第4話  幼馴染

 月曜日、それは学生にとって憂鬱な日である。


「はぁ〜…今日から学校か〜」


 そう、学生にとって月曜日は一週間の始まり。今日から金曜日まで半日以上の時間を学校で過ごす。真白にとっては、その分の生産作業の時間がなくなってしまうのである。真白にとって辛い事だが、けれど現実は非常である。

 真白は東京の私立校の高校に通っている。そこは私立にしては学費が安く、進学率の高い学校である。そしてなんとその学校は、ダンジョン探索者に理解のある学校でもあった。選択科目にもダンジョン学という授業があり、殆どの生徒はその授業を選ぶ。私達1年生はまだダンジョンの規則や歴史など、ダンジョン探索者にとって必要な知識を学ぶ。2年生以上は実技とかもあるみたいだ。勿論私も選択してる。

 そんな憂鬱な気分で支度をして身なりを整えて通学するのであった。


「おはようー」

「おは〜」


 仲が良いクラスメイトたちがそれぞれ挨拶している中、私はいつものように自分の席で話しかけられないようにボッチオーラを出しながらブックカバーの掛けられたラノベを読んでいた。

 友達が少ない真白は、学校で仲が良いのは、小学校の時からの幼馴染だけである。


「おっはよー!」


 噂をすれば、教室に元気な声で幼馴染の山本佳織やまもとかおりが入って来た。


「おはよう佳織、今日も相変わらず元気だね」

「元気がモットーだからアタシは!」

「その元気を少し分けてよ、月曜日は憂鬱よ」

「そうそう、今日から金曜日まで、勉学に勤めるんだよ。はぁー、退屈」


 佳織とすごく仲の良い女子達が話しかけている。あの明るい性格は真白にはできない。


「そういえば佳織、また『暁月の彗星』が階層記録更新したんだっけ! 数年ぶりに新宿ダンジョンの前記録をの3階層下の69階層に! SNSでトレンド入りしてた! 配信動画もバズってるよ!」

「うん。今回はけっこう大規模な攻略だったから、土日でダンジョン内で泊まり込みの攻略だったよ」

「佳織て、その攻略メンバーの選抜組なんでしょ!」

「選抜組でもサポートしかさせてもらえないよ。アタシまだ高校生だし。大した事してないんだ」

「選抜組に入るだけですごい事だよ! だってあの『暁月の彗星』だよ」


 クラン『暁月の彗星』、最初は中規模のクランだったがここ1、2年でとんでもないほどの実力を伸ばし、今では日本で1、2位を争う大規模クランであり、世界的にも中の上位のクランである。

 佳織はそのクランのメンバーで、しかもその中でも全員がBランク以上の実力派の選抜組だという。真白は幼馴染ながらスゴイと思っている。

 ランクとは、探索者協会に自分の名前を登録した人に与えられる階級みたいなものだ。登録は戦闘部門と生産部門があり佳織は戦闘部門に登録している。ただダンジョンは登録しなければ潜ってはダメという事はなく、登録すると依頼を受ける時やダンジョンで稼いだお金の税金などの手続きを無償でやってくれるというだけである。ちなみ真白は登録しておらずフリーの探索者だ。


「さすが『暁月の彗星』のメンバーだよな、俺達普通の探索者とはレベルが違うぜ!」

「そうそう! 山本さんすげーよな。さすが当校1の探索者!」


 佳織は男子女子の注目の的であり、私から見ても美少女で誰とでも話しができる陽キャである。陰キャボッチの真白とは正反対の存在である。


「そういえば佳織、クラマスの翠さんて? 前のも良かったけど今回のは見ただけでわかるスゴイのだよね!? あれってなんかの?」

「……さぁー、アタシはそこまで知らない」

「そっかー、いいなー私もあんな装備したいなー」


 クラスメイトの呟きで、佳織はほんの一瞬真白をチラ見した。


「アタシもう席に座るね。そろそろ先生来て朝礼始まるから」


 そう言って佳織は話を切り上げ自分の席に向かう。偶然にも真白と隣りの席だ。


「おはよ、真白」

「おはよう佳織……大変だったみたいだね。お疲れ様」

「うん、ありがとう。……真白、クラマスが時間があったら連絡してほしいって、多分、今回の礼だと思う(小声)」

「わかった」


 そんなやり取りをしてたら先生が来て朝礼が始まった。

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