても今日は妹のみずほがぎゃーぎゃー言いながらプレイするのを、既プレイの武士郎がニヤニヤしながら合いの手を入れて楽しむ、といった構成にしている。
画面の端から幽霊が飛び出てきてみずほが操作する女の子のキャラに襲い掛かってきた。
「キャーーーッ! イヤっ! 無理無理無理無理! お兄ちゃん、こんなの事前に教えてよーーー!」
「はっはっはっはっは、そこ絶対叫ぶと思ったよ」
「もー! ちょっと意地悪すぎだよねー!」
〈お兄ちゃんはSだな〉
〈悲鳴たすかる〉
〈やっぱり一日一回みずほちゃんの悲鳴を聞かなきゃ一日が終わらない〉
〈みずほちゃんの悲鳴を聞くとゆっくり眠れる〉
〈ほんと、二人仲がいい兄妹だよね。Vやってもう何年だっけ?〉
「えっと、そうだな、一年半くらいやってるのかな」
〈若いよねー!〉
〈若いよなー、まだ学生でしょ? これからはVもこういう若い子もどんどん伸びてくるよね〉
「いや、俺たち二十五歳と二十二歳っていう設定だから」
〈うそつけ、いっつも高校の話してるじゃないか〉
〈普通に高校二年生と一年生ってこないだ言っていたぞ〉
〈っていうか設定っていっちゃってるぞ草〉
〈三十歳のVtuberは高校生と言い張るし、高校生のVtuberは成人と言い張る。いんたーねっとはこわいところですね〉
問題は若すぎて、親の同意がないと収益化できないってことだった。
実際、武士郎と
ま、武士郎の父親はうまくいっている不動産業、母親は独立した税理士として仕事をしていて、経済的に困っているということはない。
そんなわけでこづかいくらいは言えばくれるし、二人とも配信の収益化についてはそんなにこだわっていなかったので、それで親子げんかになるということもなかった。
お金のためじゃなくて、純粋に楽しむためにやっているのだ。
〈こんなに楽しませてもらってるんだから、ほんとはスパチャあげたいんだけど〉
「気持ちだけで十分だよー。私はお兄ちゃんとこうしてゲームできていれば楽しいだけだから!」
確かに、これって楽しい毎日だよな、と武士郎は思っていた。
リアルではものすごく人見知りでおどおどしている妹が、ネット上では生き生きと笑ったり喋ったりするのを見るのは楽しかったし。
武士郎はとにかく毎日が楽しかった。
なにしろ、最近彼女までできたのだ。
今度の休みは配信お休みして、二人で水族館デートにいく予定だ。
今日も楽しく兄妹配信を終え、ゆっくり風呂に入って寝る。
人生って最高だな!
武士郎は布団の中でそう思いながら眠りについた。
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