024:ミミックVSクラーケン〝噛み付き攻撃〟
くっそ。
逃げる隙を見つけるどころか、触手攻撃を
「ルォオオオオオオンッ!!!」
クラーケンの8本の触手が、復活したばかりの私を追い詰める。
躱してばかりではなく、反撃を試みる時もあったけど……。
どれも手応えはあったものの当の本人に通じてる様子は全くなかった。
それもそうだ。
箱生最大火力を叩き出した
躱しながらの反撃じゃ威力が乗らない。ダメージが通るわけない。
でもおかしいぞ。
だったらなんであの時……私を絞め殺そうとしたあの時、私の
全力を振り絞ったとはいえ、おかしくないか?
考える余裕も確かめる手段もない。
自分から噛みつきにいけば確かめられるんだろうけどさ、そんなの捕まりにいくようなもんじゃん。
反撃で
噛みつくまではいいんだけど、噛みついた後に隙ができる。
その隙をクラーケンが見逃すわけがない。
「ルォオオオオオオンッ!!!」
あぶなっ!!
クラーケンの触手攻撃によって地面が抉れた。
これが直撃してたら木っ端微塵どころじゃなかったぞ。危ない危ない。
こんな攻撃を掻い潜り続けながら出口に向かうだなんて無理じゃない?
そもそもクラーケンの巨体が出口を塞いでるし……。
倒すにしても攻撃が通じないんじゃ勝ち目がない。
逃げるのもできない。戦っても勝てない。
これ完全に積んだんじゃね?
いや、まだだ。
まだ積んでなんかいない。
まだ
私が勝つための鍵だ。 (宝箱だけにっ)
一か八かやってみるか……。
でもいざ自分からいこうってなると体が
当然か。何度も殺されかけたんだ。怖くて当たり前だよね。
それにダメージを受けた
また同じようにダメージを与えられる確証だってない。
違う違う違う。弱気になっちゃダメだろ。
それを今から確かめるんだろ。
がんばれ私。負けるな私。
この恐怖を乗り越えない限り、クラーケンに勝つだなんて夢のまた夢だぞ。
「ルォオオオオオオンッ!!!」
くっそ。こっちは己を鼓舞してる最中だってのに。
容赦ない攻撃をバンバンと繰り出しやがって。
……でもおかげで体の震えを誤魔化せてる。
この勢いを利用して……噛み付いてやる!!!
――バシンッ!!!!
触手攻撃が地面に直撃。地面は抉れ無残な姿に。
触手が引いていく今がチャンスだ!
必殺――
――ガブッ!!!!
「ルォオオオオオオンッ!!!」
効いてる。効いてるぞ。
でもなんで効いてるかわからない。
手応えだって変わらない。
手応え相応のダメージって感じはする。
それじゃ
いや、違う。逆だ。
クラーケンがダメージを受けてることが異常なんだって考えた方がいい。
「ルォオオオオオオンッ!!!」
攻撃が来るっ!!!
私は噛み付くのを辞め、触手から離れて攻撃を躱した。
私に攻撃を当てられなかった触手は勢いを止めることなく、私が噛み付いていた触手にぶつかる。
自らの攻撃を自らに当てる。自傷行為だ。
地面を抉るほどの攻撃のはずだけど、これもダメージを一切受けてる気配はない。
「ルォオオオオオーンッ!!!」
全然余裕で攻撃してくるんだもんな。
本当にダメージ受けてないって証拠だよ。
くっそ。もっと考える時間が欲しい。
限界まで距離を取ってみよう。
そうすれば塞いでる出口から離れてくれるかもしれない。願ったり叶ったりだ。
とりあえずは離れるぞっ!!!
「ルォオオオオオーンッ!!!!」
離れても離れても触手は追いかけてくる。
それなのにクラーケンの位置は変わらない。出口を塞いだままだ。
攻撃範囲広すぎじゃないですか?
距離を取るよりも懐に入って躱し続けてた方が楽だった説が浮上してきたぞ。
でも、こっちの方がフィールドを利用できる。
岩だって、壁だって、うまく利用すれば攻撃を躱す手段になる。
まあ、岩も壁も崩れなければの話だけどね。
それよりもだ。
う〜ん、ゲームとかアニメとかの知識になるけど……確定ダメージを与える系の攻撃か、貫通攻撃、とかが有力かな?
それかクラーケン自体に秘密があって、物理技が無効みたいな体質とか?
いや、牙技も物理技か。じゃあ牙技以外が無効とかか?
どれもしっくりこないなあ。
その中でもマシなのは貫通くらいかな。
自分の力を理解してないからなんとも言えないけど。
あぁ、こういう時って普通さ、サポートしてくれる仲間がいるよね。
解説キャラみたいな感じの。
それこそいつも言ってるけど、レベルアップを告げてるあの声!
あの声が助けてくれたっていいのに。
アドバイスとかヒントとかさ。
それがなくてもさ、せめてレベルアップだけじゃなくてステータスとか能力的なのも教えてよ。
ステータス画面がブォーンって出てきたりしてさ。
そういうのがないから困ってるんだよ?
意識を脳内のその先に向けて話しかけてみるも、やはり独り言で終わってしまう。
うん。わかってた。どうせ返事がないってね。
もういいよ。なんとなくわかってきたんだ。
私の
じゃあそれが仮に正解だとして、それでクラーケンを倒せるの?
8本の触手全部を噛み千切るくらいのことをしないと無理だよね?
まだ1本も噛み千切れてないし、1本すら噛み千切る自信ないよ。
弱点とかあればいいんだけど……クラーケンの弱点ってどこよ?
ああーもう!
考えれば考えるほど、勝ち目がなくなってきてる気がするんですけど!?
「ルォオオオオオーッ!!!」
ぎゃぁっ!!
直撃は免れたけど、砕けた岩の破片が。
このままだとジリ貧もジリ貧だ。
やらなきゃやられる。やってもやられる。
だったら選ぶのは後者だろ。
もううじうじ考えてられない。
どうせ逃げられないんだ。
噛んで噛んで噛みまくってやる。
「ルォオオオオオーッ!!!」
「キィイイイイイ!! (くらえぇえええ!!)」
必殺――
――ガブッ!!!
「ルォオオオオオーンッ」
くっ、やっぱり噛み切れないな。
牙も刺さってるようで食い込んでるだけだし。
でもダメージは受けてるみたいだ。
それだけは本当によかった。
「ルォオオオオオオーンッ!!!」
「ギィイイイー (ぐあぁああー)」
別の触手が来るってわかってたのに躱せなかった。
やっぱり噛み付いた後は隙が生まれるし、動くまでに時間がかかる。
一瞬、一瞬が命取りだってのに。
だったら……勢いよく噛みついて、噛みついた後もその勢いを止めなければ、生まれた隙を補えるかもしれない。
やってみるしかない。
必殺――
これで勢いをつけてからのー!!!
必殺――
――ガブッ!!!
「ルォオオオオオーンッ」
そして勢いがなくなる前に……離脱!!
壁まで飛んだら反動を利用して……もう一回!!
必殺――
からのー!!!
必殺――
――ガブッ!!!
「ルォオオオオオーンッ」
よしっ!!!
いける。いけるぞ。
これを繰り返していけば行ける。
一回一回がかなりのカロリーを使うけど……我慢だ。
我慢と根性でここは乗り切る。
キングラットの時もそうだ。格上相手にはこの戦術しかない。
我慢と根性。
私の得意分野だ!
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