【web版】最強の悪役が往く~実力至上主義の一族に転生した俺は、世界最強の剣士へと至る~
反面教師@6シリーズ書籍化予定!
一章
第1話 最悪で最高な悪役転生
MMORPG《モノクロの
いわゆる王道ファンタジーものとしてリリースされたPC向けのゲームだったが、従来のMMORPGを抑えて栄光の一位に君臨した作品でもある。
モノクロの剣の何がそこまで面白かったのか。
それを語るには、熱狂的なファンであった俺にも難しい。
メインシナリオ?
声優陣?
システム?
グラフィック?
音楽?
どれも正しいようで違う、そんな気がした。
それでもモノクロの剣を百万人以上もの人間がプレイし、日本で一大ブームを巻き起こした。
俺もまた、モノクロの剣に魅入られ、プレイヤーランキング総合一位に輝いたほど。
並み居る強敵を蹴散らし、様々な戦法を生み出してはゲーム内を何度も沸かした。
公式サイトに載っていない隠し要素やアイテムの類も次々と発見し、誰もが俺のことを最強のプレイヤーだと呼んだ。
本当に楽しかった。
仕事、残業、人付き合い。
それらの柵から解放されるあの瞬間を、俺は永遠に味わっていたいとすら思った。
——もし、ゲームの中が現実だったら。
そう考えない日はなかった。
しかし、そんな俺に転機が訪れる。
それはある日の早朝。
いつものように目を開けた先に——見知らぬ世界が広がっていたのだ。
上下左右どこを見渡しても記憶にない光景ばかり。
当初の俺は心の底から驚いた。自分が知らない間にどこかへ来ているのかと本気で心配した。
けれど、その不安は直後に砕かれる。
厳密には、新たな驚愕によって塗り潰されてしまった。
なぜならそこは——俺が愛したゲームの世界だったのだから。
☆
サルバトーレ公爵家。
それが、俺の転生先だった。
生まれて間もない俺が、時折顔を見せに来る両親や、お世話係のメイドたちから聞いた情報を元にそう推測した。
サルバトーレ公爵家とは、モノクロの剣に登場する三大公爵家の一角。武力に秀でた天才たちの一族だ。
俺の記憶どおりなら、歴代のサルバトーレ家当主は帝国最強の剣士《天剣》と呼ばれているとかなんとか。
メインシナリオに関しては微妙にあやふやだから確証はない。だが、俺の名前がルカ・サルバトーレな時点でお察しだ。
メイドたちの話によると、俺は数多いる
理由? そんなもの、サルバトーレ公爵家の人間に転生したからに他ならない。
サルバトーレ公爵家の何が最悪かと言うと……この一族、モノクロの剣のメインシナリオにおいて、まごうことなき悪役なのだ。
一族全体の意識として才能至上主義を掲げ、能力が低い者はたとえ身内だろうと容赦なく殺される。殺されるっていうか、課される試練の中で勝手に命を落とす。そしてそれを悲しんだりもしない。
まーじで終わってるよサルバトーレ公爵家。
普通の人間がこの一族に転生したなら、舌を噛んでもう一回転生ガチャを楽しむところだ。
しかし、生憎と俺は違う。最初こそ絶望しかけたが、よくよく思い返して歓喜した。
なぜなら、サルバトーレ公爵家は公式チートな一族。ゲームをプレイしていたユーザーの半分以上は知っている。
——こいつらのスペックはおかしい、と。
その全体ステータスはあらゆるNPCを凌駕し、いわゆる勝ち確のシナリオでなきゃ倒せないほどレベルが高かった。
装備もほぼ全員が充実しており、下手なPVPランカーより強い。まさに化け物だ。
一度、公式がこいつらをプレイヤー全体にぶつける戦争系のイベントが起きたが、あまりの難易度の高さに参加したユーザーの九割近くがDEAD。残り一割の猛者だけがイベント報酬を手に入れ炎上したことがあった。
まあ、あれは本来の実力より強化されていたからな。しょうがないと言えばしょうがない。
ちなみに俺は残り一割のほう。しばらくはDEADしたプレイヤーたちに報酬を「売ってください」と追いかけ回されたりしたものだ。
で、話を戻すが。
俺はいま、そのチート一族の末っ子——たぶん、ゲームでは名前すら出てこなかったモブに転生した。
メインシナリオでは主人公やプレイヤーたちに負けて皆殺しされるエンドを迎える一族だが……ふふ。悪くない。
バッドエンドは困るが、それを覆すほどの強さがあれば問題ないってことだろ?
昔の人も言ってた。
——邪魔な奴らは全員ぶっ飛ばせ。
だから俺はこの時に決めた。
この愛する世界で、再び強さを追い求めることを。最強へ至り、邪魔する奴はたとえ原作主人公であっても皆殺しにしてやると。
ククク。最高だ。ルカ・サルバトーレという約束された
それらを駆使すれば、たとえ相手が誰だろうと俺は勝つことができる。決して諦めることなく、妥協することなく最強を目指せば、俺こそが天にも届く剣になる。
ゲームをプレイしていた頃から、陰湿なプレイヤーは多くいたからな。
異常者だらけのサルバトーレ公爵家の兄姉たち。
やがて俺の前に立ちはだかるであろう主人公やヒロインたち。
他、邪魔になりそうな悪党たち。
それらをゲームの頃と同じようにぶっ飛ばし、俺は俺のために生きる。
天上天下唯我独尊だ。
下半身からちょろちょろちょろ、と尿を垂れ流しながらにやりと笑った。
いまのところは「おぎゃああ!」と泣いておく。誰かおむつを替えてくれ……。
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2024年12月10日
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