006:一難去ってまた一難 (クソデカため息)
――うぁ?
心地良い……心地良い温かさだ。
さっきまで熱くて痛くて死にそうだったのに……なんで?
《個体名〝ミミックちゃん〟はレベル2に上がった》
あぁ……そうか。
死んだからか。
だからこんなに心地良い気持ちになってるんだ。
《個体名〝ミミックちゃん〟はレベル3に上がった》
何?
さっきからうるさいんだけど。
人がせっかく気持ちよく眠ろうとしてる時にさ。
《個体名〝ミミックちゃん〟はレベル4に上がった》
だからなんなの!?
うるさいってー!!!
もーう!!
「キィイイイイイイイ (静かにしてよー!!!!)」
って、え?
えええ!?
な、なにここは天国じゃないの?
なんで目の前にドラゴンカップルがまだいるわけ?
ドラゴンカップルも一緒に天国に!?
いや、それはないか。ここは宝石の壁の洞窟だし……。
じゃあ、何? どうして?
何が起きたっていうの?
私は死んだんじゃないの?
「グギャァーーーースッ!!!!!」
「グルァァアーーーースッ!!!!!」
わぁあああー!!!
また火を吹いてきたー!
息ぴったりドラゴンカップルの炎の息吹だー!!
あぶなっ!!
なんとか
えええ!?
体が動いた!?
あんなに動けなかったのに……。
それに体が全く焦げてない。壊れてもいない。
なんでなんで? どうして?
時間が巻き戻った?
いや、その線はないよな。
ここに来たときには既にボロボロだったから、体が元気なのはおかしい。
じゃあなんで?
体はエステサロンに行った後みたいにピカピカなの?
なんで整体を受けた後みたいに思い通りに動くの?
なんで熟睡した後みたいに頭がスッキリしてるの?
なんでなんでなんで? と疑問ばかりが脳内を駆け巡る。
思い当たる節は……ないわけでもない。
さっき聞こえた変な声……なんかミミックちゃんのレベルがどうとかって……。
つまりこれって……レベルが上がったから体力が回復したってこと……なんじゃないかな?
それ以外考えられないし――
「グギャァーーーーズッ!!!!!」
「グルァァアーーーーズッ!!!!!」
――考えてる余裕もないっ!!!!
とにかく今は逃げること最優先!
欲を言えば一矢報いてやりたいけど……。
そんな力は私にはない。
だからただひたすらに――まっすぐに!
出口に向かって飛び跳ねて行くだけっ!!!!
「グギャァーーーースッ!!!!!」
危ないっ!!!
もう炎なんて当たりたくないんだからねっ!!
「グルァァアーーーースッ!!!!!」
って!
躱した先にメスドラゴンの炎がっ!!
こっちに躱すって読んでたってわけ!?
なんとか空中で方向転換し……だ、ダメ。間に合わない。
それならこのままの勢いで飛び続けるだけっ!!!
――熱っ!
直撃は
せっかく綺麗な体になったばかりなのに!!
「キィイイイイイ!! (エステサロン代返してよね!!)」
「ガァアアアアアアアアッ!!!!」
「ルァアアアアアアアアッ!!!!」
ひぃいいいいいい!!!!
2体とも激おこでいらっしゃるー!
早く逃げないとっ!!!
私は必死に飛び跳ねた。
ドラゴンカップルも必死に追いかけてくる。
どうしても私を殺したいようだ。
迫り来る〝死〟から全力で逃げる。
それ以外の選択肢はない。
ぬぉおおおおおおおおおー!!!!
死んでたまるかー!!!!
死んでたまるかー!!!!
ぬぉおおおおおおおおおー!!!!
見えたっ! 出口っ!
洞窟の出口であろう
たったそれだけ、それだけなのに疲労感も恐怖心も全てなくなった。
希望が全て
さよならドラゴンカップルさん!!!
私はもうあなたたちとは二度と会わないから安心して!!
新婚生活を楽しんでー!! (新婚かどうかは知らんけど)
ドラゴンカップルに別れを告げた私は、上り坂を飛び跳ねながら
想像していた以上に上り坂はきついものがあった。
この感覚は前世でも味わったことがある。
そう、この感覚は上り坂を自転車を
ペダルを踏むたびに力が入るのと一緒で、飛び跳ねるたびにものすごく踏ん張りをかける。
それでも私はスピードを落とすことなく、上り坂を抜けた。
そして念願の外に……外に……
って!
外じゃないんですけどー!!!
えええ!?
何、私この洞窟の地下にいたわけ?
地下って言ってもどのくらいの地下よ!?
どれだけ上れば地上に出れるの?
あわよくばこの層が地上へ出れる層だと願いたいが……今はそんなことよりもドラゴンカップルだ!
せっかくここまで上手くいったんだ。逃げなきゃっ!
エスケープ! エスケープっ!
とりあえず真っ直ぐ逃げるぞー!!
私は
ふぅー。
なんとか逃げ切れたっぽいなぁ。
良かった。
箱生最初の難関を突破したぞー!!
やったー! やったー! やったー!
生きてるって素晴らしいー!
よく頑張ったぞ私っ!
あのドラゴンに根性だけで切り抜けたんだ。
偉いぞ、私ー!!
偉い、偉い!
さてとっ。
一休み一休み、っと。
私は頑張った体を労うために壁に寄り掛かった。
うん。落ち着く。
やっぱり背中に壁がないとだね。
ミミックって生き物はこれが一番落ち着くんだ。
でもなんかおかしいな。
壁がものすごいデコボコしてる。
それになんだか動いてるようにも感じるんだけど。
壁にしては柔らかい。いや、硬い部分もあるな。
なんだこれ……?
私は私が寄りかかっているものが本当に壁なのかを確認するため、恐る恐る視線を背後に向けた。
「ウウウウ!」
へ?
私はとんでもないものに寄りかかっていた。
「ウウウウッ!!!」
私が寄りかかっていたものはオーガの――オスのオーガの大事な大事な体の一部だった。
あはは……とても……立派ですよ……。
た、たくましいです……。
だ、だから……。ね?
お、怒らないで欲しいな……。
「ウウウッ――!!!!」
「キィイイイイイイ (ひぃいいいいい)」
ご、ごめんなさーい!!!!
「ウウウウガッ――!!!!」
一難去ってまた一難。
今度はオーガに追われることとなった。
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