【番外編】キャンピングカーとアウトドアショップ③


「うおおお、これがキャンピングカーか! 想像していたよりも遥かに大きいんだな!」


「キャンピングカーの中でも、これはバスコンといってマイクロバスをベースにしたキャンピングカーなんだ」


「ホー!」


 シゲトたちはその日テツヤの店に泊めてもらい、翌日アレフレアの街から少し離れた場所へ移動し、キャンピングカーを出した。


「な、何もない空間からこれほど大きな物を取り出せるとは……。それになんだか魔物みたいだな」


「び、びっくりしたです!」


 一緒にキャンプに参加をしてくれるリリアとフィアも突然現れた大きな車にとても驚いている。この世界には車がないため、リリアのようにキャンピングカーを魔物と思ってしまう人が大半だ。


「テツヤお兄ちゃんも不思議な道具や食べ物を何もない場所から取り出せてすごいね!」


「本当にシゲトと同郷の者はみんな不思議な力を使えるのですね……それにフー太様に言葉を伝えられますし、羨ましいです」


「ホー?」


 テツヤのアウトドアショップの能力はすでに昨日見せていた。シゲトだけでなく、ジーナもコレットもとても驚いたようだ。


 そしてテツヤの言葉もまたフー太には伝わるようで、ジーナやコレットには羨ましがられていた。


「それじゃあ、もう少し移動しよう」


 キャンピングカーへ乗り込む際、リリアとフィアは最初怖がっていた。やはりこの異世界の住人にとっては通過儀礼らしい。




「うわあ〜すっごく速いです!」


「……これはすごいな。フェリーの召喚獣よりも速いとは驚いた」


「やっぱり車は速いよなあ。でも振動は結構大きいか……」


 初めてキャンピングカーへ乗った3人の反応は様々であったが、3人とも楽しめたようだ。


「テツヤさん、この辺りで大丈夫か?」


「ああ、この辺りの川まで人は来ないからね。一応魔物はたまに出るけれど、アレフレアの周りにはそんなに強い魔物はいないから、リリアがいれば大丈夫だよ」


「了解」


 無事に目的地である人のいない川へとやってきた。この辺りに出る魔物といえばゴブリンやスライムくらいだ。


「リリア殿は元Bランク冒険者ですよね! ぜひあとでご指南をお願いしたいです!」


「いや、私はそれほどの者ではないぞ。だが、最近はあまり鍛錬ができていないから、こちらこそよろしく頼む」


 ジーナとリリアは同じ剣を持つ者同士ですでに意気投合している。


「うわあ〜フィアちゃんの尻尾はすごくふわふわだね!」


「コレットちゃんの尻尾はサラサラしていて羨ましいです!」


 フィアとコレットも同じ獣人ということと歳が近いということもあってすでに仲良しだ。


「それにしてもフー太くんは本当に可愛いな。それに身体が大きくなるなんてすごいよ」


「ホー♪」


「やっぱり同郷の人にはフー太の言葉が伝わるんだよなあ」


 キャンプ場にいたユウスケと同様、異世界からやってきたテツヤの言葉は森フクロウのフー太に届くようだ。


 そして日本から同じ異世界に転生し、キャンプ好き仲間であるテツヤとシゲトも昨日の夜は同じ部屋で色々とこれまでのことを語りあったこともあり、すでに打ち解けた関係となっていた。



 

