色彩を求めて

勿忘草

第0章 

第1話 プロローグ1

カリスーラ暦754年3月11日



 僕はミカエル=ファルベン。薬屋の息子だ。

 家族は薬屋兼ハンターの父と薬屋の母、そして3歳離れた妹のセリアの四人家族だ。


 そんな僕は薬草採集の最中で山に入っている。これも一人前の薬屋になるための修行の一つだ。

 

 「はあ、ようやくカンタリ草を10束採集できた。あとは...」


 残りの頼まれた薬草を探すためさらに山奥に入る。

 

 「お、あったあった。」

 

 見つけたサンガリア草を丁寧に引っこ抜きながらカバンに詰め込んでいく。これで今日のノルマは終わりだ。

 

 「はあ、もうこんな時間帯か。早く帰らないと父さんに怒られるな。」


 もう空は陽が傾いて暗くなっていた。

 夜の山は危険が多い。暗くなると自分がどこにいるか分からなくなることが多いし、何より魔物が活動し始めるからだ。

 魔物はもちろん昼にも出るが、夜の魔物の方が気性が荒く平気で人間を襲ってくる。

 まあこの辺の魔物はそんなに強くないし、ある程度の武器の心得を持っていればそんなに心配はいらない。

 

 「さてと、カバン持ったし帰るか。」 


 

 ******


 

 「ただいま、今日のノルマも全部こなせたよ。」

 「おかえり、ミカ。薬草はいつもの所に置いといてくれる?」


 返事をしてくれたのは母のアストリアだ。

 母は30を少し過ぎた頃だがとても綺麗で町でも評判だ。調合できる薬も多く薬師としての腕も確かだ。

 

 「おお、帰って来たかミカ。もう薬草の見分けはほとんど完璧だな。」

 

 続いて返事してくれたのは父のシモンだ。

 父も歳は30を超えているが、随分と若々しく整った顔をしている。父は母と同じく優秀な薬師でありながらハンターとしての腕も確かだ。

 日常で使うような薬は薬草だけで足りるが、珍しい薬や効果の高い薬を作る際には動物や魔物、さらには鉱物といったものまで必要になることが多い。

 そのような時は冒険者ギルドに依頼して取りに行ってもらうのが普通だが、父は自分の作った薬に責任を持ちたいらしく、自分で採取するためハンターになったそうだ。

 僕も父のそういう姿勢を尊敬しており、こうして自ら近場で採取の修行もしているというわけだ。


 「本も随分読み込んで勉強したし、それにこれだけ毎日色んな薬草を採集してたら嫌でものできるようになるよ。」 

 「それにしてもだ。その歳でこれだけ正確に薬草を見分けられるのは大したものだ。」

 「ありがとう、父さん。それじゃひとつお願い聞いてくれないかな?」

 「ん、なんだ?」

 「そろそろ僕も魔物狩りに連れてくれないかな?剣と弓と魔法の修行もちゃんとやってるし…」

 「うーん、魔物狩りはまだ早いような気もするが…。確かにもう基本の完璧なミカをこのままにしておくのは少しもったいない気もする。うーん…」

 「あら、あなたったらまだ禁止しているの?そろそろ解禁しないと勝手に魔物狩りに行っちゃうかもしれないわよ?」

 「うむ、確かにアストリアに言う通りだな。魔物狩りは危険が多い。1人で勝手に行かれて大怪我なんてされたら困るし、次の魔物狩りから連れて行くことにするか!」

 「本当に!?ありがとう父さん、母さん!!」

 「剣と弓の整備と体調の管理を忘れるなよ。」


  やっと魔物狩りが許可されて有頂天になっていると母さんが微笑しながら


 「嬉しいのはわかるけどそろそろご飯よ。荷物を片付けに行くついでに上にいるセリアを呼んで来なさい。」


 しまった完全に浮かれてた。母にそう言われて2階に上がって荷物を部屋に片付ける。ついでに服も着替えてから妹のセリアを呼びに部屋に向かいドアをノックする。


 「おーい、セリアそろそろ晩御飯だってさ。早く下に来いよ。」

 「あ、お帰りなさい兄さん。もう帰ってきていたのですね。すぐに行きますから少し待ってください。」


 少ししてからドアが開き、セリアが出てきた。

 セリアも母と父の血をしっかり引き継いでおり、ものすごく綺麗な顔立ちをしている。街に出れば男なら皆振り返るであろうこと間違いなしだ。

 そんなセリアも僕と同じように将来薬師になる為に勉強を頑張っている。


 「お待たせしました兄さん。あら、とても嬉しそうな顔をしていますが何かいいことがあったんですか?」


 妹は微笑みながら質問してくれた。


 「セリアよく分かったね、実は魔物狩りの許可がようやく出たんだ。やっと本格的な薬の調合が出来るようになるって考えたら嬉しくてね。」

 「まあそうなのですね!おめでとうございます、兄さん!それはとても喜ばしいことですね!」

 「ありがとう、もしセリアも早く基礎を終わらせれば一緒に行けるかもしれないぞ。」

 「そんな、私はまだ基礎で手一杯ですよ。兄さん同じであと3年はかかりそうです。」


 冗談を言ったつもりなのだが、全くセリアは真面目なやつだ。そう思いながら話を続け、夕食を食べに揃って下に向かった。

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