6 本気ダッシュ

聖良とアキラの関係は、しばらくは合コンやゲームセンターや、カラオケにボーリングなど、アキラは仕方なく聖良の遊びに付き合っていたが、勉強が次第に難しくなってくると合コンや遊んでいる暇などなくなってきた。

「アキラセンパイ、また合コンなんっすけど…」

「ボクはもう合コンは行かないよ。元々あまり興味なかったし、これからは勉強に集中したいんだ」

アキラはなかなか断れない性格だが、ようやく聖良に本音が言えた。それはアキラにとって、頑張ったことだった。すると聖良は

「そうっすか?わっかりました。オレもセンパイを見習って、これからは勉強頑張るっす」

それはアキラからしてみれば、思いがけない返事だった。

アキラは成績が良いが、聖良はアキラからわからない箇所を教えてもらっていた。

そしてあっという間に大学六年間が過ぎ、アキラは国家資格で医師免許を取得した。が、聖良は試験に不合格となり、また来年度受験することになった。

アキラ三十歳、聖良二十四歳である。

そこから二人は別々の生活になった。

アキラは臨床研修医として二年間病院に勤務した。その間、あちこちの病棟を研修医として周っていたが、アキラは、早く精神科を学びたいという気持ちが強かった。

アキラは聖良を放っておけなくて、研修医中でも自分のアパートに聖良を招き入れ、一緒に勉強に励んだ。だが

その努力も虚しく、聖良は次の年も国家試験に落ちた。

聖良は、アキラの住んでいるアパートを足繁く訪ね、勉強を教えて欲しいと必死になるが、次第にアキラも研修医での仕事が忙しく、クタクタで、もう聖良の勉強どころではなかった。

だが、できる限り自分が教えてあげられるところは、一緒になって勉強した。アキラにとっても予習と復習を兼ねていた。

そしてアキラの臨床研修医が終わり、精神科での研修を始める頃、ようやく聖良は国家試験を合格した。

この時アキラ三十二歳、聖良二十六歳である。

聖良はもうアキラに頼ることなく、臨床研修医として頑張ることにした。

実際聖良が研修医として働いてみると、あまりの忙しさでアキラのアパートまで行く余裕などなかった。聖良はアキラの優しさを身に染みて感じていた。

そして二人はお互い忙しくなり、少しずつ疎遠になっていった。

アキラは、ようやく自分が目指している、精神科の研修医として働けることが嬉しかった。

デリケートで見えない部分の診察だからこそ、丁寧に対応しなければならないと思っていた。

現代病の一つである、うつ病を初め、双極性感情障害、解離性障害、適応障害、パニック障害など、病名をあげたらキリがない。その中でも発達障害が多くなっていることを知った。特に今は子供たちの発達障害が多い。これは問題だと思っていた。

それから、震災で精神科が必要となるとずっと思ってきたから、これからは本格的に傷ついた人々の役に立てると確信した。

アキラは猛勉強し、プロとしてやっていける知識の全てを取得しようと思った。

そして精神科の研修医も終わり、晴れて医師になった。

アキラ三十四歳遅咲きの医師だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る