第17話 正しさの底

正しさの底には悪が潜んでいる。

私はいつしかこの正しさの穴を認識したが、周りにはたくさんの人がいる。たくさんの人間がいつも穴から顔を出している。その穴に前のめりになりすぎて、落ちてしまう人がいる。落ちてしまった人は狂いだし、何かしらの争いを産む。

いつしか正しさの穴には柵を建てられており、やっぱりたくさんの人間がその穴を見にはくるが落ちるものは減ったように思う。ただ、その正しさの底にわざわざ降りるものがいる。どうやって上がってくるのか、私にはわからないがその人たちは正しさを悪用しているように感じている。

「なんで君はずっとここにいるの?」

私は柵を建てた本人に聞いた。

「正しさは知りたいものですが、危ないものですから」

「危ないのになぜ知りたいのでしょう」

「人間は愚かですから」

「貴方も愚かなんです?」

「ええ、私も。そしてここから離れられない貴方もです」

私はなんだか見透かされたようなその言葉に腹が立った。腹が立っているのを隠せない私は相手に言う。

「私はここには悪が、魔が潜んでいると思っているんです」

「そうでしょうね、私も思います。ここは弱さがあると思っています」

「ーーーー信仰ですか」

「そうです。私たちは正しさという見えないものにすがっているんです」

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