041:ミミックVSスケルトンキング〝黒き闇の世界への誘い〟
スケルトンキングが放ったドス黒い光線が私の目の前に――!!
躱すことはできない。
闇属性魔法で防御力を上げたとしても無理だ。
そもそも間に合わない。
それなら――
私はミミックとして限界まで宝箱の
そして念じる。闇属性魔法を――
必殺――
直後、口内に黒色の魔法陣が出現。
その魔法陣にスケルトンキングが放ったドス黒い光線が吸収されていく。
吸収を終えると、何もなかったかのように
これぞ魔法を吸収する闇属性魔法の力よ。
どうだ。
さすがに無言と無表情を貫くスケルトンキングでも、目が飛び出るほど驚いたんじゃないか!?
骨に目なんてないんですけどー!!
「カパカパカパカパカパカッ!!!!」
ん、んごほごほっ。
咳払いをして高笑いしたのを誤魔化す。
やっぱり驚いてはくれないか。
でも正直、魔法を発動した私自身が一番驚いてるよ。
スケルトンキングのあの魔法の威力でも吸収できるんだってね。
私が発動した闇属性魔法の
躱すことができず、防御力を上げても無理だとわかってるこの状況だからこそ、この方法しかなかったんだけどね。
格上相手にも成功してよかったよ。
え?
吸収した魔法はどこに行ったかって?
発動した私自身も知りませーん!!
吸収したのなら、それを放出できるかもしれないって考えるのが普通よね。
試行錯誤やってみたけど、全く放出されないのよね。
それに吸収して私自身や私の魔法が強くなったとかもしないのよね。
そもそも吸収したって感じもしないのよ。
だから別空間? とかに行ったんじゃないかな?
それか完全に消失したとか?
ほら、魔物が死んだら粒子になって消失するみたいなさ。
まだまだわからないことばかりだけど、スケルトンキングの魔法を吸収することができた。
それで命拾いしたんだ。良しとしようではないか。
それよりもここからどうするかだ。
やっぱり
うん。うん。
次の作戦を考えていると、スケルトンキングの杖の正面に魔法陣が出現。
「………………」
――ヴォヲォンッ!!!
ドス黒い光線が私に向かって放たれた。
後ろにネズミさんがいないことを願ってー、躱す!!!
魔法陣の出現さえ見えれば、このくらいのスピードの魔法なら躱せるのだよー!!
もう一度
そうじゃなきゃ、今からやろうとしている
私はドス黒い光線を躱した勢いを殺すことなく、むしろ利用してスケルトンキングに向かっていく。
そして大きく
必殺――
闇属性魔法で強化された私の
貫通効果がある
「………………」
闇属性魔法を付与した貫通攻撃でもなお、無言と無表情を貫き通すスケルトンキングだったが、私を振り払おうと必死の抵抗を見せてきた。
それってつまり、ダメージを受けてる証拠だ。
ポーカーフェイスを崩せなかったが、リアクションはいただいたぞー!!
私は反撃を受ける前にスケルトンキングから距離を取った。
距離を取った直後に感じる疲労感。ついにきたか……。
この疲労感は魔法を酷使した際に感じるもの。
詰まるところ魔力が枯渇したことを知らせてくれているのだ。
スカルドラゴンの時と同じで、これ以上魔法を使ってしまえば、体の自由を奪われ意識を失うこと間違いない。
でもその欠点もすでに克服済みだ。
そのための半年間の特訓だったんだからな。
私は舌を器用に使い、体に埋め込んでいた魔石を口へと運んだ。
そして力いっぱい嚙る。
――ガリガリボリッ。
非常食でもあって、お洒落な装飾品でもあって、少しだけ延命もでき、経験値も詰まっている。
さらに枯渇した魔力を少しだけ回復することもできるのだよ。
これによって襲ってきた疲労感もあら不思議!
栄養ドリンクをチャージしたみたいに回復するのだー!!
残業続きの夜はよく栄養ドリンクにお世話になったもんだな。
おっと、話が逸れたが、魔石のおかげで魔力枯渇の欠点を補えることに成功したのだよ。
この世界で生き抜くためには必須の石。それが魔石なのだ。
「カパカパカパカパカパカパ!!!」
だから言ったではないか。
あの時とは違うと、強くなったのだと。
って、ドヤってる場合じゃない。
魔石で回復する魔力はほんの少しだけだ。
だから1個食べただけじゃすぐに魔力が枯渇する。
だからたくさん魔石を食べてもっと回復しなきゃ戦えない。
まだまだ長期戦には不向きな魔法だけど、こうして少しでも欠点を克服して戦えるようになったんだ。
まだスケルトンキングと戦えている。
それも互角と言っても過言ではない程度に。
約半年間の特訓は無駄じゃなかったんだ。
半年間の特訓を思い出している最中、スケルトンキングの杖に魔法陣が出現する。
それも今までとは違って複数。
数える余裕なんてなかったけど、多分10くらいはあったぞ。
「………………」
――ヲォンッ!!!
