第7話 父、学校生活を送る
昇降口から教室へと向かう。
教室までの廊下は、登校する生徒で賑わっていた。
スマホをいじっている生徒、ジュースを飲みながら話している生徒いろいろな生徒がいる。
(ほえー学校でスマホいじってるのかー時代だなー…)
俺は咲希の教室へと向かいながら辺りの生徒を見てジェネレーションギャップに浸っていた。
(咲希は2-A組と言うことはこの教室か)
俺は、咲希の教室へと入る。
教室に入るとまだホームルーム前なので男子はスマホゲームをみんなでやっていたり、楽しげな雰囲気だった。
その中でも、1人で本を読んでる男子もいた。
(今は、みんなスマホゲームか…。えーっと咲希の席は窓側の最後列か…。って何だよこの机。汚ねえ!)
咲希の机は落書きだらけで、机の中も荒れていた。
(咲希のやつ、机も整理整頓できないのか…)
そう思っていたが、ガヤガヤと周りから何やら嘲笑う声がする。
そして、机をよく凝視してみると落書きの内容は「消えろ」「ブス」などとただの悪口だった。
(そういうことだったのか…。だから咲希のやつ驚かないでって…。だから俺を学校に行かせたくなかったのか…。もっと早く言えよ…)
俺は、自分の娘がいじめられている事実、今まで娘がいじめに耐えていた事実、そのことを知り今まで自分が気づいてあげれなかった事を後悔し、情けない、不甲斐ない気持ちになった。
そんな気持ちでずっと、机の前で突っ立っていると周りから声がする。
「あれ、流石にやりすぎだったんじゃね笑」
「まあ、バレなきゃ大丈夫だろ笑」
その声を聞いた瞬間俺は周りの奴をぶん殴りたい、そんな気持ちに心が支配された。
でも、ここは大人の意地で耐えてそのまま椅子に座り授業の準備をした。
机の中がごちゃごちゃに荒らされていてまずそれを直し1限の古文の準備をする。
幸い、教科書は置き勉してなかったため被害を受けずに済んだ。
「今日は落書き黙って消さないんだな笑」
(あいつ、いつもは黙って消してたんだな…。ごめんな咲希…)
俺は、自分の娘への罪の意識と共に何とかしてやるという強い気持ちになった。
「はい皆席つけー」
黙って座っていると、梨沙の担任の先生が教室の扉を開けて入ってくる。
当たり前だが、先生が入ってくると同時にざわつきがおさまり皆席につく。陰口もおさまった。
「最近、みんな遅刻が多いから…」
担任は、ホームルームでありきたりな話をしていた。
そして、担任がこっちを見た時チャンスと思った。
俺は、わざと机の落書きを消さず担任にアピールするという作戦を企てていた。
しかし、作戦は思い通りにはいかなかった。
担任は、明らかに咲希の机を見たものの目を逸らしたのだった。
(アイツ、意図的に目を逸らしたぞ)
そして、そのままホームルームが終わり担任に報告し損ねてしまった。
(これは、思ったより闇が深いな…)
俺がなんとしてでも、この問題を解決するそう決心した。
「えーこれは中国の孔子が述べた言葉だと言われています」
早速授業が始まり、1限から古文だった。
しかし、俺は授業のことなど頭の片隅にもなくどうしたらこの問題を解決できるかそればかりを考えていた。
キーンコーンカーンコーン
そんなこんなで、授業は1ミリも聞いていなかったがお昼休みの時間となった。
具体的な解決策も見つけらないままだった。
俺は、カバンの中から弁当を出す。
(咲月の弁当かー。あいつの弁当うまいから束の間の癒しタイムだな)
そして、弁当箱を開ける。すると、中身はよりどり緑で美味しそうだた。
(やっぱ、咲月のやついくつになっても料理上手いな。しかも得意料理の肉じゃがが入っている!)
そして、俺は妻が作った弁当に舌鼓をしようとした瞬間とある人に話しかけられる。
「咲希、一緒に食べよ!」
そこには、ボブで清楚系ないかにも勉学少女というような女子が立っていた。
(こいつ誰だ?こいつがもしかして咲希が言ってた梨沙か…?)
「ああ、食べよう!」
俺はそう答える。
すると、その女子も俺の隣に座り弁当の風呂敷を開け食べる準備をする。
(こいつ、梨沙っていう友達かな?試してみるか)
「梨沙は、今日の古文理解できたか?」
「うーん私は普通ぐらいかな。ていうか、今日の咲希言葉遣いおかしくない?なんか男っぽいよ」
(この子が梨沙か。でもまずい、言葉遣い直さないとな!)
「そうかな?普通だよ」
「んーまあいいや。咲希朝は災難だったね」
(んー言葉遣いが気持ち悪い!でも我慢するか。梨沙は周りの奴らと違って優しいな)
「うん災難だった、でも大丈夫だよ。心配ありがとう」
「うん…。なら良いんだけど。でも今日の咲希なんか別人みたいだね」
(こいつ察しがいいな。でも、中身が中年のおっさんになってれば当たり前か)
「そう、私はいつも通りだけど」
「分かった、じゃあ食べよう」
梨沙のその合図で俺たちは弁当を食べ始めた。
俺は、肉じゃがに早速箸を伸ばし食べた。
(うまい!やっぱり咲月の料理は美味いな!ていうか、いつもは秘書の鈴木ちゃんと昼飯食べてるがJKと一緒に昼飯食べるのも悪くないな…。いや、むしろ良い!)
俺は、咲希の友達梨沙に今までのイライラなどが癒やされた。
しばらく無言で食べていると、尿意を感じトイレに行きたくなった。
「ごめん、梨沙私トイレ行ってくるね」
「うん」
そして、俺は椅子から立ち上がり廊下に出てトイレへと向かう。
(ここかトイレ!)
いつもの癖で男子トイレに入ろうとしてしまったが今日は咲希なんだと思い女子トイレに入る。
そして、個室に入ると上から水が降ってきた。
(何だ!?)
急いで上を見るとバケツが見えて、前から複数人の笑い声が聞こえた。
(またかよ!)
俺は急いで、トイレから出て逃げた複数人の後を追った。
「おい、待てよ!」
この体が若くて走りやすかったのも相まって水をかけた女子たちに追いつく。
追いつくと、そいつらは止まった。
「お前ら、ふざけんじゃねえ!」
「は?私たちはただ遊んでただけ、あんたがたまたまそこにいたんじゃん」
こいつらは、知らん顔で開き直り始めた。
俺は我慢できなくなり、気づいたら一人をぶん殴っていた。
『学校では目立たず大人しくしてて…。』
その瞬間咲希の言葉を思い出した。
(やっちまった…)
そして我に帰り辺りを見渡すと後ろに1人男子が立っていた。
そいつは、背が高く前髪で目が半分隠れていた。
(こいつ、朝の本読んでたやつか…)
そして、その男子が低い声で喋り始める。
「お前、強いじゃん。いつも周りの目ばっかり気にしてるやつだと思ったけど」
(何だこいつ?)
「でも、お前飯島咲希じゃないだろ」
(えっ!?)
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