悪役令嬢・松永久子は茶が飲みたい! ~戦国武将・松永久秀は異世界にて抹茶をキメてのんびりライフを計画するも邪魔者が多いのでやっぱり戦国的作法でいきます!~
11-23 再登場! 図ったように現れる公爵!
11-23 再登場! 図ったように現れる公爵!
何かが引っかかる。いくら毒を盛りやすい状態を作り出せるとは言え、アスプリクを使い潰すようなやり方は、ヒーサらしくない。
アスティコスは必死でその“何か”を求め、思考を巡らせた。
(そう、やはりそれが違和感の大元だわ。一人で千人分の働きができるアスプリクを、こんなつまらない暗殺で使い捨てにするなんて、全然らしくない。何かもっと裏が……、別の目的が?)
アスプリクを貶める、ジェイクとの仲をこじらせる、王国内に混乱をもたらす、失敗しても成功してももたらされる効果は色々あるが、どれも説得力に欠けるものであった。
やはり、何を考えているのか分からない、これに辿り着いてしまうのだ。
(結局、
その時だ。アスティコスは誰かが近付いてくる気配に気づいた。
ただの通行人であれば、アスティコスを宥めるふりをしてやり過ごしたであろうが、気配の指向が明らかにこちらに向いていたため、警戒度を極限まで高めた。
追っ手がもう来たか、そう判断したアスティコスであったが、薄暗い路地の奥から見えた人影は、あまりに予想外の人物であった。
なにしろ、目の前に現れたのは、“ヒーサ”であったからだ。
「ひ、ヒーサ!」
悲鳴にも怒声にも聞こえるアスティコスの叫びに、アスプリクは伏せていた顔を上げ、やって来た人影に視線を向けた。
その姿は間違いなくヒーサであり、それを脳が認識すると勢いよく立ち上がった。
「ヒーサ、これは……、これはどういうことなの?」
泣き腫らしてしわくちゃになったアスプリクはフラフラと歩み寄り、ヒーサの服を掴んで縋り付く様に見上げた。
両者の身長差は頭二つ分もあり、改めてその体格差を思い知らされた。
そんな小さな少女に対し、ヒーサは笑みを浮かべて優しく頭を撫でるのであった。
「ご苦労だった、アスプリク。見事にジェイクを暗殺してくれたな。ああ、心配ない。それもこれもこれから起こる事の、ほんの序幕に過ぎない。その舞台の主役は他でもない、アスプリク、お前なのだよ」
笑顔を崩さず、優しく少女の頭を撫でるヒーサであったが、ただならぬ気配を放っていた。
アスプリクは動揺しているため、それに気付いてはいないようであったが、アスティコスは違った。しかも、その気配、あるいは表情は見覚えがった。
そう、あの時、エルフの里を焼き払ったときのヒサコと、瓜二つであった。
(ああ、マズい! またやらかす気だわ! この王都を舞台として、とんでもないことを始める気だわ!)
アスティコスの脳裏には、燃え盛る里の光景が呼び起こされ、恐怖に打ち震えた。あれがまた再現され、王都が崩れ行くのを想像してしまった。
だが、あの時とは違う点がある。
それは何が何でも守りたいものが、今はあると言う事だ。
恐怖に打ち勝ったアスティコスは、素早く駆け寄ってアスプリクに抱き付き、しがみ付く手を振り払ってヒーサから引き剥がした。
両者の間に割って入り、身を挺して姪を守りつつ、ヒーサを睨み付けた。
「おやおや、お怖い保護者だな~。傷心のお嬢様を、昨夜の続きでもして、お慰め申し上げようというのに、邪魔してくるか」
「汚らわしい! なんて下劣なの!?」
アスティコスは昨夜の出来事を後悔した。
アスプリクが望んでいるからと、目の前の愚物と二人きりにさせてしまったのは、完全な失策であったと思い至った。
どこまでも下劣で、あくまでも自分本位。平然と人を利用し、用が無くなればバッサリと切り捨てる。情もなにもあったものではない、最低最悪の存在だ。
一触即発。いかにして目の前の男に制裁を加えるべきか、死すら生温い方法を、アスティコスは頭の中で模索し始めた。
そんな怯える少女と怒り狂うエルフを見ながら、ヒーサはただただ笑みを浮かべるだけであった。
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