第18話 その後の騒ぎ、そして龍也と翠の会話
死闘の末、なんとか勝った真白は現在…監視の意味も込めて外出禁止をくらっている。
今日は三連休最後の日、アレから世間は大騒ぎだった。
真白はあの後、佳織と翠から小言を言われ、ダンジョン入り口で待機していた麗花に泣きながらお説教され、何故か正座してた龍也と一緒に座らされて他の人達からも色々言われ、挙句最後は家に帰ったらまず母からの強烈なビンタと父の泣き顔、妹が抱きついて泣きながらポカポカ殴られた。
真白は自分が思ってた以上に周りから心配されていたのを知った。他にも真白の事を知ってる人からも散々小言を言われたけれど、最後は皆んな、「よくやった」、「無事でよかった」と言った。
その後の事は龍也と翠が素早く動いた。あの生配信は世界中の話題となり、多くの記者やマスコミが殺到したらしい。そこで龍也が翠と共に緊急で記者会見を生配信をしながら開いた。
まず真白の事は、フリーの探索者でジョブは錬金術師で間違いないこと、何年も1人でダンジョンに潜って素材収集していた事を発言した。しかし名前などの詳しいことは全て発言を拒否した。
これは会見前にどこまで話すか打ち合わせをしていた。けれど、それでも納得いかない輩も出てくるのは確かなので、そういう時は———
「もしこれ以上の探りや情報公開を強要するならば、彼女が委託販売してくれている『スキルオーブ』や『自動魔石稼働具』、『付与された高品質商品』などの販売を完全制限または中止する」
———と、龍也が脅しを込めて宣言した。
これは流石に皆押し黙った。なんと『生産組合』の人気の高い商品は全て真白が作ったものだからだ。特に探索者にはスキルオーブ、企業や民間人などは自動魔石稼働具を販売中止されたら溜まったものでは無い。『生産組合』の販売している真白の商品は世界中の人々がほぼ8割近く使うほどである。そんな事されてはハイリスクだけでリターンがゼロに等しい、マスコミ達や探索者協会の抗議も渋々声をおさめた。
真白は流石に販売中止はやり過ぎだと思ったが、龍也曰く———
「あれぐらい言わないと、しつこいネズミは必ず出てくる。だからあの場で宣言しとけば、少しでも怪し奴がいたら連帯責任ていうことになる、だから周りも気にして色々と手出しできないさ」
———との事だ。
もうこの三連休のニュースは真白が倒したレイドボスと謎の錬金術師のネタで持ちきりだった。記者会見中にアレは偽映像じゃ無いのかという発言も出たが、龍也に貸した時空間リュックから獅子王の死体をその場で出して真実だと皆が理解した。
実は階層ボスの死体は何回か収集されたことがある。けど、レイドボスの死体は一度も無いのだ。それだけで偽映像では無いと理解するのに十分だった。そんな中———
「…やっぱり凝った刺繍とかした方が良かったかな? ……う〜ん……」
———真白は、世間が自分の事で騒いでるにも関わらず、自分の戦闘動画を見て自分の装備の事を考えていた。
流石の真白も土、日、月(祝)の3日間外出禁止はキツ過ぎる。最初は体を休めて寝て、漫画やラノベ、アニメ三昧だったけれど、それだけじゃ退屈で自分の戦闘動画を見て反省点を考えようとして観たが、真白もやっぱり生産職である。戦闘面ではなく生産面での反省になる。
「う〜ん〜………」
真白が一人で悩んでいると———
「お姉ちゃんどうしたの? またなんか危ないことするの?」
「ん…あぁ紗奈…違うよ、ちょっと色々反省点を見てただけ」
「本当? ホントに本当?」
「本当だから、そんな疑う顔しないで」
———妹の
「んーーっ! まぁ、そんな事より石井さんと翠さんにちゃんとお礼しないと。それから今後の私の探索活動についても……さて、久しぶりに部屋で造りたいものを考えようかな!」
真白の三連休はこうしてあっという間に終えることになった。
——————————
〈龍也と翠の会話〉
「ふぅー…こっちに来る質問や問い掛けは治ったけど、動画に関してはまだ治まりそうにないな」
「そうね、でも当然反応よ。むしろこちらに対する問い掛けがこんな短期間で治まる方が奇跡よ」
「確かに…会見でちょっと脅す感じで言ったつもりなんだが、まさか功を奏したか?」
「それもあると思うけど、一番の理由は真白の作る商品じゃない? 言っちゃなんだけど『生産組合』の商品でよく利益出す品物て、全部真白のでしょ」
「まぁな…けどこっちは少なくなって良かったぜ…けど協会の方はまだ諦めてないみたいだが…」
「こちらもそんなところよ。けど、『
「…あそこか……因みになんて?」
「真白のことをね…『彼女がフリーならそちらだけが恩恵を受けるのは間違ってる。すぐにでも情報の公開と我々などにもその恩恵を与えさせろ』だって…相変わらずよ」
「あそこは俺らも仲良くない。まぁ完全に生産職冷遇者が多い所だからな」
「そうよね…あとムカつく事に『彼女の戦闘は生産職のくせになかなかだ、興味が出たから勧誘させろ』だって……当然断ったけど」
「本当に相変わらずだな。……けど超大規模クランだからな。数に関してはあっちが上だ」
「私達は装備やアイテムで成り上がったて言われてるけど、実際そうだからそこは否定しないわ…でも奴らは数で成り上がったくせに認めて無いのよね、なんか腹立つ」
「その気持ちよくわかるぜ。…まっ! 奴らは白ちゃんの相手にもならないがな!」
「……ねぇ、今更だけど、あなたあの日、ダンジョンで電話した時、なんかあなただけ真白が勝つと思ってなかった?」
「ん? まぁ、そうだな。けど、最終的に大丈夫だと思ったのは、白ちゃんの自信のある感じの声だったから」
「そう…確かにあの切り札て言うグレネードランチャーは驚いたわ。真白って偶にエグい事するのね」
「確かにアレは驚いた! 俺も一回ぐらいやってみてー!」
「でもね……それよりも気になるのが真白の言う奥の手よ、佳織に訊いても知らないみたいだし、あなた知ってるのよね……それにあなたの言ってたあの子達って、何か関係あるのかしら?」
「あの時言ったろ、白ちゃんに口止めされてるんだ。知りたかったら白ちゃんに教えてもらってくれ」
「そう…わかったわ、もう詮索しない」
「あぁ、その方がいいぜ。藪をつついて出て来るのは蛇だけとは限らないからな……でも、もしかしたら近い内知る事になったりして!」
「…それは、また真白がトラブル起こすと言ってるの?」
「はっはっ! まぁしばらくは大丈夫だろう。本人もしばらく大人しく生産活動に集中すると言ってるし…俺らは俺らで仕事しようぜ」
「そうね。それじゃ、今日はこの辺で失礼するわ」
「おぅ! 何かあったら連絡してくれ!」
こうして、龍也と翠の話しは終わり、お互いにこれから真白の後ろ盾になる事に改めて認識した。
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