まだ僕は、

たとえばそれは、ずっと始まりの街に閉じ込められた勇者のように、

 たとえばそれは、小さい頃から檻に閉じ込められていた赤子のように……


 成人した僕は、まだ、子供のままで……


 10年間、小学5年生の頃から、僕はずっと鬱病だった。

 それはまるで、定期的に初期化されるバグゲーのように、

 頑張っても、頑張っても、またどん底に引きずり戻されて、

 また再スタートを強いられる世界。

 ずっと、自分の中で戦っていた。

 自分の心と、戦っていた。


 他のクラスメイトが、人間関係、恋愛友情を深めるなかで、

 僕だけが、家の中で、あるいは教室の隅で、自分と戦っていた。


 高校生になって、僕は高校野球を必死に頑張った。

 鬱病というハンデを背負いながら、本当に必死で……

 デバフアイテムをつけたまま、必死に周りの超人に食らいついていた。


 そして、限界がきた。

 もう戦えない。もう頑張る力は残っていない。

 俺はもう終わりだ。

 そう思った。


 母親や父親、妹や弟には、多くを助けられた。

 友達、そして先生、感謝したい人は沢山いる。

 たくさんの本にも助けられた。


 そして僕は、たぶんやっと、鬱病の牢獄から抜け出した。



 あれから10年たって、僕はもう20才になっていた。

 僕の青春時代のほとんどは、鬱病との戦いの日々だった。

 

 恋人なんて作れるはずもなくて。

 自己肯定感が低くて、登校さえまともに出来ない私がモテるはずもないけれど、

 何より、自分自信すら幸せになれないのに、他人を幸せにする余裕なんて、持ち合わせてはいなかった。


 僕は20才になったけれど、

 人間関係の経験値はほとんど、小学生のままである。

 僕はまだ、友達を遊びに誘ったことがない。

 誰かと二人きりで、どこかにでかけた事もない。

 まだまだ子供、どうしようもない子供、


 10代の内に経験すべき友達とのあれこれを、ほとんど経験できなかった人間、それが私。


 小説を書いたり読んだりしていると、よく思う。

 私には複雑な人間関係が分からない。

 距離感のとりかたも、会話のやり方も、いろんな事も、何も分からなくて、

 それがすごく、痛い……


 今の僕では、良い小説は書けないのかもしれない。

 うん……

 すごく、痛い。

 僕はこんなことも出来なかったのかって、こんな事も出来ないのかって、

 自分の未熟さに心が痛い。


 まだまともにバイトしたことがない。

 サークルにも入っていない。


 鬱病を克服した僕は、やっとレベル1になった。

 やっとスタートラインに立てた。

 だけど……

 他の大学生はみんな、レベル100を越えていて、

 そんな感覚。


 この2年間で、かなり太ってしまった。

 体重は2年間で、30キロぐらい増えてしまって、

 何度もダイエットを試みたけれど、その度に体調を崩して挫折していた。


 今年の春休みは、鬱病も落ち着いたので、やっとダイエットを始められそうです。

 最初は大変で、今日も筋肉痛が酷いですが、

 きっといつか……


 これまでも、長い長い道のりで、

 これからも、長い長い道のりで、

 普通の人になれるのは、何年後になるのだろう?


 まぁでも今は、そこそこ幸せです。


 もう少し、あと少し、

 頑張っていれば、きっと道は開けるから、

 

 簡単には人は成長できません。

 鬱病を倒すのに、僕は10年かかった。

 そしてレベル1の僕は、またコツコツと、2、3、4と成長していくのだ。

 近道なんてなくて、地道にやるしかなくて、


 これでいい、このままでいい。


 長い長い道のり、楽しいこともあって、苦しいこともあるだろう。

 でも、大丈夫。

 辛いことが起こった時は、昔の僕を思い出せ、

 あの頃の僕は、もっと辛かっただろう。

 あの頃の僕は頑張った、苦しい暗黒時代を耐え抜いて、今の僕に命をつないでくれたんだ。

 過去の自分の頑張りのお陰で、今の自分があるのだとしたら、

 後悔なんてできるはずがない。

 そんなの、過去の自分に対して失礼だろう。

 頑張ろう、前を向こう。

 僕はまだ、もっともっと強くなれる。

 それは今までの自分が証明してくれたことで、これからの自分が証明していくこと。


 幸せになろう。

 今まで苦しかったぶん、これから幸せになろう。


 人を幸せにしよう。

 自分が苦しかったぶん、人を幸せにしよう。


 僕の人生の目標は、この世から鬱病を葬り去ること。

 それが叶うなら、いつ死んだっていい。


 まぁ、半分冗談ですが。


 もう外は日暮れですね。

 明日も、また、一個ずつ。

 必死に考えて、生きていきましょう。

 きっと良い日で明るい未来だ。

 おやすみなさい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る