――ヲォンッ!!!
――ヲォンッ!!!
10近くのドス黒い光線が一斉に放たれた。
まあ、当たり前だけど、ここでティータイムってわけにはいかないよね。
そもそも紅茶も軽食もないし、今が昼なのかもわからないし。
あぁ、いつかイケメン冒険者と優雅にティータイムを過ごす日が来るのだろうか。
いや、来る。絶対に。
そのためにもまずは目の前の壁を――スケルトンキングにはここから退場してもらわなきゃだな。
――ガリガリボリッ。
攻撃を躱しながらでも、こうやって魔石を食べることができるのだよ。
舌を噛まないのかって?
それは問題な。ノープロブレムだ。
ミミックは絶対に舌を噛まない構造になっているのだー!!!
舌を噛んで自滅だなんて話にならないからね。
だから余裕があれば戦いの合間合間に栄養補給可能なのさー!
それにここは私とネズミさんたちの縄張りだ。
私が集めた魔石や宝石、ネズミさんたちが集めた金銀財宝、これがある限り私がやられることは絶対にない!
もうここは貴様らスケルトンの縄張りじゃないんだよ。
戦う場所を間違えたなスケルトンキングよ。
ここはもう私のホームだ。
必殺――
からの〜、必殺――
――ヴォヲォーンッ!!!
スケルトンキングの魔法を吸収、すかさず反撃の魔法を発動。
レベルや技だけじゃない。技量だって成長したのだよー!!
この世界を生き抜くため、ネズミさんたちに恩を返すため、そして、雲ひとつない青い空のようなイケメン冒険者と運命の出会いを果たすため、私は強くなったのだ。
さあ、スケルトンキングよ。
私の欲望の
私の殺気に気づいたのか、スケルトンキングは杖の正面のみならず体の周りに魔法陣を出現させた。
さきほどの比ではないほどの数だ。
その危険察知能力は正確だ。褒めてやろう。
でももう遅い。
魔法をいくら放ったとしても私を止めることはできない。
絶対に私は止まらないぞー!!!
「………………」
――ヲォンッ!!!
――ヲォンッ!!!
――ヲォンッ!!!
数十、数百発の魔法を私は受け続けた。
それでも宣言通り、私は止まらない。
決してスケルトンキングの攻撃が痛くないわけではない。
針どころか剣を刺されているかのような感覚だ。
体のあちこちが破損し、木片と化していくのもわかるぞ。
ここまで攻撃を受け続けたのは生まれて初めてだ。
そしてここまで攻撃を耐え続けたのも生まれて初めてだ。
それでも私は止まらない。止められないんだ。
勝利を目前にして止められるはずがないのだ。
これで私のトラウマとおさらばだ。
そしてリベンジマッチも終わりだ!!!
必殺――
私の渾身の一撃がスケルトンキングの腹部へ命中。
そして持てる力を全て込めてスケルトンキングの腹部を噛み砕いた。
「………………」
上半身と下半身が離れたってのに、最後までポーカーフェイスを貫き通すか。
その信念には恐れ入ったよ。まさに恐怖の王って感じだ。
普通の攻撃だったら効いてないんだろうな。
きっと離れた体も元通りに戻って平然と魔法を連発してくるんだろうね。
でも私の攻撃には貫通効果がある。
その砕けた骨は元には戻らないし、それ相応のダメージがあったはずだ。
私の攻撃に貫通効果があって本当に良かったよ。
特殊効果というものはありがたいものだな。
スケルトンキングの体が粒子となり消滅していく。
それを見て勝利を実感するとともに己の成長も証明することができた。
ここは喜んでいい場面だよね。
復活して襲ってきたりしないよね。
私の死亡フラグは回避できたんだよね。
誰も答えてはくれない。
なら私の好きにさせてくれ。
今の私の気持ちは――
「キィイイイイイイ!!! (うぉおおおおおお!!!)」
やったぞー!!!
私ひとりでスケルトンキングを倒したんだー!!
スカルドラゴンよりも遥かに強いスケルトンキングをひとりで!!
それも苦戦することなく倒すことができたんだ!!
この勝利に喜ばずにいられないわけがない!!
私は勝ったんだ! 勝ったんだ!
勝ったぞー! やったぞー!
「キィイイイイイイ!!! (やったぞぉおおおお!!!)」
こんなに嬉しいのは生まれて初めてかもしれない。
前世も含めて初めてかもしれない。
やっと心の底から喜べたよ。
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