恋の予感
千秋と家飲み会をやってる目的は恋の相談もあるんだ。
「アキラ君とはね・・・」
千秋に引っ張られて行ったコンパで出会ったんだ。明日菜のキャラだからどうしても壁の花になってしまうのだけど、そんな明日菜に声をかけてくれたのがキッカケになるかな。千秋はアキラ君と呼んでるけど、木島アキラ君だよ。
「へぇ、ネンネの明日菜にしたら頑張ったじゃない」
連絡先を交換してデートまでは漕ぎつけた。
「やったの」
まだ一回デートしただけだ。手もつないでない。この辺の進展速度はそれこそピンキリみたいだ。極端なのはコンパの夜にドッキングもあるみたいだけど、
「明日菜じゃありえないよね」
明日菜じゃなくても多くないだろ。好意を持ったら次は二人で会って、よりお互いの事を知ろうとするのが王道のはずだ。
「好意は深まったってことね」
うん深まった。というか舞い上がった。だってだよ、あの木島君だよ。まずあの甘いルックス。アイドルとして余裕でデビューできそうなぐらい。背も高い、
「高いだけじゃなく、逆三角形の見事なものだものね」
そこまでどうして、
「プールに遊びに行った時に見た」
千秋だね。それはともかく中高と水泳部で、今でもジムで泳いで鍛えてるんだって。それでね、それでね、話題も豊富で楽しいんだ。デートの時なんて緊張しまくりで、なかなか話せなかったけど、最後は盛り上がってたものね。
「明日菜にそこまで出来るとは、女の扱いも慣れてるじゃない」
他に言い方があるだろうが! あれは紳士だと思う。まるでエスコートしてもらってるみたいだったもの。
「トドメはお金持ち」
だ か らモロ過ぎるって。木島産業の跡取り息子なんだよね。だからだと思うけど自分のクルマを持ってるもの。それもツーシーターのスポーツカーだ。名前を忘れたけど、とにかく格好良かった。
デートの時もそのスポーツカーで迎えに来てくれてドライブだものね。湾岸線で海遊館に行って、天保山マーケットプレースで観覧車に乗ったんだ。そこから神戸に戻って、あれも驚いたけど北野のフレンチでディナーだよ。
「そのままホテルじゃなかったんだね」
そうじゃなかったって言ったでしょうが。そんな感じだから木島君の人気は高い。高いなんてものじゃなく木島君狙いはゴッソリって感じでいるんだよ。そんな木島君の回りには親衛隊みたいなものまでいるから、これまで殆ど話したことなかったし、明日菜に縁のない人だと思ってたもの。
「月とホタル」
ホタルじゃなくてスッポンだろうが。スッポンでも相当なのにホタルってなんなのよ。いくら友だちでも限度があるぞ。
「明日菜が月だよ」
取って付けたようなフォローなんか意味ないぞ。とにかくカップルになるにはバランスが悪すぎるとの自覚はある。それでも、そんな木島君とデートに行けて舞い上がらない方が不思議だろうが、
「まあね。千秋の趣味じゃないけど」
ウソつけ。
「丸きり興味が無いとは言わないけど、そうだね、告られたら検討の余地ありぐらい」
千秋の男の趣味も最後のとこが良くわかんないな。だけど、ここからが相談になる。知り合って、誘われてデートまでは行けた。だけど、木島君が明日菜をどう想っているのかわかんないんだよ。
「そりゃ、口説いてデートに連れ出してるから好意はあるに決まってる」
そのはずだけど、木島君ってモテるじゃない。気まぐれってこともあるかもしれない。
「ないんじゃないかな。そうでなきゃ、わざわざ明日菜を口説かない」
あのね『わざわざ』は余計でしょうが。余計だけどなぜに明日菜の謎はあるのは本音。
「その辺は人の好みもあるからね。いきなりホテルに連れ込まなかったのは、明日菜だったからかもしれないな」
なんかバカにされてる気がずっとしてるけど、これからどうしたら良いの。
「それなら簡単だ。アキラ君が気に入ってるならまたデートに誘うだろうし、デートに誘うのなら次かその次ぐらいに告ってくるよ」
明日菜が告られるって言うの。それもあの木島君に!
「そりゃ、そうなるよ。口説いたのはアキラ君だし、デートに誘い出したのもアキラ君。そこで気に入れば告るのもアキラ君になる」
そんなものだと言えば、そんなものかもしれないけど、明日菜はどうしたら、
「待ち構えていて食べたいなら食べる。気に入らなければ食べないだけ」
他に言い様はないのか。それに食べられるのは明日菜じゃない。
「女が美味しく頂く時もあるんだよ。ネンネにはまだ難しいかな。その勢いなら、告られたらOKするんだろ」
そりゃ告られたら他に返事はないじゃない。そこから千秋は珍しく考え込んでた。
「アキラ君は人気があるしモテるけど、知ってる限り彼女がいたことはないはずなんだ」
そう言えば聞いたことがないな。告って撃沈した話はたんまりあるけど、
「明日菜の言う通り、なぜに明日菜ってとこはないこともない」
失礼だぞ、少しぐらいは言葉を飾りやがれ。
「気にし過ぎかもしれないけど・・・とりあえず告ってくるのを待ってればよいと思う。それで付き合ってみるのも経験になるからね。ネンネのままじゃ、男を見る目も養えないし」
千秋は養い過ぎじゃ。
「でもないよ。だから探してるじゃない」
それもそうだ。千秋はすぐ男を取り換えるけど、あれは飽きたんじゃなく千秋の理想に合わなかっただけのはず。千秋とて見ただけ、話しただけじゃ男の本性を見抜けないってことだもの。やっぱり見抜くにはヤルしかないとか、
「ヤレば見えるものはあるよ。男の中にはヤっただけで横柄になるのもいるからね」
へぇ、一度ヤルと女を所有物みたいに扱う男がいるのか。オレの女ってやつかな。
「だいぶ違うよ。オレの女も時と場合によりけりのところもあるけど、まるで家政婦どころか奴隷みたいに扱いだすのがいるんだよ」
そんなのは願い下げだけど、ヤル前はどう見てもジェントルマンだって言うから見抜くのは難しいそう。
「ヤルのも含めてだけど、やっぱり一緒に過ごす時間になっちゃうね」
男でも女でもデートの時は自分の良いところを見せようとする。まあ、デートどころか普段でもボロを出すようでは話にならないだろうけど、
「一緒にいる時間が長いほどボロが出やすくなる。だから離婚するのも多いと思うよ」
これはわかる気がする。ゲロ吐きそうなぐらい食事マナーが悪い男とか、謎ルール男なら、いくら取り繕ってもどこかで必ずボロが出る。
「DV男に豹変するのもいるからね」
いたのかよ。
「いたよ。速攻で逃げたけど」
千秋でも付き合わないと見抜けなかったとはね。
「ストーカー男に進化しやがって往生した」
どっひゃぁ、どうやって逃げたの。
「仕方がないからアメラグ部のやつと付き合った」
ああそれ知ってる。意外な組み合わせと思ったけど、ストーカー対策だったんだ。
「その部分もあったけど、前から気にはなってたんだ」
千秋の好みはようわからん。ちょっと気になるのが、どうにも千秋の木島君の評価が低そうなんだよね。もしかしてなにか地雷の匂いを嗅ぎつけてるとか、
「わかるわけないじゃない。あったら全力で明日菜を断念させてるよ」
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