第14話 名探偵!?
フェリエッタは、黒薙が来るのを、ベッドに
「クロナギさん、今日は少し遅いなぁ。」
そんなことを考えながら、彼女は、手に持ったチョコレートを口元まで運ぶ。
コン、コン
扉が開き、黒薙が病室に入って来た。
「おはようございます。遅くなってしまい申し訳ございません。」
「あ! おはようございます。」
フェリエッタは、チョコレートをかじりながら、黒薙に
「…すみません、そちらはどうされたのですか。」
黒薙は、フェリエッタの食べているチョコレートを指さしながら問いかける。
「え? これですか。今朝、看護師の方に、私が甘い物が好きなことを伝えるとくれたんです! ちょこれーと?っていうらしいですよ。知っていました?」
「はい。知っています。」
「こちらの世界には、こんなに甘くておいしい食べ物があるんですね。ハチミツ湯を飲んで、喜んでいた私が馬鹿みたいです。クロナギさんもいりますか?」
「いえ、私は大丈夫です。」
黒薙は、自分の方に向けられたチョコレートを持っている手を払いのける。
「えー、おいしいのに。」
フェリエッタは、ぶつくさと言いながら、最後のチョコレートを口に運ぶ。
「本日は、どうしましょうか。
「んー、それをするにしても、コカトリスの情報が出ている地域は広いので、やっぱりもう少し巣の場所を絞り込めたらいいんですけど。でも、問題は
「いかがでしょうか。今分かっている情報だけでも整理してみるのはどうですか。」
黒薙は、そう言うと、近くの椅子に座り、ベッドの上にいるフェリエッタの方を向き直る。
「この町には、別の世界からやって来た“コカトリス”という
「あ、はい。それで大丈夫です。」
自分の
「この町で起きている事件は主に3つあります。一つ目が、4名の
「それは、たぶんコカトリスの冬眠の準備ですね。コカトリスは、石化した人たちを巣に持ち帰って、冬眠中に食べるために
「二つ目は、腹部が切り裂かれ、内臓が
「それは、まだ分からないです。石化できるコカトリスが、なんでわざわざ腹を切り裂いて
フェリエッタは、ベッドの上で頭をひねっていた。
「いったん、そちらは置いておきましょう。三つめは、地域住人が石のように硬直している事件です。その多くは、
「それは、たぶんコカトリスを
「はい。しかし、石化被害の数は多く、その
「コカトリスは、かなりの行動範囲をもっているので、仕方ないです。やっぱり、これだけじゃ分からないなぁ。」
そう言いながら、フェリエッタは、頭を抱える。
「うーん、やっぱり、周辺の山を一つ一つ調べるしかないんでしょうかね。」
フェリエッタは、しばらく考え込んでいたが、行き詰ってしまったようだ。それを見ていた黒薙は、本部から
「そういえば、これも何かの
黒薙は、そう言うと、ビニール袋に包まれた羽毛を取り出す。
「それって、もしかしてコカトリスの羽ですか?」
「はい、あなたが発見された現場に、一緒に落ちていたものです。」
「少し、ちょっと見せてもらってもいいですか?」
「はい。」
黒薙は、ビニール袋から羽毛を取り出し、フェリエッタに渡す。フェリエッタは、その羽毛を手に取り、
しばらくの間、しげしげとコカトリスの羽毛を観察していたフェリエッタだったが、次の瞬間、はっとした表情をする。
「クロナギさん、これ、
「? それはどのような意味ですか。」
「そうか! そういうことだったんだ!」
状況をうまく飲み込むことができていない黒薙を置いて、フェリエッタは一人で
「すみません。おっしゃられている意味が、良く分からないのですが。」
「え! あ、ごめんなさい。でも私、分かりました。たぶん巣の場所も。」
それを聞いて、黒薙は驚く。
「詳しく聞かせてくれませんか。」
「はい! 任せてください。」
フェリエッタは、胸を張って答えるのであった。
「まず、私が持っているこの羽は、私がいた場所に落ちていました。ということは、コカトリスがこの世界に来た時に生えていた羽が、落ちたんです。」
「はい。」
「コカトリスは、普通は秋に
「…それは、コカトリスがこちらの世界にやって来た時には、冬眠できる状態でなかったということですか?」
「はい! さすがクロナギさんは
黒薙は、フェリエッタが持っている羽が、夏羽であるということを理解する。だが、そのことと、コカトリスの巣の場所の関係性が、黒薙には分からなかった。
「しかし、それとコカトリスの居場所は、関係ないのではないですか。」
「完全に換羽するためには、1か月ほどかかります。この寒さから身を守るために、コカトリスは換羽ではないで別の手段をすることにしたんです。」
「別の手段、ですか。」
「はい。」
フェリエッタは、黒薙の方へと、ベッドから体を乗り出す。
「その別の手段とは、脂肪分の
「! それでは、腹部が切り裂かれていた死体は…」
「おそらく脂肪分を蓄えるために、動物の
「…それでは、あの3件の死体が発見された付近にコカトリスの巣があるのでしょうか?」
「いいえ。3人の方々が犠牲になってしまったのは、
そこまでフェリエッタは説明すると、黒薙から
「クロナギさん、樹の生えている場所などは分かりますか?」
「樹ですか。」
「はい。コカトリスは、大部分の脂肪を、ブナ科の実などに含まれる
「ブナ科の実ですか。」
「要するにどんぐりとかですね。
「里山で有名な場所でしたら、…!」
そう言って、地図の北東にある
森石は、黒薙の
「…これは、急ぎましょう。」
「あ! 私も行きます。ちょっと待ってください。」
すぐにでも、その場所に行こうとした黒薙をフェリエッタが呼び止める。
「あなたは、この場所で待っていてください。危険です。」
「私じゃないと、コカトリスに対処はできないです。私も、一緒に行きます。」
フェリエッタは、黒薙を見つめながら言った。
森石がフェリエッタを
だが、フェリエッタのまっすぐとした
「…分かりました。」
そう言うと、黒薙は、フェリエッタとともに、コカトリスがいると思われる里山へと向かうのであった。
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