階級《クラス》・奴隷《スレイヴ》
しをおう
序
遥か昔、記憶にすら残らない昔に、一人の貴族、いや、誰かが残した預言。
【混沌の世に一人の男現れり。永き偽りは打ち砕かれ、真実が明るみになる。だがそれは二つの者を産み出す。即ち喜ぶ者と嘆く者である】
【二つを産み出すが一つに戻すのも男である。だが、期待してはならぬ。男にとって全て己の為なのだから】
【嘆く者の慟哭も、喜ぶ者の歓喜も、その男には届かず。男は神ではないし、聖者でもない、ただの人間なのだから】
【一つになって新たな混沌が起ころうが、男には興味のない事。必要ならば殺すし、奪うのも男。逆に与えるのも男である】
【喜ぶ者よ、それは新たな時ではない。始まりの時に戻ったと知れ。よってその道は艱難辛苦の道である。しかし受け入れよ。少なくともそれは偽りの道ではないのだから】
【嘆く者よ、諦めよ。その男にとって、それは些末な事に過ぎぬのだから。よってそなた等の思いは決して届かず。今まで延命できた事に寧ろ感謝せよ】
果たして預言と呼べる代物ではないだろうが、永い、永い時を重ね、歪に伝わってこれに至ったそうだ。
男とは、この通りに受け取れば、大層な力を持っているようだが、人格者ではない様子。寧ろ人格破綻者とも取れる。その者が世界の全てを壊すと。
しかし幸いかどうか、この預言を信じている者はほぼいない。
何故ならば、この世界は戦争も飢餓もあるが、そこそこは平和であるのだから。偽りの世界と言われても信じる事ができない程度には安定しているのだから。
唯一の権力者『天界の純貴族』によって秩序が保たれている世界なのだから。
預言を残したのも純貴族の一人と言われている事から、慢心するなとの警告に意味合いで貴族達に広まったのだから。
その警告も最早意味をなさない程、あれから永い年月が経過しているのだから。
しかし、こんな戯言でどうしようもない預言にも救いかあるのだろうか?
とある純貴族の一つに、永い年月によって歪に伝わった預言の結びにはこうあるそうだ。
――男に届くのは想いを乗せた伴侶の言葉のみ。即ち魂が深く繋がった者也。よって男は悪魔でも魔物でもない。ただの人間也――
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