「それじゃあ、同郷のシゲトさんたちに出会えたことに乾杯!」


「「「乾杯!」」」


「ぷはあ! やっぱりキンキンに冷えた缶ビールは最高だな! まさか元の世界の酒が楽しめるとは思わなかったよ!」


「気持ちはわかるよ。ユウスケさんには本当に感謝だな。またあのキャンプ場へもう一度行くから、その時にちゃんとお礼を伝えないと」


 キャンプ場にいたユウスケからのお土産はストアという能力で購入した缶ビールや日本酒などといった元の世界のお酒だった。


 キャンピングカーの冷蔵庫でキンキンに冷やされた缶ビールの味はテツヤが久しく忘れていた味である。


「俺もぜひ会ってみたいな。今度長期の休みが取れたら、そのキャンプ場へ行ってみるよ」


「ああ、きっと喜んでくれるよ。そこにいたお客さんたちもすごく良い人たちで、みんなで宴会をして楽しかったなあ」


「ええ、本当にとても楽しかったです。ぜひまた行ってみたいですね!」


「みんなすごく優しかったし、おいしい料理がいっぱいだったよ!」


「ホー!」


 シゲト以外の者もそのキャンプ場という場所でとても楽しんできたようだ。


「テツヤ、すごいぞ! 魔法を使っていないのにこのジュースは本当によく冷えている!」


「こっちのお肉につけるタレもすっごくおいしいです!」


「キャンピングカーには冷蔵庫やオーブンレンジなんかの家電が付いていていいよなあ。それに焼肉のタレみたいな元の世界の調味料が補充できるのは羨ましい」


 テツヤが普段使っているタレは異世界の食材を使って自作したタレだが、やはり元の世界の市販の焼肉のタレに比べるとまだ改良の余地がある。エ◯ラ食品様の企業努力の成果は偉大なのだ。


「テツヤさんの能力はレベルアップするし、きっとポータブル冷蔵庫や他のキャンギアも出てきて、アウトドアショップで売っているインスタント食品なんかも買えるようになるんだろうなあ。この先がすごく楽しみな能力だ」


「そうなってほしいよ。今は大きなキャンプギアは販売できていないし、とてもじゃないけれど、アウトドアショップとはいえないからね」


「だけど、それを冒険者に安く売っているんだから本当に偉いと思う。駆け出し冒険者に助けられたって聞いたけれど、その恩を返すために店を出すなんて、俺にはとてもじゃないけれどできないな」


「そんな大層なものじゃないよ。俺の能力がちょうど商店に向いていただけだからさ。それに俺も我ながらだいぶ自由に生きていると思うし」


「……そのおかげでテツヤさんやみんなにも出会えたからな。うん、今日は楽しく飲もう!」


「ああ、今日は本当に良い日だ!」


 そう言いながら、2人は再び缶ビールで乾杯をする。いきなりこの異世界に転移してきた者同士であり、キャンプを愛する者同士、そこに壁のようなものはなかった。


 この日はいろいろなことを忘れ、お酒やお互いの自慢のキャンプ飯をみんなで楽しんだ。


 


「いやあ、フカフカのベッドで寝られるなんて最高だな! やっぱりキャンピングカーはこれが最高だよ!」


「テツヤ、後ろのベッドは本当に柔らかいぞ! それに日が暮れてもこんなに明るいなんて本当に不思議だ!」


「うわあ〜おうちよりも快適です!」


 初めてキャンピングカーに乗るテツヤ一行は夜のキャンピングカーの快適さにとても驚いている。


 フィアとコレットは身体が小さいこともあって、女性陣4人は後ろの大きなベッドで寝ることになった。


 フー太とシゲトはいつものベッドで、テツヤは本人の強い希望でバンクベッドというキャンピングカーの運転席の上にある狭い場所で寝ることになった。狭くはあるが、ハシゴを登って眠る秘密基地感のあるそこで寝たい気持ちは男なら誰しもが少しわかるはずである。


「出たとしてもゴブリンやスライムなら、車体強化されたこの車なら大丈夫だから安心して寝て大丈夫そうだ」


「……改めて考えても、シゲトさんのキャンピングカーもだいぶチートだよな」


「おかげで楽しく旅ができているよ」


 キャンピングカーのあるキャンプはむしろ夜からが本番である。柔らかなベッドに包まれて、野営をしている時とは比べないほど快適にぐっすりと眠れることだろう。


 久しぶりに楽しい仲間と一緒にキャンプを楽しめたようである。

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