弱過ぎ魔法使いのヨーデルエルフェンフィート
イロハにぽてト
一歩目 「這い寄る混沌」です!
はじめましてこんにちは。
私、魔法使いを目指しています、ヨーデル・エルフェンフィートと申します。
現在、魔法学園の二年生です。
魔法使いになるには、通常この学園で様々な事を学び、卒業する事が始めの一歩。
そこから一人前になるべく、ギルドであったり教会に属したりと、お仕事を受けながら日々、自己研鑽を高め、立派な魔法使いになっていく訳です。
魔法は何故か女性しか使えません。それと正直なところ、素質であったり家系であったりと、格差社会を思わせる要素もありますが、基本的に頑張れば誰にでも(女性に限る)チャンスはあります。
多様化の時代。とか言われても困ります。
それでも一人前になるのにはすごく年月がかかります。
更には、魔法を極め、いくつもの多大な功績を残した者は『魔女』の位につく事ができます。
魔法使いの最高位。魔法使いの誰もが憧れ、目指すものであります。
現在、世界に三人しかいないといわれてます。
私もいつか……なんて夢みてしまう存在です。
それよりまずは目の前の事です。
魔法学園は二年制で、この春、私もいよいよ卒業を迎えます。
まずは一人前になるべく、その始まりを——
「二年生、ヨーデル・エルフェンフィート。留年です」
間も無く卒業を控えているという、ある日の授業後に、先生に呼び出せれ、そう告げられました。
はてさて、一体なんの事でしょうか。
たどたどしく理由をお話しする先生も困った様子です。なんでもこの長い学園歴史の中、留年という処置は初めての事らしいのです。
お話しが少しずつ進むつれて、私も少し嗚咽気味になりながらも先生に食らいつきます。当然の抗議なのですよ。
学園側も全然想定していない、というかあり得ない出来事なので、どう説明したらいいものかと、先生は更に顔をしかめていきます。
そして、ようやく先生から出た言葉——
「だって弱過ぎるんだもん」
ぐうの音も出ません。それは誰よりも自分がわかっておりますから!
なにが「だもん」ですか。
しかし、わかっているとはいえショックを隠し切れません。
それ程なのでしょうか。
私の弱さは——
こうして抗議する気力もなくした私は無事に留年が決定いたしました。
帰って家族になんと言えばよいのでしょう。特に姉には……
どうしたものか、と肩を落としトボトボと帰り道を歩きます。
慎ましくも、私のところも代々魔法使いです。
母はもう引退し、今は私と姉がエルフェンフィート家の魔法使いです。
私は「まだ」学生ですが。
五つ年が上の姉、エーデル・エルフェンフィートはとても優秀で、魔法界では千年に一人の天才といわれている程です。
魔法学園に首席で入学、卒業。在学中も学生でありながら、新魔法や新薬の開発、手練れの冒険者も苦戦する大魔物の討伐成功などなど……卒業してからも教会からの依頼、王族からの依頼、はたまた小さな村の援助まで、数多くの仕事をこなしていて、現在魔女に最も近い魔法使いとされています。
綺麗でとても優しく、いつも姉の背中を見ていた私にとっては、姉妹であるけれども、とても大きな存在。尊敬し憧れています。でも……
「お姉ちゃんに怒られるかなぁ……」
自分に厳しく、真面目で努力を惜しまず、決して妥協を許さない姿勢。そんな面も持つ姉にこんな事が知れたら……と思うとますます足が重くなります。
まぁ幸い? 忙しい姉なので卒業後はあまり家には帰ってきません。帰ってくる時は必ず連絡をくれるので、その時は逃げましょう。うん、そうしましょう。
しかし、そんな姉にこんな事がばれない訳がありません。きっと近い内に……
というかまず父と母には言わなければいけません。
いざという時の覚悟は決めておきましょう。
話せばわかってくれる……はずです!
そうこう思いつつ、ふと気がつくと森の中に来ちゃってました。
考え事をしていたとはいえ、まさかいつもの帰り道から大きく外れるとは……しかも陽も大分傾いてきて薄暗く、少し怖いです。
どこなのでしょう、ここは。
とりあえず歩けそうなところを行くしかないようですね。
魔法使いなんだから空とか飛べないのか? ですって?
箒があれば飛べますよ。定番の「アレ」ですね。
でも箒は学校に置いてきてますので不可能なのです。
他にこの状況を切り抜けられそうな魔法は……ありませんね。
という訳でひたすら歩きます。
あまり遅くなれば家族が助けを呼んでくれると思うので実は全然焦っていないのですよ。
なといってもここは魔法の世界なのですから!
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