第2話 病王の試練

 王となるべき少年自身は最初悲嘆に暮れていた。しかし、何が彼を変えたか判らないが、素直な信徒へと戻ってくれた。

 少年はやがて自らの身体が不自由になる未来を見越して膝の動きだけで馬を操れる様に猛特訓した。

 その甲斐もあって少年は齢十三の時、次のつなぎの為でありながら王へと昇りつめた。


 当初、誰もがこの王は役に立たないと軽視していた。


 しかし、病を抱えていようとも王は王の責務を果たさんとしていた。同情的にみる家臣もいれば、彼を支えようとする家臣もいた。当時のエルサレム王国はアイユーブ朝の脅威に晒され、混迷としていた。


 ボードゥアンが十六歳の時、運命が大きく動き始める。


 英雄王サラディンの侵攻である。


 エルサレム王国滅亡の危機であった。


 病王は僅か四百騎の騎士のみ連れて王都エルサレムを出立する。


 誰もが思った。もうこの王国は終わるのだと。


 しかし、仮面を着けた王の眼差しは異なる風景を視ていた。


 この戦いに勝利しなければ王国に未来などない。


 その為に生きて再び王都に戻るのだ。


 王はそう誓い出立した。

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