第5話
そして瞬く間に時は経ち、24歳となった娘、葵が結婚。
その半年後、葵のお腹に子供が宿った。
そう、美紀にとっては初孫だ。
出産予定日は来年の春。偶然なのだろうか?
それは美紀の誕生日と同じ4月10日だった。
月日が流れ冬が過ぎ、あっという間に春がやってきた。
全国各地では桜が満開のシーズンを迎えていた。
この日、美紀は誕生日を迎え54歳になった。
朝早く電話が鳴り響いた。急いで電話を取ると
美紀の思っていた通り相手は葵の夫、浩平からだった。
「お義母さん無事産まれました!元気な男の子です!
」
美紀は電話を切ると夫、修二と待望の孫に会いに行く為、すぐさま身支度を済ませ急いで玄関を出ようとした。が、それは突然やってきた。胸に激痛が走ったのだ。
夏川美紀。享年54歳。正確には54年と5時間42分で美紀は「死」という名のゴールテープを切ってしまった。死因は心臓発作だった。
亡くなる直前、美紀は何を思ったのだろうか?
もし、あの時24歳という若さで自分で自分の
命を絶っていたら、こんなにも自分を必要としてくれる家族と出会う事もなかったと思っただろうか?
それとも30年ではなく、20年、いや10年だけにすれば良かったと思っただろうか?
どう思ったかは今となっては誰にも分からない。
そう、それは当の本人である美紀にしか分からない事なのだ・・・。
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